【翻訳】
COVID-19下での投資家からの
ISDS提訴に対する保護:政府へ行動を求める
Nathalie Bernasconi-Osterwalder
Sarah Brewin
Nyaguthii Maina
翻訳:内田聖子
2020年4月
訳者解説:新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を受け、世界各国ではロックダウンや企業の活動制限、収用など様々な緊急措置がとられている。人々の健康を守るために当然の措置であるが、企業・投資家にとっては利益を大幅に損なうという面がある。国際市民社会は、COVID-19に関連した政府の緊急措置が、多くの投資協定・貿易協定に含まれる「投資家対国家紛争解決(ISDS)」の仲裁に持ち込まれることを懸念している。過去には、経済危機や社会的動乱に対する政府の措置がISDSで提訴されてきた事例は多くある。かつてない健康・経済への打撃をもたらしている今回のCOVID-19のパンデミックに対する措置が次々とISDS提訴の対象となってしまえば、特に途上国・新興国にとっては復興もままならず、深刻な影響となる。ここでは、国際持続可能な開発研究所(International Institute for Sustainable Development:IISD)による解説を翻訳する。専門的な用語や分析も多く読みづらいかと思うが、過去のケースや重要な論点が多く含まれるためぜひ参考にしていただきたい。(内田聖子)
はじめに
COVID-19のパンデミックは世界中で健康と経済を深刻な危機に陥らせている。政府は、緊急の介入と、ロックダウンや厳格な封じ込めなどの対策を通じて、ウイルスの蔓延を抑制するよう行動している。 また、政府は不可欠な食料品や医療機器、健康関連サービスの供給を確保するための措置も講じている。健康という観点から見れば重要である一方、これらの措置の多くは企業に大きな打撃を与えており、世界中で締結されている3000以上の投資協定から生じる投資仲裁という前例のないリスクを生み出している。
予見可能なシナリオでは、政府のウイルス関連の緊急措置に対して数百の外国投資家が異議申し立てをする可能性がある。その多くは、第三者による資金提供と弁護士への緊急時における報酬支払を通じて支援されるであろうが、いずれも投資仲裁ポートフォリオでの高いリターンを求めている。投資家と国家の仲裁制度では、各ケースは国際仲裁人のさまざまな組み合わせからなる個々の仲裁廷によって裁定され、政府は毎回数百万ドルのコストをかけて複数の戦線で戦うことを余儀なくされる。結果が現在のパターンに従っている場合、予測は不可能かつ大部分は矛盾するものであり、賠償金は数億ドル、場合によっては数十億ドルに達する可能性がある。同様の事実に基づく訴訟ケースの中には、条約違反ではないと判断されることがあるにもかかわらずである。
深刻な経済危機の時代に、公衆衛生システムへの支援はこれまで以上に重要である。 政府は、あらゆる投資紛争ケースというリスクを冒すことなく、経済支援パッケージを策定するための財政政策スペースを必要としている。各政府がこれを行う唯一の方法は、COVID-19の関連措置に対しての条約に基づく投資家対国家仲裁制度の適用を一時停止するか、もしくは国際法の防御がこの非常時にどのように適用されるかを明確にするために、各国政府が結集することである。
COVID-19が健康と経済に及ぼす影響に対処するための政府の措置
ほとんどの政府が、COVID-19が及ぼす公衆衛生と経済への影響に対処するために、抜本的かつ広範な対策を講じている。世界保健機関(WHO)が推奨したように[1]、ウイルスの蔓延を抑制するために、各政府は必須でないサービスを閉鎖し、地方または国の行動を制限するとともに、国内での必須な物品および労働者の移動を容易にする手段を講じている。店舗、工場、航空会社、鉱山その他のビジネスは、緊急規制によって大幅な業務縮小または停止とされた。航空便のキャンセルや空港閉鎖などを含む、国境を越えたウイルスの拡大を阻止する各政府の措置は、世界人口の93%に対して実施されていると推定される[2]。その結果、国際航空運送協会は、2020年の世界全体の航空会社の収益損失は、630億ドルから1130億ドルになると予測している[3]。
