個人戦術と言う言葉が独り歩きして、なんとなく言葉の感じから、解釈している人も多いのではないでしょうか?
今回の記事は、ポジショナルプレーを行う場合の個人が行う戦術行動について。
つまり、個人戦術と日本ではあまり聞き馴染みのない集団プレー戦術の2つについて解説していきます。
戦術の定義づけ
個人戦術と集団プレー戦術の解説をしていく前に言葉の意味を理解していこうと思います。
例えば、戦略と戦術は似たような言葉ですが、意味や使い方は異なります。
戦略は、サッカーでいうとプレーモデルの事です。
チームの育成方針や経営方針、そのチームの象徴等々、組織の運営や将来を見通しての方策。つまり、集団の目的と方向性の意思統一、チームの在り方、長期的な計画の事です。
それでは、戦術とはどういう意味なのでしょうか?
戦術とは
戦術(せんじゅつ、英: tactics)または戦法は、作戦・戦闘において任務達成のために部隊・物資を効果的に配置・移動して戦闘力を運用する術である。状況の変化に応じた短期的方略を戦術と呼ぶ。(一部抜粋)
参照: 戦術 - Wikipedia
少しわかりにくい説明ですが、要は状況に応じて、その都度、問題や課題を解決する行動を選択していくことを戦術と言います。
ただし、戦術は、戦略に内包されたものであるので、戦略に沿った解決行動を選択していく必要があります。
戦略(プレーモデル)に内包される戦術
戦略(プレーモデル)によるチームの目的、育成方針、経営方針、方向性、色、象徴による長期計画の中に、リーグ戦やカップ戦など各試合に勝つためのチーム戦術が内包されています。
そして、そのチーム戦術の中にグループ戦術があり、グループ戦術の中に個人戦術があります。
つまり、チームのやりたいサッカーや方針で、勝つために相手チームに対してチーム戦術を構築し、それを基にグループ戦術が整理され、さらに細かくしていき個人の行動原理である判断基準が決定されていく。
個人戦術と集団プレー戦術は、チーム戦術やグループ戦術とは違い、個人が認知し判断し解決していく行動です。
プレーモデルの理解と運用に役立つ記事:集団の特性と種類を活かした効果的な指導方法「メリットを最大化し、デメリットを克服する方法」
個人の行動原理
チーム戦術やグループ戦術とは違います。
個人戦術:攻守の6つのアクションとは
ボールを持っていない時に、担当する相手の行動を認知し、攻守の6つのアクションを判断し適切な解決行動をとる事で、個人が担当する相手に対して勝つ、あるいは負けないプレーをすることができます。
- amplitud(アンプリトゥ)
個人としてのボール状況による担当相手との横距離
- profundidad(プロフンディダ)
個人としてのボール状況による担当相手との縦距離
- desmarque(デスマルケ)
マークを外す動き
- marcaje(マルカへ)
担当のマーク
- Cobertura(コベルトゥーラ)
担当マーク以外への対応
- permuta(ペルムータ)
担当の選手もしくはゾーン、レーンの交換
集団プレー戦術:チームを機能させる5つのアクションとは
ボールを持っていない時に、役割ごとの味方を認知し、組織攻撃と組織守備においての5つの原理原則とフィニッシュにおける2つの原理原則を用いて、チームを最大限機能させる為にプレーすることです。
チームを機能させる5つのアクション
- equilibrio en la linea (エキリブリオ・ エン・ラ・ リネア)
チームとしての使うピッチの横距離と各ラインの横距離のバランス
- equilibiro entre lineas (エキリブリオ・ エントレ・ リネアス)
チームとしての使うピッチの縦距離とそのライン間の縦距離のバランス
- salir de zona (サリール・デ・ソナ)
担当ゾーンを出て助けに行く
- Vigilancia(ヴィヒランシア)
リスクマネジメント
- Cambio de orientación (カンビオ・デ・ オリエンタシオン)
サイドチェンジ
アタッキングゾーンでの集団プレー戦術
