通過儀礼とは? わかりやすく解説

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つうか‐ぎれい〔ツウクワ‐〕【通過儀礼】

読み方:つうかぎれい

人が一生のうちに経験する誕生成年・結婚死亡など、年齢的に重要な節目にあたって行われる儀礼。→イニシエーション

比喩的に)その集団に入る者が、必ず経験しなくてはならない事柄。「新入生球拾いは、我が部の—だ」


つうかぎれい 【通過儀礼】

人が生まれてから死ぬまでに経過する誕生成人結婚死亡などに伴う儀礼習俗をいう。一括して冠婚葬祭」とも呼ぶ。こうした節目は、個人生活する社会内での身分変化新し役割獲得とを意味しており、それらの平安保障し新し身分への移行公示する意味を有する。通過儀礼は多く宗教行事を伴う。→ 加入儀礼

通過儀礼

作者筒井康隆

収載図書串刺し教授
出版社新潮社
刊行年月1988.12
シリーズ名新潮文庫


通過儀礼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/18 01:34 UTC 版)

通過儀礼(つうかぎれい、rite of passage)とは、人間出生してから成人し、結婚などを経てに至るまでの成長過程で、次なる段階の期間に新しい意味を付与する儀礼イニシエーションの訳語としてあてられることが多い。

人生儀礼(じんせいぎれい)ともいうが、通過儀礼を広義に取り、人生儀礼を下位概念とする分け方もある。

概要

イニシエーションとして古くから行われているものとしては、割礼抜歯刺青など身体的苦痛を伴うものも多く、こうした事例は文化人類学の研究対象となっている。フランスのファン・ヘネップによる研究(『通過儀礼』1909年)が有名である。

通過儀礼を観光化・娯楽化したものとしては、バヌアツ共和国ナゴールバンジージャンプ)などが有名である。

宗教においても通過儀礼は重要な儀式として位置づけられる。その一例としてキリスト教社会においては、以下のようなものが挙げられる。

現代における入社式卒業式など、社会集団に参入または離脱する際に行われる儀礼も通過儀礼のひとつだが、日本で一時期社会問題となった一気飲みのように、文化圏によってはイニシエーションとして若者が大人社会に参入する際に過酷な試練を課すという現象が見られる[1]社会心理学では、負担の大きな加入儀礼は、当人が認知的不協和を解消しようとする結果、組織への主観的評価を高めると考えられている[2]。一方で、過酷すぎるイニシエーションはメンバーのフラストレーションを高め、集団に対する価値や魅力を失わせるという研究結果もある[1]

日本における通過儀礼

日本中世近世における武家階級では元服というものがあり、服装髪型名前を変える、男子は腹掛けに代えてふんどしを締める(褌祝)、女子は成人仕様の着物を着て厚化粧する、といったしきたりもあった。地域社会によっては男子の場合、米俵1(60キログラムから80キログラム)を持ち上げることができたら一人前とか、地域の祭礼で行われる力試しや度胸試しを克服して一人前、日の出から日の入りまでに1(およそ1000平方メートル)の田植えができたら一人前などという、年齢とは別の成人として認められる基準が存在した例もある。女子の場合には子供、さらに言うならば家の跡継ぎとなる男子を出産して、ようやく初めて一人前の女性として周囲に認めてもらえる場合もあった。

江戸時代、会津や米沢の子は14 - 15歳になると飯豊山を登山し、標高1882メートル地点にある「御秘所(おひそ)」と呼ばれる難所(つるつるの岩場。手掛かりの鎖が付いたのは20世紀になってから)を越えられたら一人前の男として認められた[3]飯豊山神社も参照)。