また各政府は、ウイルスに感染した多数の患者を治療する公的病院の能力を守るために、医療及び社会サービスのネットワークを再編成すると同時に、医薬品と個人防護具の供給を確保するための措置を講じている。カナダ[4]、エクアドル[5]、およびドイツ[6]は、特許化された医薬品及び医療機器に対して強制実施権より容易に発行できるようにするためのあらゆる措置をとった。アフリカ諸国は国連から「医療関連の知的財産への緊急アクセスを要求するよう」[7]求められており、イスラエルはすでにCOVID-19に適用できる可能性があるHIV薬の強制実施権を発行している[8]。スペイン[9]とアイルランド[10]は、負担の大きい公的医療システムを支援するために、民間病院を一時的に国有化することを選択した。スペイン政府は、この危機が終わるまで民間の医療会社の経営を引き継いだ。イタリア政府は「キュラ
イタリア」命令を可決し、医療機器及びその他の動産の一時的または永久的な要求を含む数々の緊急措置を可能にした[11]。
政府はまた医療用品及び医薬品、さらに食料の輸出を制限している[12]。例えばインドは、抗マラリア薬ヒドロキシクロロキンの輸出を禁止したと報告されている。これに対し、COVID-19に対する潜在的な治療薬であると批判する国もある[13]。他の国は、国内の食糧安全を確保するために輸出禁止を課している。世界最大の小麦輸出国であるロシアは、米とソバの輸出を10日間禁止し[14]、もう1つの主要輸出国であるベトナムは、新たな米輸出契約の一時停止を実施した[15]。カザフスタンは小麦粉、ソバ粉、砂糖、ひまわり油の輸出を停止し、カンボジアはすべての米の輸出を禁止した[16]。同時に一部の国は、自国内での必須品と労働者の移動を促進しようとしている。例えばペルー議会は、国内における主要な物品及び労働者の自由な移動を促進するために、民間への国営有料道路の料金徴収を一時的に停止することを承認した[17]。
政府はまた、COVID-19危機による経済的および財政的な影響に対処するための緊急措置を採用している。3月3日現在、中国は契約上の義務を果たせない中国企業の責任を制限するために4811件の不可抗力証明書を発行している[18]。オーストラリアは、センシティブな分野における不良債権の購入を防御するために、一時的に外国投資の事前審査の基準額を0ドル(以前の基準額は1億7000万〜7億4,000万ドルであった。ただし分野によって異なる)に設定した[19]。欧州連合(EU)は、「いかなる海外直接投資も、欧州市民の健康ニーズを満たすEUの能力に悪影響を及ぼさないことを確保するために警戒する必要である」と警告しつつ、戦略的産業への海外直接投資(FDI)による潜在的なリスクを提示した。そして加盟国に海外直接投資の事前審査を実施するよう要請した[20]。
銀行セクターにおいては、英国のプルーデンシャル規制当局が英国最大の銀行に対して、今回の危機に際して配当、自社株買い、役員報酬の発行を一時停止するよう圧力をかけた。銀行はこれを遵守したため、75億ポンドに相当する株主への支払いは取り消された[21]。
パンデミックによる経済の低迷はまた、多くの国での多額の公的債務を悪化させている。ザンビアは、ソブリン債の再編成を支援するようアドバイザーに依頼したと報じられている[22]。新興市場の専門家は、ザンビア、エクアドル、アルゼンチンのソブリン債の保有者に、その価値の大幅な損失を想定するよう警告している[23]。
過去から学ぶ:危機的状況における投資家と国家の紛争仲裁
