逆転機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/15 08:17 UTC 版)
「国鉄キハ04形気動車」の記事における「逆転機」の解説
キハニ5000形の設計を踏襲して、向かい合う2組のベベルギアを子歯車とし、これらを軸方向にスライドさせていずれか一方を親歯車にかみ合わせることで回転方向を逆転させる、D207傘歯車摺動式逆転機が採用された。逆転機の減速比は3.489である。 これに対し、この逆転機を含む機関系各機器の裝架方法は大幅に変更され、日本車輌製造本店が開発した方式が全面的に採用された。車体装架の機関台枠上に、エンジン・クラッチ・変速機を搭載した。動力はユニバーサルジョイントを備えたプロペラシャフトを介して台車装架の逆転機に伝達されている。 この逆転器搭載構造は日本車輌製造の実用新案で、回転トルクによる本体の転動を防止するために動台車のトランサム(横梁)と2本の平行リンクで結合される逆転機で車軸を駆動する、簡潔かつ当時としては合理的なシステムである。逆転ギアそのものは、当時一般的な、2組の向かい合った笠歯車を左右にスライドさせて回転方向を変更するシステムで、最終減速段の大歯車を含むギアボックスと一体化され、水平に近い2本のリンクでエンジンのトルクによる本体の転向を防ぐ構造であった。この日車開発の逆転機支持方法は完成度が高く、戦後まで長らくこれを凌駕しうる代替手段は開発されなかった。他メーカーは日車が保有する実用新案の回避を目的として別方式を採用したが、日本車輛の方式よりも優れたものを作ることは出来なかった。このため競合各社には、日車製逆転機を購入したり、有償で同型品を製作した例もあった。しかし鉄道省がこれに関する使用権を、料金を支払って取得した形跡は今のところ発見されておらず、車両発注数の調整(日本車輌への車両発注を意図的に増やす)で相殺した可能性が高い。 この方式にはユニバーサルジョイントに無理な負荷がかからず、逆転機部分(ファイナルギア)のギア比(最終減速比)を変えることで走行特性の変更が容易に行え、機関台枠部分の仕様を走行特性の異なる形式間で共通化可能、という製造・保守上の大きなメリットがあった。この仕様は、鉄道省でも本形式に引き続き設計されたキハ40000形で勾配線区及び貨車牽引用にギア比を変更する必要が生じた際に有効に活用された。このためキハ40000形の逆転機は本形式のD207でなく、基本構造が同じだが減速比4.057としたD206に変更されている。こうして制式気動車に採用され、川崎車両などの他の各社でも同型車両が量産された結果、日車式の駆動系は、以後の日本の機械式・液体式気動車における標準的な駆動系レイアウトとなった。 なお、この方式は逆転機内の親歯車の軸の中心線と子歯車の軸の中心線が直交するため、親歯車側の軸をそのまま延長してもう一組の逆転機に動力を伝達する、という手法を採ることができず、1台車2軸駆動を実現するには、チェーンあるいはサイドロッドなどによる必要があった。しかも、ギアボックス一体構造の重い逆転機が車軸に吊り掛けられているため、電車の吊り掛け式ほどではないにせよ、台車のばね下重量が大きくなるという問題もあった。このため、日本の気動車においてはキハ90・91形以降、変速機に逆転機を内装して台車側には減速機のみ搭載する方式を採用(この方式の場合も、1台車2軸駆動を実現するには推進軸の干渉を避けるために台車のボルスタをなくし、Zリンク式の仮想心皿を採用(ボルスタレス台車)する必要があり、合わせて枕ばねのダイレクトマウント方式によるダイアフラム形空気ばね化が必須であった)が一般化するまで、これらの問題回避、特に1台車2軸駆動の実用化には様々な困難がつきまとうこととなった。
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逆転機
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/26 18:51 UTC 版)
「国鉄キハ90系気動車」の記事における「逆転機」の解説
逆転機は従来の減速機と一体構造での台車トランサム(横梁)への装架がキハ91形の2軸駆動化により困難となり、また変速機との一体化による機構の簡素化なども目的として、液体変速機に内蔵とされた。このため各動力台車には、逆転機ではなく推進軸の方向転換と最終減速段を受け持つ減速機が各動軸に装架され、キハ91形では2基の減速機間は自在継手で連結された。
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