ジャングリアで注目の沖縄…サウナもジャグジーも完備、富裕層向けリゾート開発で上場へ
●この記事のポイント
・沖縄北部で富裕層向けリゾートヴィラ開発が活発化。サウナやジャグジー付き施設が人気を集め、投資需要が拡大している。
・木立は物件販売に加え、運営や集客まで担い、オーナーに安定収益を提供。平均価格は1億円規模で経営者層が購入者の中心。
・ジャングリア開業による観光需要増を追い風に、木立は小口投資ファンドや保険事業へ展開し、将来的な上場を目指している。
沖縄県北部では、ホテルや別荘など観光目的の不動産投資が盛んになっているという。昨今何かと話題のジャングリア沖縄も開業し、投資を呼び込む。そんな沖縄でサウナ、ジャグジー付きのリゾート開発をするのが株式会社木立だ。
民泊などを想定した投資用物件で、価格は平均1億以上。オーナーは経営者や上場企業役員などの富裕層だ。木立では施設の運営も手がけているため、オーナーは宿泊客の集客を任せることができる。宿泊客は海外からも来ており、インバウンドの増加が追い風となっているようだ。リゾートヴィラ運営はオーナーにどの程度のメリットをもたらすのだろうか。木立の三木一成社長にリゾート開発と運営事業について聞いてみた。
●目次
平均1億円のプール付きリゾートヴィラ
木立では宿泊施設としての運営を想定したリゾート開発事業と運営事業、そしてWeb関連事業の主に3事業を展開している。リゾート開発事業では主に木立が仕入れた土地を販売する。形態は建築条件付き土地販売であり、建物の建設は指定のハウスメーカーが手がける。買主から見ると、土地を木立から購入しリゾートヴィラの建物はハウスメーカーから購入する形式だ。宿泊客の集客や満足度に影響するため、リゾートヴィラもある程度の「型」が決まっているという。

「宿泊者が施設内で楽しめる体験型宿泊施設と定義しており、リゾートヴィラにはサウナ、ジャグジー、BBQテラスが必ず付いています。素泊まりだけの使い方は想定しておりません。物件価格は1件あたり8000万円から3億円で、平均1億円です」(三木氏)
リゾートヴィラを購入するのは富裕層だ。年収の中央値は2000~3000万円台。ほぼ全員が経営者で、一部医者や上場企業の役員もいる。沖縄の地銀はリゾートヴィラに対する融資が非常に厳しく、自己資金や株担保ローンの借入を用意できる人しか購入できないため、オーナー層は自ずと限られるようだ。毎日5~10人の投資家から連絡が来るという。一部、投資用ではなく別荘として購入するオーナーもいる。
「沖縄県北部には主要観光地が沖縄美ら海水族館しかないため、南部より閑散としていました。しかし、沖縄ジャングリアができたことでリゾートヴィラの開発が活発化しています。ジャングリアの想定来場者数は1日5000人です。水族館とジャングリアは1日では周れないため、宿泊施設が必須であり、一帯にあるホテルの稼働率も上昇しています」(同)
3世代の団体客がターゲット
運営事業ではオーナーに代わってリゾートヴィラの集客や清掃などの施設運営を手がける。宿泊客向けには1棟貸切ヴィラ「MIRATIO」のブランド名で提供している。宿泊費は閑散期で1泊3万円台後半、オンシーズンで8万円台だ。1組あたり平均で2.5泊滞在する。宿泊客の特徴について聞いてみた。
「リゾートヴィラは3世代のファミリー層で6~8人の団体客をターゲットにしています。1つの空間で一緒に楽しみたいという需要に沿った施設です。今は6対4で日本人が多いですが、以前は8対2の割合でインバウンドが主でした。外国人は韓国、中国、台湾、香港などアジア圏の富裕層が多いです。日本人は比較的若い方が多く、友達連れで宿泊される方もいらっしゃいます」(同)