深刻な国家危機の際に講じられた措置を含む、健康、貿易、金融に関係する政府の公共目的の措置は、投資家から異議申し立てをされる可能性がある。投資家は、ほとんどの二国間投資協定(BIT)及び貿易協定の投資章に含まれる、投資家対国家紛争解決(ISDS)の条項の下で規定される投資家と国家の仲裁廷を使用して、これらの措置に異議を申し立てることができる。外国投資家は、政府の措置が、協定の下で政府が投資家に負っている1つまたは複数の保護に違反していると主張し、ISDS提訴をすることができる。ほとんどの投資協定において、これらの投資家保護は幅広く、かつ漠然と定義されている。外国投資家は、収用に対する補償や、外国投資家への「公正かつ公平な」待遇、「完全な保護及び安全」の提供、そして国内または他の外国投資家よりも不利な待遇を与えないことを政府に要求する。また通常、協定は、限られた例外の他は資本移動の制限を認めていない。
2007年から2008年に起こった世界金融危機、そして近年の世界の国家及び地域における政治・経済的に不安定な時代は、危機の際に外国投資家がISDSをどのように利用するのかを表している。
アルゼンチンでの2001年の経済危機 |
2008年の世界金融危機の間、ベルギー政府は銀行及び保険グループであるフォルティスを再編し、国有化した。 フォルティスの主要株主の1人であるピン・アンは、改革後の投資損失を回復するために、約10億ドルの補償を求めるベルギー政府に対する提訴を開始した。その後この請求は、管轄権に基づき却下された(この紛争は、適用可能な二国間投資協定が発効する以前に発生していた)[28]。
2013年、ギリシャの債務危機に際してキプロスで2番目に大きな銀行がギリシャの債務不履行にさらされることを制限するためにキプロス政府がとった規制措置が、ISDSによる10億5000万ユーロの賠償請求の対象となった。この訴訟を裁定するために設置された仲裁廷は管轄権を受け入れたが、投資家の主張は却下された[29]。
2011年から2012年にかけての「アラブの春」での社会的・政治的な激動に続き、北アフリカ及び中東諸国に対するISDSの提訴事案が急増したが[30]、その一部は、危機の影響に対処するためにとられた政府の措置に起因するものである。エジプトでは、かつてないレベルの暴力と社会不安によって、国内のガス供給が停止された。これは、政府が「社会の基本的機能と国内の安定の維持に対する脅威」であると見なしたためである[31]。国内の電力市場への天然ガスの供給を優先するために、スペイン所有の工場へのガス供給を停止するという政府の決定は、ISDS提訴によって投資家が20億ドル以上の賠償金を獲得するという結果をもたらした[32]。
ごく最近では、レバノン政府が流動性の課題に対処するために課している銀行の引出制限などの資本規制が、国内における抗議とデモを刺激している[33]。投資仲裁を専門とする法律事務所は、影響を受けた外国人投資家が、レバノンの二国間投資協定に基づくISDS提訴を行う方法をすでに模索している[34]。
危機ではない時期にも、たばこのラベル表示法[35]や健康に害を及ぼす化学物質の禁止[36]を含む、公衆衛生を守るための政府の措置は、ISDSによって提訴されてきた。2016年、コロンビア政府はスイスの製薬会社ノバスティスに対して抗がん剤の価格を引き下げるよう要求したが(強制実施権の使用も言及された)、これによって政府はISDS訴訟の脅威に直面した[37]。2013年、米国の製薬会社イーライ・リリーは、2つの医薬品特許の無効化についてカナダ政府を提訴した。この提訴は却下されたももの、仲裁廷はカナダの裁判所が特許を無効化した際に、投資家の待遇に関する協定の基準を遵守していたかどうかを決定するという任務を負っていた[38]。
不安定な中での国家の防御