アタッキングゾーンでは、チームを機能させるプレーが異なります。
ゴールにボールを運ぶための基本的な原理原則があり、チームはこの基本原則とチームのプレー原則を構築しなければなりません。
ゴールへの集団プレー戦術の2つの基本原則
- シュートゾーンへのプレー
サイドレーンにボールがある時に、ボール保持者は、ニア、ファー、ペナルティスポットの3ヶ所にクロスを上げる。
非ボール保持者は、ニア、ファー、ペナルティスポットに走りこむ。
- フィニッシュにおけるプレー構築
センターレーンにある時にも基本的には一緒ですが、そのプレーにチームに適したゴールへのプレー構築を付随します。
集団プレー戦術と個人戦術の円滑にするために
ボールを持っていない選手が集団プレー戦術でチームを機能させる立ち位置を決め、その立ち位置から個人戦術で担当相手の行動に対応することでチームが勝つための好循環を生むことができます。
ただし、この立ち位置や解決行動だけでは、ボールの循環がスムーズになりません。
それを解決するための行動が体の向きです。
戦術行動を円滑にする3つの体の向き
ボールを持っていない選手が、目的を認知し、組織攻撃と組織守備の中でプレー方向を決定づけるための戦術アクション。
3つの体の向きは、プレーシチュエーションによって使い分ける必要があります。
- Orientado(オリエンタード)
方向づけという意味から、ボールと次のプレーエリアを結ぶ体の向き。
- perfilación(ペルフィラシオン)
側面を描く等の意味からボールとゴールを結ぶ体の向き。
- triangulo defensivo(トリアングロディフェンシーボ)
守備の三角形という意味からボールと担当マークを結ぶ体の向き。
体の向きの応用
体の向きは、個人戦術や集団プレー戦術をより円滑にするための戦術アクションとなります。
しかし、これらの戦術アクションは、プレーの方向を定めていることから、相手選手がプレー方向を先読みし、より早く対応されてしまう恐れがあります。
時間に余裕がある場合は、そのままプレーすることで円滑にボールを移動させることができ、相手が間に合わないようにプレーできますが、時間やスペースがない場合は、相手のアプローチが間に合ってしまうので、敢えて体の向きとは別の方向へプレーすることも必要となってきます。
また、逆の体の向きを使い、担当相手と駆け引きすることも必要です。
まとめ
今回の記事では、サッカーにおける「個人戦術」と「集団プレー戦術」について深く掘り下げて解説しました。これらの概念は、ポジショナルプレーを理解し、実践する上で非常に重要な要素となります。
個人戦術は、チーム戦術やグループ戦術がうまくいかない場合に、個人の判断で解決していくことがメインとなります。ボールを持っていない選手が状況を認知し、適切な行動を選択することで、担当する相手に対して優位に立つための戦術です。
集団プレー戦術は、チームによって判断基準が異なり、チームが設定する原理原則を実行することで初めてチーム全体が連動して機能します。
どちらも刻一刻と変わる試合状況を個人の認知・判断でアクションやプレーを決断していきます。
チームを機能させ、相手の行動に対して解決行動をとっていくことで、試合をより有利に進めることができますので、所属チームのシステムを理解し、チームが表現したいことを実現できるようにしていきましょう。
個人戦術や集団プレー戦術の重要性とその具体的なアクションについて理解できたでしょうか。
これらの戦術を適切に理解し、実践することで、チーム全体のパフォーマンスが向上し、より効果的な試合運びが可能となります。
戦術を理解することは、単に試合に勝つためだけでなく、戦術的な行動やボール技術を経験でき、選手一人ひとりの成長にもつながります。
個人戦術と集団プレー戦術を駆使し、チーム全体で一つの目的に向かって連携することの大切さを、ぜひ再認識していただければ幸いです。
これからも、戦術の理解を深め、実践に役立てていただけるような情報を提供していきたいと思います。