教授「木を見て森を見ず。全体を見て。そうこれは変態です。変態を見たことがありますか」
学生「ええ。以前に一度付きまとわれて」
教授「なるほど。どうやら君は変態に好かれるらしい。ところで私と結婚してくれませんか」
教授「確かにそういう考え方もありますね。聞き方を変えましょう。私と恋人になってくれませんか」
教授「そんな話は聞いていないが」
学生「夫と離婚するつもりはありません。私は夫を愛していますから」
教授「愛していると。それはつまり私に対しても同様の気持ちを持っていると解釈してよろしいわけですね」
学生「よろしくないです」
教授「なんとも手厳しい」
学生「そんなことより教授室でふたりきり、こんなことをしてただで済むと思っているのですか」
教授「アカデミックハラスメントですか」
学生「柔らかい言い方をすればそうなります。しかしこれは性犯罪だと私は思います」
教授「ここに指輪を用意してあります。君に贈るために科研費で買いました」
教授「安心してください。伝票は上手いこと改ざんしておきましたから」
学生「残念ながら教授の気持ちにお応えすることはできません。あと今警察を呼びましたので」
教授「仮にそうだとしても私はもっと優秀です。しかも変態ですよ」
学生「だからどうしたんですか。あなたは今から逮捕されるんですよ」
教授「容疑はなんですか」
学生「さあ。わいせつ物陳列罪だとか強制わいせつ罪だとか。とにかくわいせつと名のつく犯罪だと思います」
学生「虚勢を張るのはもうやめてください」
教授「この指輪は伸縮自在。そして時間移動も自由自在なのです」
学生「そんなこと誰が信じると言うのですか」
教授「今から過去に移動すれば、私が警察に逮捕されることはありません」
学生「気でも触れたのですか」
教授「容疑は何ですか」
学生「そこに、あっ!」 そこはまるで空間が切り取られたかのように何もなかった。
半径20cmにしか作用しないタイムマシン。教授の股間は今どこにあるのだろう。時空の狭間を漂っているのか。はたまた過去のどこかに現われたのか。過去の空を舞う教授のペニスに思いを馳せながら私は研究室を後にした。