COVID-19のパンデミックとその結果生じたグローバルな経済危機の際、またはその後にとられた政府の措置に異議申し立てをする外国投資家が起こすISDS訴訟に対して、政府が法的防御を行うことは可能である。しかし過去の事例からは、政府が協定に違反し、賠償金を支払わなければならないという証明を回避するために、政府がこうした防御をうまく利用するのは困難な場合がある。特に関連があるのは、慣習国際法の必要性の教義である。これは、国家の本質的な利益に対する重大かつ差し迫った危機的状況での政府の国際義務違反を正当化するために使用することができるだろう[39]。 防御の必要性に対する基準は非常に高く、政府の行為が「国家が重大かつ差し迫った危機から本質的な利益を守る唯一の方法である」ことが求められる[40]。防御のためのこの要素は、仲裁廷に対して、より費用がかかりまたは不便であったとしても、その状況の中で政府が利用可能であった代替的な措置について、すべての範囲にわたって検討することを要求する。その後、これらの措置のうちの1つが投資家に対する政府の義務に違反することなく同じ効果を達成できたかどうかの判断は、仲裁廷に委ねられている[41]。先述の天然ガスの提訴事案の中におけるエジプトの防御の必要性は、仲裁廷によって却下された。それは、政府が講じた措置は「本質的な利益」への脅威を防ぐ「唯一の方法」であることを立証できなかったからであった[42]。ISDSに反対する国際NGOのキャン―ペーン |
防御の必要性は、同様かあるいは非常に類似した状況を考慮しながら投資仲裁廷によって解釈され、一貫性なく適用されてきた。例えば、先述のアルゼンチンの提訴ケースについて、ある事案では仲裁廷は政府の行為を「必要性の状況」に貢献したと考え、防御の必要性を却下した[43]。別の仲裁廷は、同様の状況におけるアルゼンチン政府の防御の必要性を支持した[44]。これらのケースは、わずか18カ月間で決定された[45]。
ほとんどの二国間投資協定は必要性の原則について規定していないため、それを解釈する方法の決定は、仲裁廷に委ねられている。各仲裁廷は通常3人の仲裁人で構成され、特定の事案ごとに設置されるため、その解釈は大きく異なり、アルゼンチンのケースに見られるように、潜在的に矛盾する広範囲の結果が生じる。過去の二国間投資協定とは対照的に、新世代の二国間投資協定は通常、政府が公共の利益を保護するための措置を講じる必要がある政策空間をより保証している。しかしながらこれらの新しいアプローチの有効性は引き続き検証される必要があり、また仲裁廷による解釈の余地はなお残されている。投資協定の下での仲裁結果は、これまで同様に非常に予測不可能なものである。
ISDS提訴において、可能であれば政府は例外と防御を提起する必要がある[46]。それは、COVID-19の危機に際してとられた緊急措置に対して、政府が関連する協定に違反しているのかどうか、また外国投資家に賠償するべきかを決定する3人の各仲裁人に対してである。すべての措置が協定違反となるわけではなないだろう。このことは、前例のない世界的な混乱の時代に、公衆衛生やマクロ経済の安定性または政府を保護する憲法及び国内法の枠組みについての知識がほとんどない3人の弁護人を前にして、政府が公共の利益を保護するために講じた措置を守る必要があるという事実が損なわれることを意味しない。
投資家対国家の提訴を回避する必要性はかつてないほど高まっている
前例のない規模での公衆衛生と経済の課題に国家が直面している今、ISDS提訴を回避する必要性はかつてないほど高まっている。以下で提案されているような対応を政府が行わない限り、投資家対国家の仲裁という差し迫った脅威が政府にのしかかってくるだろう。複数の外国投資家が、予測不可能な結果を伴う同一の措置に異議を申し立てるための重要な事実に基づいて提訴をすることができるだろう。これは、3000を超える投資協定における幅広く、漠然とした枠組みの条約上の義務と、提訴に持ち込まれた各ケースが異なる仲裁廷によって決定されるという事実によるものである。判例法は、条約の基準自体とすべての条約に適用される慣習国際法の両方に、一貫性のない解釈をもたらした。先述のアルゼンチンでの提訴や、最近の一連のスペインの再生可能エネルギーに関する提訴における同様もしくは類似する一連の政府による措置を検討する様々な仲裁廷によって出されたばらばらの結論は、そのことの主要な例を示している[47]。
