【TS-11】(てぃーえすじゅいち)
PZL TS-11"Iskra".
ポーランドのOKL(航空機製作センター)が、TS-8「ビェス」レシプロ練習機の後継として1957年に開発した複座ジェット練習機。
1957年から開発が開始され、1960年に初飛行した。
ポーランド空軍では1963年から部隊配備が開始、1980年代中期までに500機が製造され、練習機のほか偵察機や攻撃機としても運用された。
中翼式の主翼を持つ機体で、エンジンは原型機や初期生産機は国産のHO-10軸流式ターボジェットエンジンを搭載していたが、その後出力が若干アップしたSO-1(推力800kg)やその改良型であるSO-3(推力1,000kg)に移行し、最終的にはSO-3Wターボジェットを搭載していた。
ポーランド空軍では、後継機のI-22が開発中止になったため、現在も主力として使用されており、同空軍の曲技飛行隊である「ビアノチェルバーノ・イスクリ」でも1969年に採用されている。
ポーランドの他、インドにも50機が輸出されたが2005年に退役している。
関連:I-22 LiM-9
スペックデータ
乗員 | パイロット2名 |
全長 | 11.25m |
全高 | 3.50m |
全幅 | 10.07m |
主翼面積 | 17.5㎡ |
空虚重量 | 2,560kg |
最大離陸重量 | 3,800kg |
エンジン | IL SO-3ターボジェット(推力9.8kN)×1基 |
最大速度 | 388kt(高度16,400ft時) |
海面上昇率 | N/A |
実用上昇限度 | 12,500m |
航続距離 | 787nm |
兵装 | 固定武装にNS-23またはNR-23 23mm機関砲×1基 翼下に50kg爆弾、ゼウス-1機関砲ポッド、S-5ロケット弾ポッド等を搭載可能。 |
TS-11の主な種類。
- TS-11:
原型機。
- TS-11bisA:
初期生産型。ハードポイントは2箇所。
- TS-11bisB:
ハードポイントを4箇所に増やした改良型。旧呼称イスクラ100。
- TS-11bisC:
単座偵察機型。
燃料搭載量が増加したほか、偵察カメラを機首左側に搭載する。旧呼称イスクラ200Art。
- TS-11bisD:
インド空軍向けにbisBを改良した型。旧呼称イスクラ200SB。
- TS-11bisDF:
最終生産型。エンジンをSO-3W(推力1,100kg)に換装したほか、攻撃能力が強化されている。
- TS-11R:
海軍向け複座軽攻撃機型。
機首にRDS-81探知レーダーを搭載。ポーランド空軍が1991年に6機を導入した。
- TS-11BR:
1972年に開発された単座攻撃機型。試作のみ。
- TS-11MR:
近代化改修型。1988年から「ビアノチェルバーノ・イスクリ」向けに配備。
- TS-11F:
近代化改修型。ヘッドアップディスプレイが追加装備された。
ポーランド空軍が配備を進めているF-16C/D Block 52アドバンスドに対応。
- TS-11「イスクラ・ジェット/スパーク」:
退役したTS-11をアメリカ、オーストラリア向け民間アクロバット機として売却した際の名称。
TS-11 (航空機)
PZL TS-11 イスクラ
TS-11は、ポーランドが開発したジェット練習機。愛称はイスクラ(Iskra:ポーランド語で「閃光」の意)。ポーランドが開発した最初のジェット機でもある。
開発
ポーランド空軍のTS-8ビェスの後継機として、OKL(航空機製作センター)が、1957年より開発を始めた。1960年2月5日に初飛行を行ない、WSK(輸送機器生産センター)が開発を継続してPZLにて製造、1963年3月よりポーランド空軍に引渡しが開始された。
設計
主翼は中翼式で、主翼付け根に空気取り入れ口があり、エンジンは操縦席後部の胴体内に搭載する。胴体下面に排気口があり、ブーム状の後部に尾翼がある。原型機や初期生産型は、国産の軸流式ターボジェットエンジンHO-10(推力800kg)を搭載したが、その後SO-3(推力1,000kg)に変更された。機首右側に23mm機関砲1門、主翼下のハードポイントに爆弾、機銃ポッド、ロケット弾ポッドなどが搭載できるので、軽攻撃機としても使用できる。また、後席を撤去して200ℓの燃料タンクを設置した、攻撃型や偵察型も製作された。
運用
後継機として1982年にPZL I-22が開発されたが、1990年代に中止されたため、M-346が配備されるまでTS-11は長らくポーランド空軍のジェット練習機の主力であった。また、曲技飛行隊である「ロムビック(「菱形」の意)」では1969年に採用され、同チームが「ビアノチェルバーノ・イスクリ(「赤と白の閃光」の意。海外では「チーム・イスクラ」とも)」と名を変えて以降も用いられた。航空ショーでは操縦教官が初等練習機(PZL-130)で展示飛行を行うオルリク・エアロバティックチームとの共演も行なっていた。
1962年のワルシャワ条約機構加盟国共同練習機の候補にもなったが、チェコスロバキア製のアエロ L-29 デルフィーンに敗れた。それでも1975年には、インドより50機を受注した。インド空軍のTS-11は、2004年12月16日に退役するまでに7機が事故で失われ、4名が殉職した[1]。
各型
- TS-11
- 原型機。
- TS-11bisA
- 初期生産型。主翼下ハードポイントは2ヶ所。
- TS-11bisB
- bisAの改良型。主翼下ハードポイントは4ヶ所。
- TS-11bisC
- 偵察機型。機首左側に偵察カメラを搭載。
- TS-11bisD
- bisBの改良型。インド空軍向けに改良された機体。
- TS-11bisDF
- 最終生産型。攻撃能力が強化され、エンジンをSO-3W(推力1,100kg)に換装。
- TS-11R
- 海軍向けの複座軽攻撃機。機首にRDS-81探知レーダーを搭載。1991年に空軍が6機を導入。
- TS-11 BR 200
- 1972年に開発された単座攻撃機型。試作のみ。
- TS-11MR
- 近代化改修機。1988年からビアノチェルバーノ・イスクリ向けに配備。
- TS-11「イスクラ・ジェット」 / TS-11「スパーク」
- 退役したTS-11をアメリカ、オーストラリア向けの民間アクロバット機として売却した際の名称。
- TS-11F
- ヘッドアップディスプレイを追加装備した近代化改修機。ポーランド空軍が配備を進めているF-16C/D Block 52アドバンスドに対応[2]。
諸元
- 全長:11.15m
- 全幅:10.06m
- 全高:3.50m
- 自重:2,560kg
- 最大離陸重量:3,840kg
- エンジン:WSK SO-3(推力1,000kg)1基
- 最高速度:388kt (719km/h)
- 巡航速度:324kt (600km/h)
- 航続距離:637nm (1,180km)
- 乗員:2名
参考資料
- ^ Indian Iskras Phased Out www.bharat-rakshak.com
- ^ ITWL - THE UPGRADING OF THE TS-11F ISKRA TO PROVIDE TRANING TO PILOTS FOR F-16
関連項目
TS-11
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 02:56 UTC 版)
「TS-11 (航空機)」の記事における「TS-11」の解説
原型機。
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