築15年以内、平均5千万円、リノベ済み中古マンションが好調…市場拡大の背景

●この記事のポイント
・新築価格高騰と供給減を背景に、築15年以内のリノベ再販物件が割安感と品質で人気を集めている。
・大京穴吹不動産は「R1基準」に基づく施工とアフターサービスで安心感を提供し、販売を伸ばしている。
・中古住宅の買い取り再販市場は今後も拡大見通しで、消費者にとって住まいの選択肢が広がりつつある。
新築マンションの供給が減少し、価格が高騰する中、中古住宅市場の存在感が増している。特に「築15年以内」の比較的築浅の物件を買い取り、リノベーションを施したうえで再販するビジネスが堅調に伸びている。
オリックスグループの大京穴吹不動産は、この分野で販売実績を積み上げる企業のひとつだ。同社に、再販物件の特徴や市場の現況、そして今後の見通しを聞いた。
●目次
- 新築の供給減が追い風に
- 「R1基準」に基づいた安心のリノベーション
- マーケットインで企画、アフターサービスまで一貫体制
- 平均価格は5000万円前後、高額帯も拡大
- 割安感と品質で選ばれるリノベマンション
- 市場は今後も拡大見通し
新築の供給減が追い風に
不動産市場を俯瞰すると、新築マンションの供給量は首都圏を中心に年々減少している。一方で、販売価格は上昇傾向が続き、2024年には過去最高水準を更新した。土地取得コストや建築資材費、人件費の上昇が主因だ。
こうした環境下で「新築マンションは価格的に手が届かない」という声が増えている。その受け皿として注目されるのが「リノベーション済み中古マンション」だ。
大京穴吹不動産もこの流れを背景に、築15年以内の物件を中心とした買い取り再販事業を拡大している。大京穴吹不動産によると、同社が手掛けるリノベーション物件は「新築に比べて割安感がありながらも、品質やデザイン面で新築に近い水準を提供できる点が評価されている」という。
「R1基準」に基づいた安心のリノベーション
大京穴吹不動産では、リノベーションにあたり「リノベーション協議会」が定める「R1統一基準」を採用。これは給排水管や電気配線といった重要インフラ13項目を含め、一定の品質を担保するための統一基準だ。
プランニングでは、築年数に応じた「標準工事範囲」を設け、専任スタッフが生活動線や使い勝手を考慮したデザインを計画。施工面では、大京の新築分譲マンションで培ったノウハウを活かし、独自の施工マニュアルを工事店と共有して徹底する。
さらに、工事後は入念な検査を実施。不具合があれば修繕や交換を行い、チェックリストを社内で厳格に運用している。表面的な内装の美しさだけでなく、「見えない部分の安心感」を重視する点が強みだ。
マーケットインで企画、アフターサービスまで一貫体制
同社の特徴は、プランニングから販売、アフターサービスまでの一貫体制にある。
・プランニング
新築分譲や管理に携わった経験豊富なスタッフがリノベーションの企画に参画。さらに仕入れ段階で営業担当者が得た顧客ニーズを反映することで、「マーケットイン」の発想を取り入れている。
・施工
独自マニュアルとR1基準に基づいた検査体制で、設備・仕様の品質を担保する。
・アフターサービス
引き渡し後に故障や不具合があればコールセンターで対応。保証制度も整えており、入居後の安心をサポートしている。
・販売
全国の流通店舗を通じて営業スタッフが説明を行う。仲介を介さない直接販売のため、買主にとっては仲介手数料が不要というメリットも大きい。
この「ワンストップ体制」が、大京穴吹不動産の買い取り再販事業を支えている。
平均価格は5000万円前後、高額帯も拡大
同社が手掛ける物件の販売価格帯は地域によって異なる。全国平均は約5000万円。首都圏では6000万円弱、名阪エリアでは4150万円、その他都市では2800万円程度だ。
近年は1億円を超える高価格帯の物件も増えているという。背景には都心部を中心とした不動産価格の高騰がある。築浅かつ好立地の中古物件は希少性が高く、富裕層や投資家層からの需要も強い。
割安感と品質で選ばれるリノベマンション
東京カンテイの調査によると、2024年時点で、中古マンションの坪単価は新築の57%程度とされる。価格上昇傾向にあるとはいえ、新築に比べれば依然として割安だ。
大京穴吹不動産は次のように分析する。
「リノベーションマンションは、新築を検討している層にとって現実的な選択肢になっています。築浅の物件をリノベーションすることで、新築に近い住み心地を確保しつつ、価格的な魅力を打ち出せるのが大きな強みです」
実際、築30年以上の古いマンションよりも、築15年以内の比較的状態の良い物件に改修を施したほうが、購入者にとって心理的ハードルは低い。これが販売増加の大きな要因といえる。
市場は今後も拡大見通し
矢野経済研究所の調査によると、中古住宅の買い取り再販市場は2023年に約4.2万戸、2030年には5万戸に拡大すると予測されている。大京穴吹不動産も「今後も伸長する市場」と見ており、供給体制の強化に力を入れている。
政府も中古住宅の流通活性化を推進しており、税制優遇や住宅ローン減税の対象拡大なども追い風だ。従来「新築偏重」と言われてきた日本の住宅市場において、今後は中古の比率がさらに高まる可能性がある。
最後に、リノベーション再販物件を選ぶ際のポイントについても聞いた。
1.ライフスタイルとの適合性
内装デザインや間取りが自身や家族の生活に合っているかを確認する。
2.リノベーション範囲
水回りの交換や配管の更新など、どこまで工事が行われたかをチェック。目に見える部分だけでなく、インフラ部分の改修有無も重要だ。
3.保証・アフターサービス
施工部分に保証が付いているか、入居後のサポート体制が整っているかを確認する。
表面的な「きれいさ」だけに惑わされず、長期的に安心して暮らせるかどうかを重視すべきだという。
新築マンションの価格高騰と供給減少が続く中、築浅中古のリノベーション再販物件は「新築に近い品質を割安で手にできる住まい」として人気を集めている。
大京穴吹不動産は、グループの新築事業で培ったノウハウを活かし、プランニングからアフターサービスまで一貫体制を構築することで、安心感と信頼を提供している。
市場は今後も拡大が見込まれており、消費者にとっても選択肢が広がる時代が到来している。中古住宅の価値をどう見極め、どのように活用するか――それがこれからの住宅購入の大きなテーマとなりそうだ。
(文=BUSINESS JOURNAL編集部)