COVID-19に対する措置に曖昧な協定の基準がどのように適用されるかについての明確さは欠落しており、また仲裁廷は過去の決定に拘束されない。このことは、弁護士及び第三者の資金提供者に対して、世界中で同様の措置への複数の異議申し立てを提起することを推奨する可能性がある。提訴する側が仲裁結果に大きな利害関係を持つ仲裁廷の資金提供者に訴えることができるという事実は、危機の際に投機的または周辺的な提訴をさらに推進する可能性がある[48]。仲裁廷のニュースレター及び法律事務所は、COVID-19に関連する投資家と国家の仲裁についてすでに予見している[49]。
一部の投資家対国家の仲裁廷は、彼らが直面するCOVID-19に関連する措置は、政府には有効な防御策がない条約違反であると結論づけることができるだろう。結果として、被申立国は、外国の申立人に多額の賠償金を支払うよう命じられる可能性がある。過去の仲裁廷は、これまでに少なくとも46の協定に基づく投資家対国家の提訴で1億ドルを超える賠償額を決定しており、1件で400億ドルの賠償金となった事例もある[50]。
巨額の賠償金は、特に途上国に深刻な課題をもたらす。これらの国々はまた、COVID-19による危機と世界的な景気後退という二重の影響をより大きく受ける可能性が高く、最終的には既存の債務負担を悪化させることになるだろう。先述のウニオン・フェノーサのガスの事例で、エジプトは20億ドル及び利息を支払うよう命じられた[51]。この金額は、2018/19年のエジプトの保健・教育の国家予算合計の158.2億ドルの12%に相当するものであった[52]。このように高額になる大部分の理由は、投資仲裁人が損害を算定する際に用いる方法によるが、これは一貫性がなく推測的であり、また主要な文脈上の事実が考慮に入れられない傾向がある[53]。
最後に、ISDS提訴からの防衛には、たとえ最終的に成功したとしても、高額の費用と時間がかかり、貴重な人材を投入しなければならない。OECDの調査によれば、提訴を防御するための平均的な費用は800万ドルである[54]。場合によってはこの金額を大きく超過するケースもある。フィリピンはドイツの投資家による2件の提訴の弁護費用に5800万ドル[55]を、オーストラリアは先述のたばこの表示ラベルに関する提訴の弁護費用に2800万ドルを支出した[56]。
危機における救済と債務の再編
多くの国の政府は、COVID-19の危機を乗り切るために、国際通貨基金(IMF)または世界銀行に支援を要請するだろう。COVID-19に関連した投資家と国家の訴訟によって生じる負債は、その財政的支援が台無しにならないよう回避されるべきである。2019年、投資仲裁廷は、パキスタン政府に外国の鉱山会社へ60億ドルの賠償金を支払うよう命じた[57]。そのわずか2か月前、IMFはパキスタンの経済崩壊からの救援策に同意していたのだが、この金額も60億ドルだった[58]。COVID-19に関連する投資家と国家の紛争は、将来的な救済を無価値にする可能性がある。
同様に、いま各国政府、特に発展途上国の政府は、これまで以上に債務を再編する柔軟性を必要としている。イタリアの債券者がアルゼンチン政府に対して行った投資訴訟は、投資家と国家の仲裁がいかに債務再編をより複雑にするのかを示している。2011年、仲裁廷は外国の債券者(6万人のイタリア国民)に対して、二国間投資協定に基づき政府を提訴することを初めて許可した[59]。債券者は、アルゼンチンのデフォルト及び債券返済を変更することを通じた国債の部分的な再編に対して提訴した。現在の健康及び経済の危機によって、多くの国は債務を返済できなくなるであろう。このことは、一連のデフォルトを回避するためにはグローバルなレベルで債務返済を停止する必要があることを導き出している[60]。政府の債務再編に対して、二国間投資協定のもとで多数の提訴を行うことを債権者に許せば、各政府が自国のソブリン債を管理するという選択を制限することになる。
