2024-12

2010・11・10(水)ジョルジュ・プレートル指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

   サントリーホール  7時

 あれこれ騒動に見舞われた今年のウィーン・フィル日本ツァーは、真打(?)ジョルジュ・プレートルの指揮で、ともかくも千秋楽。招聘元や裏方の苦労には同情を禁じえない。

 結局、今回登場の3人の指揮者のうちでは、プレートルが最も人気を得た存在となったであろう。今夜は、彼へのソロ・カーテンコールが2度も行なわれた。
 これまでそれほど日本におなじみの指揮者というわけではなかったのに、やはり「ニューイヤーコンサート」TV中継での知名度、高齢の指揮者に寄せられる日本独特の人気、ステージマナーの温かい雰囲気、もう今後はいつナマで聴けるか判らないという惜別の想い――などが綯交ぜになり、併せて演奏の良さが相まって、今夜の会場におけるような熱狂的な拍手とブラヴォーが生れたのであろう。

 サロネンが来られなかったのは確かに残念なことではあったが、思いがけない指揮者をウィーン・フィルとの組み合わせで聴けたのは、災い転じて福と為す――の一例だった。

 今日のプログラムは、シューベルトの「第2交響曲」とベートーヴェンの「英雄交響曲」。いずれも衒いの全くない、オーソドックスな演奏だ。

 ともあれ、今回の3人の指揮者のうちでは唯一、所謂「ウィーン・フィルの音」をオーケストラに発揮させたのがこのプレートルだったと言ってもいい。それだけ彼は、オーケストラを「その気にさせる」のが巧い指揮者ということになるし、オケの個性を存分に生かしつつ己の音楽をつくるタイプの指揮者ということにもなろう。
 ホルンを存分に活躍させながらも、低音はそれほど強調することなく、どちらかといえば軽くしなやかな響きをウィーン・フィルから引き出していたあたりに、フランス人指揮者の片鱗が感じられたと言えようか。

 アンコールは、ブラームスの「ハンガリー舞曲」第1番と、J・シュトラウスⅡの「トリッチ・トラッチ・ポルカ」。前者はなかなかに豪華な演奏。後者ではプレートルの愉しそうな表情が印象的であった。

コメント

後日(?)談。マエストロ・プレートルのサインを求めて、100人近くの人がサントリーの楽屋口で11:30頃まで待っていたそうです。ホール側も呆れ果て、臨時サイン会を提案、上機嫌(?)のマエストロは承諾-となったとか。「ご老体の巨匠に失礼」とか「非常識」とか言いたくなりますが、「マエストロは本物の音楽家だよ」とLPを持って行った友人の弁。なるほど。思えば、「本物の音楽家」がなんと少ないことか!

数十年前、彼の「カルメン」は評価しても、プーランクやシベリウスをきちんと聴いたレコード評論家が、どれくらい日本にいたでしょう?やはり歴戦の聴衆の耳は凄いですね。「萌芽」を慈しんでいたのですから。

「英雄」は、日本では朝比奈以来の名演でしょう。フルトヴェングラーも、師匠のクリュイタンスも、プレートルにこう言ったに違いありません。「ジョルジュ、ブラヴォー!」

ちなみに、「ウラニアの英雄」を聴いてみると、プレートルの表現が、フルトヴェングラーに通じる「ドイツの響き」であることがわかります。

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プレートル再評価?

プレートルの人気急上昇ぶりはすごいですね。バンベルクとのビゼーなど初出の時は殆ど無視されたのに、再発売されたら大絶賛です。
EMIの旧録音など再発売されるとうれしいのですが。特にパリ音楽院とのオルガン交響曲は素晴らしいです。

おっしゃる通り、本当に素晴らしく、そして温かい演奏会でした。私は、『エロイカ』はとても自由な演奏だったと感じました。
http://hugo-richard-musik.cocolog-nifty.com/
私も一般参賀に加わりたかったです(笑)。

そろそろ、ウィーンフィルの日本公演、隔年にしたほうが良いです。
高い料金設定に似合う人材(人財)が、聴いてみたい指揮者が急に居なくなってきました。
この興行を隔年にする等の見直していく良い機会かと連日(9・10)聴いて思いました。
マンネリ化させてしまうことも、人罪(良い意味ではない)です。
そもそも、サロネンがキャンセルしたのは、メストの総監督初シーズンの自分の新演出’カルディアック’と、サロネンのコンサート。両立できないからでしょうね。近い年齢って、意識しなくても意識するから。

そんな意味で、考えさせられる今回の一連の公演ではないでしょうか。

ねこまるさんのコメントに一言。私もその場に並んだ1人ですが、100人は大げさです(笑)。せいぜい50人ってとこだったでしょうか。9時30分頃に事務所の方が「マエストロは今、レセプションに参加したので、あと1時間くらいは出てこれない」とおっしゃったのですが、結局レセプションが長引き、11時30分になってしまったのです。途中で「サインするそうだ」との情報が流れたので、終電を気にしながらも後に引けず…。でも、ベロベロにヨッパらってるんじゃないかとの我々の憶測ははずれ、マエストロはとても元気&にこやか&丁寧でしたよ。演奏会は、それは素晴らしかったです。私が聴いた最高のエロイカでした。

>T.Tさんへ

貴方みたいに、毎年聴きに行ける人ばかりではありません。来てくれること自体、有難いのです。自分基準で物事を語るのはいかがなものでしょう?

絶賛の嵐に冷水をぶっかけてやろうという気持はわかりますが、あの「2番」と「エロイカ」はVPOでも屈指の名演ですよ。ウィーンでの演奏よりも、格段に良かった。キュッヒルさんは大変だったろうけど・・・。

50名でしたか。訂正に感謝します。

↑Tさん、東条さん、個人情報の掲載はまずいのでは。

「炎上」防止のため、この記事にはもう書き込みません。東条さんには申し訳ない。

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