[写真]3党合意にもとづく年金将来像について語る民主党の長妻昭さん、2013年5月22日(水)、衆議院インターネット審議中継からキャプチャ。
社会保障と税の一体改革に向けて大きな前進がありました。
22日の衆・内閣委で、民主党の後藤祐一さんの質問に対して、自民党(無派閥)の秋葉賢也・厚生労働副大臣は「社会保障制度改革国民会議のとりまとめが、この国会の後に出てくるから秋の臨時国会で対応したい」と述べ、この国会(6月26日会期末)の後に出る国民会議(8月22日まで)のとりまとめを、秋の臨時国会で法制化したい意思をにじませました。
同日の衆・厚労委で、民主党の長妻昭さんは、田村憲久厚労相(経世会)に対して、「国民会議のインターネット中継をテープで録音して文字起こししたら、大臣のあいさつにおかしな発言がある」と技術的な用語の使い方をただし、田村大臣は「間違えた」「次の議事録で訂正するつもりだった」と、大臣あいさつで言葉の使い方を間違えたことを謝罪しました。
長妻さんのテープと言うと、清和会官房長官とおぼしき男性が女性に「覚醒剤をやっていることを警視庁が捜査しているから気をつけろ」と電話しているテープが暴露され、その晩に辞任したエピソードを思い出します。テープ録音で大臣をただす長妻さん、ステキですよ。しかし、長妻さんと田村さんは、昨年6月15日の社会保障と税の一体改革の3党合意を実務者として仕上げ、参院での真夏の答弁を乗り切った仲間です。
党首討論でアベノミクスによるインフレで、年金受給者の生活は大丈夫なのか、という海江田万里ネクスト首相の質問に対して、安倍首相(清和会)が「物価スライドがあるから大丈夫」と答弁した点について、長妻さんと田村大臣は委員会で「忖度(そんたく)」。長妻さんが、マクロ経済スライド(1・2%マイナス)とデフレ特例水準の解消をいれると、アベノミクスで2%物価が上昇しても、年金支給額は(プラスマイナス)ゼロになるのではないかと質疑したところ、田村大臣は「安倍さんはマクロ経済スライドは若手いるはずだろう」と述べ、閣僚として総理をかばいました。ちなみに、私が総理番記者をしていた頃は、今と逆で経世会の橋本首相と清和会の小泉厚相のとりあわせでしたが、官邸で、閣議以外で小泉厚相を見たことは一度もなく、経世会と清和会の対立の根深さを感じました。
3党合意を反故にしようとする気配がある、安倍首相・麻生副総理ら「非3党合意派」の内閣の姿勢について、長妻さんが田村大臣にもっと発言するよう求めると、田村さんは「党の意見もある」「私と長妻さんで決められない」「長妻さんが民主党の代表者かどうかも分からない」「それでもう許してくださいよ」と苦しい答弁。
2004年国会というと、元祖年金王子の山本孝史・参院厚生労働委員が物価スライドについて徹底質疑。このときは、「自分の選挙区である大阪では厳しい生活をしている年金受給者が多いので発動しないで欲しい」と主張しており、今の民主党とは逆です。しかし、山本さんは野党時代の発言であり、長妻さんは与党を知り、年金の持続性を重視する姿勢になっており、山本さんのバトンを継いでいます。なお、2004年国会直後に、北朝鮮拉致被害者の日本人女性と配偶者が投票日直前に再会するという「小泉サプライズ」がありましたが、岡田克也代表率いる民主党は参院選第1党の座をつかみました。
長妻さんは、3党合意の実務者協議について、民主党からは自分と、山井和則さん、そして、山本孝史さんの後継者である梅村聡さん(参院大阪選挙区今回改選)の3人が実務者だと明かし、長妻さんが「3党合意違反に近い」とまで踏み込むと、内閣官房の審議官が「社会保障制度改革国民会議では、「50年前に所得比例年金の考え方があった」との発言もあった」と議事要旨を紹介しました。所得比例年金とは、2004年マニフェスト(岡田マニフェスト)から言葉として登場しています(概念は2003年菅マニフェストから登場)。
総理の部下とはいえ、この内閣審議官も、抜本改革派の国士なのでしょう。田村さんも「長妻さんのいうようにやっていくと、年金(と保険料の)世界でやるのではなく、税という方式になってきます。高額所得者の方が負担していただいて、そうでない方につけるという考え方になってくる」と語り、公明党の「低所得者への福祉的給付」や、民主党の「全額税方式による最低保障年金と所得比例年金の組み合わせ」に歩み寄りました。
[画像]田村憲久厚労相、2013年5月22日(水)、衆院厚労委、衆議院インターネット審議中継から。
どこかの党の党首・幹事長が100年安心プランが30年から40年しか持続しないというような趣旨の発言をしています。坂口力初代厚労大臣による2004年年金改正法では、物価スライドを年金と保険料の双方に発動するから、100年間、給付と負担のバランスが計算でチェック済みだというのが「100年安心」の根拠です。二大政党の党首や幹事長が、国家の存在意義ともいえる制度の根幹を揺さぶるような発言をするべきでない、と私は考えています。
このように、自民党政府でも、厚労大臣、副大臣、さらには、内閣審議官らが、「抜本改革」に向けた志を持っていることが国会審議から明らかになりました。
もうこうなったら、一体改革派で新党でもつくっちゃったらどうなの!
冗談です。
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