2024-12

2024・12・12(木)パーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマ―フィル

      東京オペラシティ コンサートホール  7時

 朝日カルチャーセンターで担当しているオペラ講座(毎月第2木曜日)は、西新宿の住友ビルの中にある会場。同じ西新宿のオペラシティは目と鼻の先だから楽だ。

 このホールに今日登場したのは、パーヴォ・ヤルヴィが率いるお馴染みのドイツ・カンマ―フィルハーモニー管弦楽団(THE DEUTSCHE KAMMERPHILHARMONIE BREMEN)である。
 プログラムはモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」序曲で始まり、ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」(ソリストはマリア・ドゥエニャス)、シューベルトの「未完成交響曲」、モーツァルトの「交響曲第31番《パリ》」。アンコールにベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲という、量感たっぷりの選曲。

 「未完成」がロマン派指向の演奏ではなく、古典派的ながっしりとした構築の演奏だったのは、この演奏者たちのポリシーとして自明の理だろう。

 ただ、面白かったのはやはり「ドン・ジョヴァンニ」序曲と「パリ交響曲」の二つのモーツァルト作品、それに「プロメテウス」での演奏である。「ドン・ジョヴァンニ」序曲は冒頭から嵐のような魔性を噴出させていたし、「パリ交響曲」は豪壮華麗、「プロメテウス」は怒涛の進軍━━といった趣きで、これこそが彼らの本領発揮であったろうと思われる。

 ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」では、来日できなかったヒラリー・ハーンに代わり、スペイン出身の美女奏者マリア・ドゥエニャスがソリストとして登場した。2021年メニューイン国際コンクール優勝などのキャリアを持つ彼女は、すでに大変な売れっ子なのだそうで、今回はたまたまスケジュールの都合がついたので来日できた、というのが主催者ジャパン・アーツの話。

 私も初めて聴いたのだが、非常に個性の強い音色による弾き方をする人である。直線的な真っ向勝負でなく、一つ一つの音に趣向を凝らして、作品から独自の容を引き出そうとする、最近の若い世代に多く見られるタイプだ。
 今日の演奏でも、冒頭からえらく粘った弾き方で開始したが、特に第2楽章では極度に遅いテンポを採りつつ最弱音を強調、ほとんど自己陶酔的な沈潜にまで達するような演奏を繰り広げ、カデンツァが終わったあとでも最初のテンポに復帰しないまま楽章を結ぶという具合だった。

 私の好みからすれば、これには些か辟易、もう少し自然にやってくれないものかね、と言いたくなるところなのだが、しかしこの個性はすこぶる強烈で、興味深いことは確かである。そして各楽章のカデンツァはすべて彼女の自作の由で、いずれもこの曲の主題と関連を持たせた曲想を示し、しかも沈潜的な傾向が強い。そしてまた、どれもかなり長い。結論として、私の好みではないが、面白い若手が現れたものだと言っておこう。パーヴォはその彼女の危ういまでの沈潜のソロを、こちらも最弱音を駆使してぴたりとサポートしていた。
 書き忘れていたが、彼女のソロ・アンコールは、フランツ・フォン・ヴェチェイの「悲しいワルツ」という曲の由。少しフォーク・ソングのような雰囲気もある曲だ。

コメント

兵庫で拝聴しました!

兵庫でのプログラムは、モーツァルトの歌劇「ドン.ジョヴァンニ」序曲、ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」。ヴァイオリンのマリア.ドゥエニァスさん、とても個性的な音色ですね。マエストロ ヤルヴィが、うまくサポートして駆け抜けたようなヴァイオリン協奏曲でした。マエストロ ヤルヴィとカンマーフィルの相性の良さを感じる公演。拝聴出来て良かったです。終演後のサイン会では、マエストロとマリアさんのお人柄の良さに触れ、今一度、感動しました。Bravi !!

兵庫での一件

西宮公演の演奏自体は素晴らしいものでしたが、ヴァイオリン協奏曲では1階左側バルコニーで始終イビキの音が鳴り響き、せっかくの名演をぶち壊しにされました。
休憩時間にスタッフに苦情を伝えると「複数のお客様から注意して欲しいと申し出がありました。すみません」とのことで、後半は問題なかったものの興ざめでした。
ウィーン・フィルの大阪公演でも、演奏中に落ち着きがなくゴソゴソし途中で退出する老人や平気で話をする夫婦がいましたが、東条さんが11月28日のラトル/BRSOの項で記されたように、最低限のマナーに欠けた客が多いと痛感します。

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