ライト文芸とは、現代のエンターテインメント小説における一分野。
「キャラクター文芸」(角川文庫)、「キャラノベ」(幻冬舎文庫)、「キャラクター小説」(富士見L文庫)などの呼び名もあり呼称が一定しないが、とりあえず本項目ではWikipediaと同様に「ライト文芸」で統一する。
一言で言えば、ライトノベルと一般文芸の中間にあるエンターテインメント小説のこと。主に文庫書き下ろしで刊行され、ライトノベル的なイラストの表紙だが、書店では漫画の棚に近いところに置かれるライトノベルと違い、ライト文芸作品は一般の文庫の側の棚に並ぶ。
ライトノベル的なキャラクターの魅力を売りとしつつも、中高生およびオタク向けのライトノベルとは異なり、20~40代の女性層を主なターゲットとしており、主人公の年齢設定も20代ぐらいになっている作品が多い。
主要ジャンルはお仕事小説、ライトミステリー、恋愛小説、青春小説、ファンタジーあたり。特に妖怪や八百万の神様が登場する和風日常系ファンタジー「あやかし」ものは各レーベルで高い人気を誇り、「あやかし系」と呼ばれるジャンルを形成している。
メディアワークス文庫、新潮文庫nexなど専門レーベルと、一般文庫レーベル内でライト文芸作品を展開している文庫(角川文庫、幻冬舎文庫、宝島社文庫など)とが混在しており、どこからどこまでがライト文芸かの線引きはわりと曖昧。結局はレーベルや出版社からの扱いで判別するしかないのかもしれない。
この分野の先駆者であるメディアワークス文庫はもともと「ライトノベルを卒業した読者」をターゲットとして想定していたが、実際のライト文芸は「狭義のライトノベルは読まないけど、普通の一般文芸より読みやすくてとっつきやすい作品が読みたい読者」という層を開拓・獲得することになった。結果的にはライトノベルと一般文芸の中間層という、狙い通りの層に受けたとは言える。基本的に女性層がターゲットだが、講談社タイガのように比較的男性向けっぽいライト文芸レーベルも存在する。ライトノベル同様シリーズものが多いが、恋愛小説系は単発ものが多い。
初期はライトノベル作家がそのまま持ち上がりで手掛けていたが、その後はライト文芸でデビューしてライト文芸を書き続ける作家や、一般文芸方面からライト文芸に流れてくる作家も増えている。一般文芸として刊行された作品や、ライトノベルとして出ていた作品がライト文芸レーベルで再刊されることも珍しくない。
なお、最初から文庫で出る作品のみならず、東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』や住野よる『君の膵臓をたべたい』など、単行本で出ている作品もライト文芸に含まれることがある。
00年代初め頃までは、ライトノベルと一般文芸の間の垣根は厳然と存在し、一般文芸の表紙に漫画的なイラストを配することは(ノベルスの娯楽小説やSFなど一部のジャンルを除いて)まずあり得なかった。「漫画絵の表紙は普通の読者は手に取りにくい」というのが出版界の共通認識で、そのことは2000年から2001年にかけて『十二国記』が講談社文庫入りした際に、山田章博のイラストが削除されたことに象徴されている。
ライトノベルに注目が集まった00年代半ば、電撃文庫がライトノベルと一般文芸の垣根を崩そうと、「電撃の単行本」というハードカバーレーベルを展開した。その中から登場した有川浩『図書館戦争』シリーズの大ヒットとその後の有川浩の大ブレイクで、それまで需要の存在自体がほとんど認知されていなかった「ライトノベル的な(少女小説より対象年齢が上の)女性向け小説」というジャンルの需要が発掘された。「電撃の単行本」自体は有川浩以外は大成功したとは言い難いものの、従来のライトノベルから「中高生向け」という縛りを完全に外した作品も出し方次第で受け入れられる、ということが証明されたのは大きかった。
またこの頃、コバルト文庫を筆頭とする少女小説の読者層の高齢化が進んでおり、中高生が主人公の学園ものよりも、雪乃紗衣『彩雲国物語』、谷瑞恵『伯爵と妖精』、青木祐子『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』といった、より年齢の高い主人公が何らかの仕事に就いて社会の中で奮闘する、というような作品がヒットするようになっていた。
