スラグと融剤
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/10 01:34 UTC 版)
原料鉱石に何も加えないでも、鉱石にケイ酸塩や石英などからなる母岩成分が混在する以上は、金属製品から分離すべきスラグは発生する。たとえば、たたら製鉄のような前近代以来の古典的製鉄においては、海綿状に還元生成した鉄塊の内部に粒子状、あるいは塊状に分散してスラグが生じる。その場合には、鉄塊を砕くことによって、または、鍛造によって赤熱した鉄素材を叩いて、金属鉄の組織から搾り出すことによって、スラグの成分が分離される。 近代以降の金属精錬では効率が求められるため、金属の溶融と同時に溶融することによって、きれいに浮上させて分離しうる、いわば「良い」スラグを作る必要がある。スラグが「良い」スラグとなる条件には、流動し始める温度が低いこと、金属への溶解度が低いこと、粘性が小さいこと、比重が小さいことなどが求められる。これらの性質は、いずれも、金属本体とすみやかに分離するために必要なものである。例えば、SiO2は3次元網目状にケイ素と酸素が結合している。このため、スラグに含まれるSiO2の比率が高いと、スラグの粘度が上昇し、金属との分離に時間がかかる。このため、スラグでは、1次元のケイ酸イオンを作ることによって流動性を高めるように成分が調整される。この目的で高炉においては石灰石 (CaCO3) を鉱石に加えながら加熱される。このように、SiO2を多く含んでいる鉱石に対しては、塩基性の強い金属酸化物CaO(ここでは石灰石の分解によって生じている)を加えることによって、流動点が低く、粘度が小さいケイ酸塩化合物を生成する工程が採用される。この工程は、多くの種類のガラスの製造工程と共通している。このように、「良い」スラグを形成するために用いられる物質は、融剤(フラックス)と呼ばれている。このフラックスとして、ヨーロッパでは有史以来蛍石 (CaF2) が多く使われてきた。
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