にごりえとは? わかりやすく解説

にごりえ

樋口一葉小説明治28年(1895)発表酌婦お力通して下層社会暗い宿命観を写実的に描く。


にごり‐え【濁り江】

読み方:にごりえ

水の濁っている入り江

「—の澄まむことこそ難(かた)からめいかでほのかに影を見せまし」〈新古今・恋一


にごりえ

作者樋口一葉

収載図書一葉文学
出版社和泉書院
刊行年月1987.2
シリーズ名新注近代文学シリーズ

収載図書ちくま文学 15 とっておきの話
出版社筑摩書房
刊行年月1988.9

収載図書ちくま日本文学全集 041 樋口一葉
出版社筑摩書房
刊行年月1992.10

収載図書たけくらべ
出版社集英社
刊行年月1993.12
シリーズ名集英社文庫

収載図書全集 樋口一葉 2 小説編 2 新装復刻版
出版社小学館
刊行年月1996.11

収載図書樋口一葉
出版社筑摩書房
刊行年月2000.9
シリーズ名明治文学

収載図書樋口一葉
出版社岩波書店
刊行年月2001.10
シリーズ名新日本古典文学大系 明治

収載図書愛蔵版 ザ・一葉樋口一葉全作品日記全一
出版社第三書館
刊行年月2002.11
シリーズ名第三書館ザ・作家シリーズ

収載図書にごりえ・たけくらべ
出版社新潮社
刊行年月2003.1
シリーズ名新潮文庫

収載図書にごりえ・たけくらべ
出版社岩波書店
刊行年月2003.1
シリーズ名岩波文庫

収載図書たけくらべ にごりえ 42
出版社角川書店
刊行年月2003.2
シリーズ名角川文庫

収載図書たけくらべ・にごりえほか
出版社教育出版
刊行年月2003.9
シリーズ名読んでおきたい日本名作

収載図書にごりえ・たけくらべ
出版社日本文学館
刊行年月2004.3
シリーズ名日本名作選

収載図書樋口一葉/一宮操子
出版社新学社
刊行年月2004.10
シリーズ名近代浪漫派文庫

収載図書にごりえ―現代語訳樋口一葉
出版社河出書房新社
刊行年月2004.12
シリーズ名河出文庫

収載図書たけくらべ にごりえ
出版社フロンティアニセン
刊行年月2005.2
シリーズ名第2刷 (フロンティア文庫)

収載図書一葉小説
出版社新風舎
刊行年月2005.5

収載図書樋口一葉小説集
出版社筑摩書房
刊行年月2005.10
シリーズ名ちくま文庫

収載図書たけくらべ・にごりえ
出版社舵社
刊行年月2005.11
シリーズ名デカ文字文庫

収載図書朗読文学のしずく」 第2巻
出版社中経出版
刊行年月2007.9
シリーズ名楽書ブックス

収載図書樋口一葉
出版社筑摩書房
刊行年月2008.4
シリーズ名ちくま日本文学

収載図書新編 日本女性文学全集 第2巻
出版社
刊行年月2008.9


にごりえ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/12 22:25 UTC 版)

にごりえ
作者 樋口一葉
日本
言語 日本語
ジャンル 短編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出文芸倶楽部1895年9月号(第1巻9編)
刊本情報
収録 『一葉全集』
出版元 博文館
出版年月日 1897年1月
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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にごりえ』は、樋口一葉短編小説1895年明治28年)9月、博文館文芸倶楽部』に発表された。

銘酒屋私娼お力が、落ちぶれて妻子とも別れた源七と情死するまでを描いた作品で、一葉の小説の中で最も写実性の高いものとなっている[1][2]。「にごりえ」という題名は『伊勢集』の和歌に因んだものとみられている[1][注釈 1]

作品背景

下谷龍泉寺町(現・台東区竜泉)から1894年(明治27年)5月に転居した本郷区丸山福山町(現・文京区西片)には、銘酒屋が立ち並び、夜ごと不特定多数の男たちに身を売って生活している女たち(私娼)が多くいた[1]。一葉は彼女たちによく頼まれて恋文の代筆をしたという[1]

一葉の家の隣にあった銘酒屋は「鈴木亭」という店で、主人公の「お力」は、その店の酌婦「お留」をモデルにしたものともいわれている[1]。また、結城朝之助の造型には、一葉がその恋を諦めざるを得なかった半井桃水があるとみられている[1][3]。『にごりえ』執筆直前の1895年(明治28年)1月には、『文學界』同人の戸川安宅から借りたドストエフスキーの『罪と罰』を読んでいたという[4]

『にごりえ』が発表された1895年(明治28年)は、1889年(明治22年)7月12日に死去した一葉の父・則義の七回忌にあたる[5][4]。一葉は法要のため博文館に原稿料の前借りを申し出ており、『にごりえ』の原稿はその引き換えとして執筆された[5]山梨県立文学館所蔵の未定稿によれば、当初の草稿では「ものぐるひ」「親ゆずり」の仮題が付けられている[1]

あらすじ

丸山福山町の銘酒屋「菊の井」の看板酌婦(私娼)のお力は、何かとお力の話を聞きたがる上客の結城朝之助に淡い恋心を抱くようになるが、それ以前に馴染みになった客に源七がいた。源七は蒲団屋を営んでいたが、お力に入れ込んだことで没落し、今は妻子ともども長屋での苦しい生活をおくっている。しかし、それでもお力への未練を断ち切れずにいた。