男子の場合、明治徴兵令施行から太平洋戦争が終結した1945年までは、「国民皆兵」の体制が取られ、徴兵検査がその通過儀礼となった。徴兵検査で一級である甲種合格となることは「一人前の男」の公な証左であり憧れの対象でもあった[4]。徴兵検査により健康状態や徴兵上の立場が明らかにされることは、当事者の社会的・精神的立場にも影響を与えた。現役兵役に適さないとされる丙種合格であった山田風太郎は、自らを「列外の者」と生涯意識する要因になったと述べている[5]1938年には結核による丙種合格判定も要因の1つとなって日本犯罪史に残る大量殺人事件・津山事件が起きている。しかしながら、身内レベルでは、入営を免れる丙種合格を望む風潮もあり、また「甲種合格と認められつつ籤逃れ(入営抽選漏れ)がよい」と望む考えも暗にあった[6]昭和時代での甲種合格率は3分の1前後、甲・乙に満たない丙種以下の割合は、時期により変動するが、15 - 40%程度であった[7][8]。入営後は新兵教育という名目のいじめやしごきという形で通過儀礼がおこなわれた(詳細は兵 (日本軍)を参照)。

現代の日本においては、幼少時の七五三や、老年期の還暦喜寿の祝いなど、一定の年齢に到達することで行われる通過儀礼は残っているものの、「その人物を地域社会が一個の成人として認める通過儀礼」が過去ほど明確には意識されてはいない。18歳で普通自動車運転免許証の取得が可能になる、20歳で飲喫煙が許され選挙権(2016年以降は18歳)、25歳で被選挙権の行使が可能になるなど、法律により一定年齢に達することで自動的に権利が与えられるものはあるが、儀式としては成人式以外に通過儀礼と呼べるものはない。

脚注

  1. ^ a b 本間道子『集団行動の心理学:ダイナミックな社会関係のなかで』 サイエンス社 <セレクション社会心理学> 2011年、ISBN 978-4-7819-1287-5 pp.22-25.
  2. ^ Aronson, E., & Mills, J. (1959) The effect of severity of initiation on liking for a group. Journal of Abnormal and Social Psychology, 59, 177-181.
  3. ^ 西村まさゆき『ふしぎな県境 歩ける、またげる、愉しめる』中公新書 2018年 ISBN 978-4-12-102487-9 p.76.
  4. ^ 田村譲 '日本の徴兵制' 松山大学法学部ウェブ(インターネットアーカイブ
  5. ^ 'NHKアーカイブス あの人に会いたい No.146 山田風太郎' 日本放送協会, 2007年8月5日
  6. ^ 大久保孝治 '社会学研究9「社会構造とライフコース」講義記録(9)' 早稲田大学文学学術院ウェブ
  7. ^ 副田義也 '戦後日本における社会保障制度の研究 厚生省史の研究' 筑波大学社会科学系, 1993年
  8. ^ 中野育男 '労働安全衛生と福祉国家' 大原社会問題研究所雑誌 481号, 法政大学大原社会問題研究所, 1998年12月

関連項目


通過儀礼

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 06:17 UTC 版)

ふんどし」の記事における「通過儀礼」の解説

日本一部地方では、通過儀礼として、一定年齢達すると、成人迎えた証として初めて褌を締める「褌祝と言われる私的祭事がある。褌は陰部を覆うことから性的機能持ったものの象徴として扱われ歌舞伎演技の中で、着物の裾をはしょり見得を切る場面などは、陰部臀部見せて褌を締めていることを表すことで、自分成人した者であるとの証を象徴したのである。昔から、褌は成人下着として位置付けられており、一定年齢満たない幼児子供下着として褌を使用することはなかった。幼児子供金太郎のような腹掛け一般的だった。但し、福岡県では厄除け7歳男児は「へこかき」、女児は「ゆもじかき」(湯文字)、と言う成人仕様下着初め身につける地区がある。時代洋装化向かったことで、子供パッチ猿股)を使用するようになったが、第二次世界大戦前までは、成人してからは褌に代えるのが一般的だった近代入り明治政府徴兵令制定し国民皆兵義務付けられ徴兵検査を受けることが成人男子の証として社会的に認知されようになった。この徴兵検査の際に白い越中褌着用指導されることで、擬似的な「褌祝」に相当するようになった軍隊入隊すると、白い越中褌支給され使用強制したことで、当時日本人成人男子は通過儀礼として誰もが「褌」を締めなければならない環境下に置かれた。

※この「通過儀礼」の解説は、「ふんどし」の解説の一部です。
「通過儀礼」を含む「ふんどし」の記事については、「ふんどし」の概要を参照ください。

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