児童・生徒
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/05 21:14 UTC 版)
ジュール・フェリーの教育改革による公教育の無償制、義務制、そして非宗教性(ライシテ)の保障、ならびに公立学校の教師の非宗教性(ライシテ)の保障(1886年ゴブレ法(フランス語版))により、公教育におけるライシテは、児童・生徒の思想・良心の自由を保障すると同時に、将来の市民である子供たちが自由に学び、質問し、学習内容に基づいて自ら考えて判断を下し、批判することのできる環境を提供するものである。したがって、公立学校においては、あらゆる共同体主義的又は自民族中心主義的イデオロギーや不寛容なセクト的団体の信条・教義に影響されない環境を確保しなければならない。 1980年代の半ばに、フランスでは公立学校におけるイスラムのヴェール(ヒジャブ、ブルカ、ニカーブ等)の着用をめぐって論争が生じた。ヴェール着用支持派 ― 一部のイスラム教徒、個人の自由の擁護者 ― は、ライシテは1789年人権宣言の原則である思想・良心の自由を保障するものであると主張し、反対派もまた、ライシテは教育に不可欠とされる中立性と平等を保障するものであるとして、児童・生徒の服装の中立性を訴えた。とりわけ、1989年にクレイユ市でイスラム系の2人の女生徒がスカーフを校内で着用していることを理由に、教師より教室に入ることを禁止された事件が発生すると、識者間でも意見が分かれ、たとえば、哲学者エティエンヌ・バリバールは、「殊に、人種差別とはいえないが、外国人排斥という性質をもったイスラム教徒に対する敵意が兆しとなって現れ始めているときに、共和国の公立学校はいかなる生徒も追放してはならない。なぜなら、在学中こそが、宗教的蒙昧主義から生徒自身が自らを解放する最良の機会であるからだ」と、生徒の追放に反対した。一方、文化人類学者のフランソワ・プィヨンは、これに反対して、「これ見よがしに着用されているイスラムのスカーフは、新たな原理主義者による攻撃の一環をなしている。それは、宗教の影響力から公共の場を保護することを望むわが国のライシテ基本原則に反するものである。少なくとも、校内では、少女たちを性差別的な服従から解放すべきではないのか」と述べた。 また、スカーフ着用反対派の哲学者、作家ら ― エリザベット・バダンテール、レジス・ドゥブレ、アラン・フィンケルクロート、エリザベット・ド・フォントネ、カトリーヌ・カンツレール(フランス語版) ― は、1989年11月に『ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール(フランス語版)』紙に掲載した「イスラムのヴェール」と題する訴えで、「自ら考える力を育てるためには、出自の共同体を忘れて、自分とは違うものについて考える喜びを知る必要がある。教師がこの手助けをするためには、公立学校は今後も本来あるべき場、すなわち解放の場でなければならず、宗教が幅を利かせる場であってはならない」と主張した。 リオネル・ジョスパン教育相は国務院に裁定を求め、国務院は、1989年11月27日付で、「表現の自由及び宗教の表明の自由の行使である限りにおいて、ライシテ原則に抵触しないが、宗教的標章が、その性質上、又はこれを個人的に又は集団として着用する条件により、ないしはこれ見よがしな (ostentatoire) 又は権利要求的な性質により、圧力行為、挑発、プロゼリティスム(宗教勧誘)又はプロパガンダとなるおそれがある場合は、かかる標章の着用は許されるべきではない」という見解を発表した。 これを受けたジョスパン教育相は、12月に宗教的標章に関する通達を出し、「生徒は、宗教的信仰を助成するような衣服及びその他の目立つようなすべての標章に注意しなければならない。・・・これについて紛争が起こった場合は、直ちに生徒とその父兄に対して対話を求めなければならない。対話は、生徒の利益のため、そして、学校がうまく機能するために、宗教的標章の着用をやめさせることを目的とする」とした。 こうした議論は以後さらに紆余曲折を経て、バロワン報告書(「新しいライシテ」)およびスタジ報告書(上記参照)、そして最終的には非宗教の公立学校における「目立った」(ostensible)宗教的標章の着用を禁じる2004年3月15日付法律第2004-228号(「宗教的標章規制法」)の成立を見ることになった。この法律は教育法典第L141-5-1条として規定されている。 公立の幼稚園、小学校、中学校及び高等学校においては、宗教的帰属をこれ見よがしに表わす標章又は服装を身につけることは禁止されている。校則には、処分に先立ち、当該児童・生徒と話し合いを行う旨を明記する。 「宗教的標章規制法」制定直後、シーク教徒の高校生が学校でターバンを脱ぐことを拒否して退学になる事件が発生した。親から訴えを受けた「差別禁止・平等推進高等機関 (Haute Autorité de lutte contre les discriminations et pour l'égalité)」(通称「ラ・アルド (la Halde)」)は国務院に裁定を求め、国務院は、ターバンは慎ましい標章とは見なされず、このような標章の着用は教育法典第L141-5-1条の規定に違反するという見解を示した。 一方、1999年にフレール(オルヌ県)の中学生だったイスラム系の女性2人が当時体育の授業で繰り返しスカーフを脱ぐことを拒否して退学になったことについて、欧州人権裁判所に対して訴えを起こしていたが、欧州人権裁判所はトルコおよびスイスにおける同様の判例に基づき、「フランスでは、特に公立学校においては、国民を守ることが最優先事項であり、ライシテは全国民が従うべきフランス共和国の憲法上の基本原則である」として、2人の訴えを却下した。
※この「児童・生徒」の解説は、「ライシテ」の解説の一部です。
「児童・生徒」を含む「ライシテ」の記事については、「ライシテ」の概要を参照ください。
「児童 生徒」の例文・使い方・用例・文例
- この本はほとんどの児童に読まれている
- 児童心理学
- その会社は主に児童書を出版している
- 打ち傷や切り傷は児童虐待の表れかもしれない
- 私は児童虐待には断固反対する
- 彼は最初は児童センターでは補助職員だった
- 児童がXの楽しさを味わいます
- 彼女は未就学児童に読み書きを教えた。
- 懲戒権の濫用は児童虐待である。
- 覚せい剤、大麻、児童ポルノは輸入してはならない貨物の例である。
- 児童向けプールは浅い。
- あなたは児童福祉の担当です。
- 私たちは児童の幸せを願っている。
- 私は大人向けの小説よりも児童文学の方が好きです。
- 私は児童です。
- 彼女は児童心理学専攻だ。
- 図書館にはたくさんの児童書がある。
- 児童心理学者の中には、親はもっと子供と遊んでやり、考えさせる問題を与えてやるべきだ、と考える人が多い。
- 児童はみんなその新しい先生が好きになった。
- 児童たちは、もうすぐやって来る遠足を楽しみにしている。
- 児童・生徒のページへのリンク