そういった状況を受けて、ライトノベル的な作風でありながら、従来のライトノベルよりも対象年齢を高めに設定した作品を送り出すレーベルとして、2009年にメディアワークス文庫が創刊される。また同時期から、角川系の出版社を中心に、ライトノベル的なイラスト表紙の一般文芸作品が各社から出始める。ただ、この頃はまだ「ライト文芸」という名称はなく、メディアワークス文庫もカバーに写真や抽象的なイラストを使うなど、初期は従来の一般文芸の装丁に寄せていく方針が目立っていた。
そんな中で転機になったのは、2009年に出た岩崎夏海『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(単行本)と、2010年に出た東川篤哉『謎解きはディナーのあとで』(単行本)の爆発的セールス。続いて2011年からスタートした三上延『ビブリア古書堂の事件手帖』(メディアワークス文庫)がメガヒットしたことにより、狭義のライトノベルではないが、どこかライトノベルっぽい一般文芸作品の需要に大きく注目が集まり、2012年あたりからこれらの作品に対する名称として「ライト文芸」「キャラクター文芸」「キャラノベ」などの名称が使われはじめる。
2014年から2015年にかけて、富士見L文庫(2014年6月~)、新潮文庫nex(2014年8月~)、集英社オレンジ文庫(2015年1月~)、講談社タイガ(2015年10月~)と各社から専門レーベルが続々と登場。すぐポシャったレーベルも結構あるが、一般文芸レーベルからもライト文芸作品が出ることが当たり前になり、現在に至る。
初期は『謎ディナー』や『ビブリア』の影響もあり、お仕事もののライトミステリーが隆盛を誇ったが、その後は浅葉なつ『神様の御用人』や友麻碧『かくりよの宿飯』などのヒットにより「あやかし」ものがジャンルとして確立。また白川紺子『後宮の烏』や顎木あくみ『わたしの幸せな結婚』のヒットで中華風後宮ファンタジーや花嫁・結婚ものが流行しており、少女小説の後継カテゴリーという性格がいっそう強くなっている。
補足として、今で言うところの「ライトノベルと一般文芸の中間層の小説」そのものはライト文芸以前、遡ればまだライトノベルという概念が確立される前の1980年代からも存在した。
それらは主にノベルス(新書判の小説)として刊行されており、赤川次郎や山村美紗のユーモアミステリー・トラベルミステリー、トクマノベルズのSF系作品(田中芳樹など)、C★NOVELSファンタジアのファンタジー(茅田砂胡など)、講談社ノベルスの本格ミステリ(いわゆる新本格)、ノン・ノベルの伝奇小説(菊地秀行など)といった娯楽小説群が該当する。これらから出ていた作品群のイメージは現在のライト文芸とはだいぶ違うので、現在のライト文芸の歴史とはまた別のものとしておくべきだろうが、00年代にこれらの作品群の主戦場であったノベルスという判型が衰退していくのと入れ替わるように、ライト文芸が興隆しはじめたのは事実である。
50音順。前述の通りライト文芸の定義は曖昧なので、文庫オリジナル作品は「上記のライト文芸レーベルから出ている」「一般文庫から文庫書き下ろしor文庫オリジナルでイラスト表紙で出ている」、単行本で出ている作品は「メディアや出版社、書店においてライト文芸として扱われることが多い」をとりあえずの基準とする。
ライトノベルレーベルから一般文芸レーベルへの移籍作品や、ライト文芸ブーム以前から伝統的にイラスト表紙・文庫オリジナルを出していたハヤカワ文庫は除外。
掲示板
1 ななしのよっしん
2020/02/03(月) 06:56:40 ID: /PSuQ+YNbU
記事作成乙です
「小説」の記事から来ました
この記事を読んで「ライト文芸」の存在を知りました
2 ななしのよっしん
2023/08/19(土) 10:33:51 ID: 0lnX+1w1CV
事実上の少女小説の後継ジャンル
というかライト文芸とWeb小説に挟まれて少女小説が絶滅危惧種になったんだよな…。
3 ななしのよっしん
2024/05/20(月) 04:57:21 ID: G26K+15EDI
ラノベでいいだろ…
これ以上余計なカテゴリ増やしてややこしくするなよ…
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最終更新:2025/01/11(土) 06:00
最終更新:2025/01/11(土) 05:00
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