盆の7月16日の夜、お力はお客の酒の相手をしている最中に発作的に席を立って外に出ていく。厭世的な気分になりながら「此ままに唐天竺の果までも行つて仕舞たい、あゝ嫌だ嫌だ嫌だ」と人の声も物の音もしない静かな処へ行きたいと物思いにふけり、気が狂いそうな心地でさまよい歩いていると、「お力何処へ行く」と誰かに肩を叩かれ、見ると朝之助だった。

朝之助と一緒に店に戻ったお力は酒に酔って初めて朝之助に不遇な身の上話を語るが、それを一通り聞いた朝之助は突然「お前は出世を望むな」と言う[注釈 2]。お力は驚き、望んだところで貧乏暮らしが落ちで、玉の輿までは思いませんと言い、朝之助の「始めから何も見知つてゐるに隠すは野暮の沙汰ではないか」という申し出をはぐらかし、「どうせこんな身でござんする」と自身の因果を思い打しおれて黙ってしまう。そして夜が更けて帰ろうとする朝之助をお力は引き止め泊らせる。

一方、源七は仕事もままならなくなり、家計は妻のお初の内職に頼るばかりになっていた。そんななか、お力の店の近くにたまたま行った子の太吉がお力から高価な菓子(カステラ)を貰ったことをきっかけに、それを嘆く妻と諍いになり、ついに源七は妻子とも別れてしまう。その後、お力は源七の刃によって、無理とも合意とも分からない心中の片割れとなって死ぬ。

映像化作品

脚注

注釈

  1. ^ 伊勢集』の以下の二首の和歌から「にごりえ」の語を取ったものとみられている。
    にごりえの すまむことこそ かたからめ いかでほのかに 影をだに見む」
    「すむことの かたかるべきに 濁江の こひぢにかげも ぬれぬべらなり」
  2. ^ この「望むな」の意味については、禁止なのか詠嘆なのか解釈の混乱がある[6]。なお、未定稿では結城の名前は道雄で、〈お前は出世をのぞむかとだしぬけに道雄にいはれて〉とも書かれていた[6]

出典

  1. ^ a b c d e f g 「第二編 作品と解説〔にごりえ〕」(小野 2016, pp. 162–186)
  2. ^ 三好行雄「解説」(新潮文庫 2003, pp. 271–282)
  3. ^ 前田愛「一葉日記覚え書 2『厭ふ恋』」(『樋口一葉の世界』平凡社、1978年12月)。前田 1989, pp. 97–110に所収
  4. ^ a b 北川秋雄「『にごりえ』論――〈狂気〉の行方」(北川 1998, pp. 72–94)
  5. ^ a b 『樋口一葉と甲州』、p.40
  6. ^ a b 北川秋雄「樋口一葉『にごりえ』論のために――謎を生成する語り」(姫路獨協大学外国語学部紀要 第9号・1996年1月)pp.1-40。「『にごりえ』論のために――謎を生成する語り」として北川 1998, pp. 42–71に所収
  7. ^ にごりえ(1973年)”. テレビドラマデータベース. 2021年2月6日閲覧。

参考文献

関連項目

  • 鏑木清方 にごりえを題材に連作を手掛けた

外部リンク

フジテレビ 百万人の劇場1960年5月1日
前番組 番組名 次番組
にごりえ
花環
NET NECサンデー劇場1961年5月21日
新しき明日の来るを
にごりえ
生きて愛して死んで
フジテレビ シオノギテレビ劇場1964年1月24日 - 2月14日
(なし)
山本富士子アワー・にごりえ
篠の女
フジテレビ 金曜21:00 - 21:30枠(1966年1月24日 - 2月14日)
山本富士子アワー・にごりえ
【当番組よりドラマ枠
篠の女
NET 女・その愛のシリーズ
にごりえ
テレビ東京 日本名作ドラマ1993年10月25日
にごりえ

にごりえ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/05 16:39 UTC 版)

にごりえ (映画)」の記事における「にごりえ」の解説

銘酒屋菊乃井」の人気酌婦お力付きまとう男・源七源七お力入れ上げたあげく、仕事疎かになって落ちぶれ、妻と子長屋住まいかこっている。お力別れてもなお忘れられず、いまだに仕事には身が入らない。妻には毎日愚痴こぼされ責められる日々一度惚れた男の惨状を知るがゆえに、お力鬱鬱とした日を送っている。ある日源七の子菓子持って家に帰るお力もらった菓子知り、妻は怒り、子を連れ家を出る。妻が戻ってみると、源七の姿がない。菊乃井でもお力が行不明騒ぎになっていた。捜索中警官心中らしい男女遺体を見つける。女に抵抗のあとが認められた。

※この「にごりえ」の解説は、「にごりえ (映画)」の解説の一部です。
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にごりえ

出典:『Wiktionary』 (2021/08/21 10:24 UTC 版)

名詞

にごり

  1. 水の濁っ入り江

発音(?)

に↗ごり↘え

名詞

にごり

  1. 現代日本語に同じ)にごりえ。



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