集客にはAirbnbやBooking.comなどの海外OTAを活用する。OTAとはオンライン旅行代理店の略で、施設と宿泊希望者を仲介するサービスのことだ。国内勢ではじゃらんや楽天トラベルなどがあげられる。外国人は日本のサイトを読めないため、彼らが日本の施設を予約する際は海外OTAを介するのが一般的だ。なお、前述の通りリゾートヴィラにはサウナ、ジャグジー、BBQテラスなどの施設が必須となっているが、こうした型を決めているのはOTAの評価アルゴリズムに対応するためだ。潮流に合わせてリゾートヴィラの建築スタイルを変えている。
「『サウナだけつければ良い』と仰るオーナー様もいますが、OTAの評価アルゴリズムに対応し、優先的に表示されるためにはさまざまな機能をつけなければなりません。また、建物からの眺望や匂いなどの顧客体験はOTAのアルゴリズムに影響しませんが、宿泊客のレビューに影響するため、そうした点も高評価を得るように心がけています。比較的、外国人よりも日本人宿泊客から厳しいレビューを頂くことが多く、ご意見を改善につなげています」(同)
こうした施策が効果を発揮しているのか、リゾートヴィラオーナーの表面利回り20%、実質利回りは5~6%を超えるという。5年間でオーナーが3000万円の利益を得られることを目指している。木立は独自の売上・稼働率調査で沖縄県全域をデータ分析化しており、収益の効率を高めている。
ウェブ事業の強みを不動産事業に活かす
木立ではホームページ作成などのウェブ関連事業も展開している。年商10億円以上のDXを進めたいBtoC企業が主な顧客だ。例えば眼科や皮膚科の予約システム、ウェブサイトの作成、SNSの運用代行などを手がける。
「一見客の獲得につながるため、病院やクリニックの集患には広告がかなり重要です。美容業界や歯科医は集患にお金をかけるのですが、眼科や皮膚科、小児科などは集患に力を入れていないところが多く、そうしたクリニックや企業のサポートを行っています」(同)
ウェブ関連事業では沖縄に限らず全国の法人向けにサービスを提供している。一見すると不動産事業とはまったくの別事業に見えるが、両事業を展開することによるメリットは大きいと三木社長は主張する。
「ヴィラの設計をする時にマーケティングを行い、『何が求められているか』をデータ化してデザインに反映させるので、ウェブ事業で培ったマーケティング力が生かされます。また、広告のノウハウも有しており、やみくもに予算をかけて集客するのではなく、最低限のコストで集客しております。リゾート開発事業では、FacebookやInstagramなどのSNS広告のみで集客しています」(同)
不動産会社はデジタルの集客を苦手とするところが多く、いわゆる一人社長の人脈で成り立っている企業も多い。そうしたなか、集客や広告運営を内製化している点は木立の強みといえる。
株式上場を目指す
現在の事業構造はウェブ事業が中核にあり、そこからリゾート開発や宿泊事業が派生している。事業を多角化しているように見えるが、大きくいえば「アセットマネジメント」のビジネスであると三木社長は話す。
「今後は投資家の資産を増やす、管理するビジネスを強化したいと考えております。その一歩として今はヴィラ事業を展開していますが、第二種金融商品取引業として登録し、小口投資ファンドを始める予定です。『1000万円出せるけど、融資の関係でヴィラ1棟を買えない』という方にはファンドを購入してもらう。また、相続や保険ビジネスも展開したいと考えており、実際に大手保険会社の代理店になる予定です」(同)
現在の売上高は4~5億円だが、まずは10億円企業を目指し、事業を拡大する方針だ。2027年にTOKYO PRO Market、28年には福岡証券取引所のQ-board上場を目指す。31年にはグロース市場に上場し、沖縄県で10社目の上場企業にしたいという。現在、沖縄県で上場しているのはおきなわフィナンシャルグループや沖縄セルラー電話、沖縄電力などインフラ系が中心だ。ホテル産業も本州の企業が展開していることが多い。富裕層をターゲットにした沖縄県発の上場企業が生まれるのか、木立の今後に注目したい。
(取材・文=山口伸/ライター)