30代の半ばというのは、キャリアのバリエーションが本当に豊かになる時期だけれど、この時期急増するのが、親父の後を継いで2代目社長になりましたというタイプの人だ。

2代目社長、というと「何だ金持ちのボンボンかよ」みたいに感じるかもしれないが、実際には準備万端整った上で、経営を譲られる人なんてごく少数だ。大体は、業績は悪く、赤字体質で、それでも潰したくなくて、体力のあるうちに(あるいはもう限界だから)経営権を息子に譲るというケースが大半だ。

そんな崖っぷちの会社を跡を継いだ2代目社長は立てなおしていくわけだが、見ているとこれが結構立ち直る。現在、大学生で就職活動をしている人や、新卒採用をしているような企業に勤めている人にはあまり縁のない話かもしれないが、世の中の99%の会社はいつ、このような崖っぷちに陥るかわからない中小企業なわけなので、何故、崖っぷちになってしまうのか。2代目社長はそれをどのように建てなおすのか、ちょっと僕の視点で解説してみたい。

■ 何故、崖っぷちに陥るのか

現在のような経済状況下で、息子に経営権を譲るわけだから、決して野放図な経営を行ってきた人が経営者ではない。バブル後の不況を生き延びてきたわけだか ら、(借金を重ねながらとはいえ)堅実な経営をしてきたところが大半だろう。

では、何故譲るのか。というと、

  1. 売上が先細りで、考えられる手も打ちつくし、これ以上自分が経営しても先がないと感じた。
  2. 体力的に無理がきかなくなった。

以上のような状況に陥っているからと思われる。それなりの社員数を抱える会社であれば前者の傾向が強く、10人未満の小規模経営であれば後者の傾向が強 い。

売上が先細り、というのは結局のところ外部環境が好景気だった頃に事業をはじめて、それなりに軌道にのったものの、市況の悪化と商品の成熟と共に成長がストップしゆっくり時間をかけて衰退している、状況と言える。コスト削減や事業縮小と借り入れの組み合わせでしのぐものの、限界がきてしまった状態だ。

ここでポイントなのは「考えられる手を打ちつくし」というのは、あくまで初代経営者の視点で打ちつくした状態に過ぎないということだ。そして、初代経営者は「自分では無理だったが、若い発想であればもしかして‥」と期待している。

体力的に無理がきかなくなった。これには2つの意味がある。ひとつは、単純に長時間労働できなくなったということだ。資格を武器に時間単価で働く商売の人は、働く時間が減れば自然と売上も減る。

もうひとつの意味は、初代経営者の周囲の友人達の体力もおちている。ということだ。若い頃は同年代で仕事を紹介し合い、仕事を回し合っていた。それが年を取ることによって、一様にそのコミュニティで取る仕事、流通する仕事が減っていく。こうして、既存顧客から得られる仕事というのは加速度的に減っていく。


■2代目経営者はどう会社を建てなおす?

さて、以上のような状況の中、初代経営者は息子に一縷の望みを託して事業を継承する。初代は60を超え、サラリーマンをしていたら引退の時期だ。昔は親に反発していた息子も、30を過ぎれば、親の偉大さがわかってくる。経営の経験もしてみたい。かくして、2代目は親の跡を継ぎ、財務諸表を見てびっくりする。というわけだ。

しかし、これが意外と立ち直る。親が10年、20年かけても無理だと思っていた借金をほんの数年で返したりする。なぜかというと、

  1. まずは若く、体力があるということ。2倍の時間働けば、得られる仕事の量が2倍になる。
  2. 同年代の新たな人脈を獲得するということ、親の人脈と会わせて考えると、人脈の量が2倍になる。親の人脈と自分の人脈をミックスさせれば、そのシナジー効果はさらに高まる。
  3. 年配の方からは可愛がられ、年下からは慕われる。結果仕事が増える。
  4. それまでのサラリーマン経験等を通じて得た、新たな知識や新たなルールを経営に活かすことが出来る。結果的に、変化を産み出すことに繋がる。

といった点が理由として考えられる。

ここまでは、深く考えずとも努力でカバー出来る範囲だ。そして苦しい台所事情の親の跡を継ごうという覚悟のある二代目であれば、ここまでは比較的できる。そうして、業績を立てなおして小康状態になったところでさらに飛躍するためには、知恵が必要になる。

この知恵にはいくつかのパターンがあるとおもうのだけれど、それは次回まとめてみることにしたい。