藤子・F・不二雄は何が凄いってまず短編が凄い。鋭いアイデアと綺麗な起承転結。
さらにすごいのは、その構成力で映画一本分のストーリーも作れること。
大長編ドラえもんのような単行本シリーズをコンスタントに続けられる漫画家はそうそういない。
しかし、そんな藤子・F・不二雄にも苦手なものがあるな、と『エスパー魔美』を読んでいて思った。
『エスパー魔美』は藤子・F・不二雄には珍しい、普通のヤングアダルト向け少年漫画の構成をしている。
つまり、基本的に短編エピソードの連続でありながら、それでいてちゃんと時間軸が繋がっていて、以前に登場したキャラクターが別の役割で再登場したりする。
これが、あんまり面白くない。最初に設定した役どころからキャラクターの発展があまりなく、結局同じような話を繰り返すだけになりがちだ。
思うに藤子・F・不二雄は、起承転結を最初から見据えた設定、構成を練るのはうまいが、「ライブ感」で描いたものにあとから肉付けして、別の形に再料理するのはあまり得意ではないのだろう。
この点で好対照なのが手塚治虫で、手塚は二時間の映画のような手頃な長さの長編を構成するのは絶望的に下手である。
しかしながら連載漫画の定番である、ストーリーをその場その場で膨らませながらキャラクターを発展させて行くことにかけては現代の少年漫画の祖としてたぐいまれなる力を持っている。