投資家対国家の紛争急増を回避するための集団的な行動の必要性
2020年4月2日[61]、国連総会は、コロナウイルスのパンデミックによる「前例のない影響」を認識し、COVID-19の被害を「封じ込め、緩和し、克服するための国際協力の強化」を求める決議[62]を全会一致で承認した。この決議は、国連総会の「国際協力及び多国間主義へのコミットメント」を再確認し、国連事務総長アントニオ・グテレスに対し、パンデミックへのグローバルな対応と、「すべての社会に対する社会的、経済的、財政的な悪影響」について、各国への呼びかけと調整を主導するよう要請した[63]。この決議に沿って各国は協力し、そして外国企業、株主、ポートフォリオ投資家、債券者が資金難に陥った政府に対して行う投資仲裁の急増が、潜在的に圧倒的な影響力を持つということを認識すべきである。このような混乱の時代には、複数の提訴を処理し、多額の賠償金を支払う能力を政府は持つことができず、その結果、保健予算や債務管理、及びIMFその他の救済機関による効果に重要な影響を及ぼすことになる。
このリスクに対するグローバルで協調的な対応は、連帯を促進し、最悪のシナリオから各国政府を守ることができる。考えられる対応の1つは、政府がCOVID-19に関連する措置に関して、投資家対国家提訴の適用を共同で一時停止することであろう。各国はまた、政府は必要に応じて行動すると見なされるべきであり、従ってCOVID-19に関連する措置は投資協定の義務違反にはあたらないことを明確にするような共同解釈を発表することもできる。選択された案によっては、政府は複数の提訴に対し抗弁することになることに留意する必要がある。しかし、少なくとも多国間での対応であれば、COVID-19に関連する措置を提訴しようとする投資家に管轄上のハードルを課したり、あるいは投資家がそのハードルをクリアするためには政府の防御の評価をしなければならないという指導を仲裁廷に与えることができる。COVID関連の措置として偽装された意図的で不法な政府の行動に関する疑念は、事実上すべての投資協定に含まれる国家対国家の紛争解決メカニズムの中で解決できる。
緊急事態への対応は、投資協定及び関連する改革について広範な専門知識を持つ国連貿易開発会議(UNCTAD)を通じて調整可能である。もう1つのオプションは、国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)、特にISDS改革を行うためにすでに設置されているワーキンググループIIIである。また緊急の対応は、現時点で2020年5月に開催予定の世界保健総会においても促進できる[64]。
多国間での解決策が見いだせるまでは、投資家対国家の紛争制度への同意を撤回する
投資家対国家の仲裁を適用することを一時停止したり、共同解釈を表明することなどの多国間での緊急事態対策には時間がかかる可能性がある。このこと照らして、政府は、協定の締約相手国に対して、将来的に通知があるまでは投資家対国家の仲裁を提起する申し出から撤退すると通知することによって、多国間プロセスの補完を検討する可能性もある。これは、ISDSへの「同意の撤回」とも呼ばれている。
投資協定に基づく投資家対国家の仲裁から、一方の締約国が同意の撤回を行うことは可能だという議論はこれまでもなされてきた。なぜなら、協定における仲裁合意(ISDS条項)は、国家と提訴する側の投資家の間ではなく、国家と国家の間で締結されてきたからである[65]。ISDS条項は、将来に投資家と国家の間に紛争が発生した際に向けて(投資家が誰となるのかを知ることなしに)、仲裁廷の管轄権に同意するという政府からの申し出が含まれると見なされている。投資家がその申し出を受け入れるまでは、政府の同意は「完全なもの」にはならない(したがって取り消すことができない)。訴訟の提起は、その個人投資家の提訴に関する申し出の受諾と見なされる[66]。したがって、将来の紛争について政府は他の締約国に通知することによりいつでも同意を取り下げることができる。もちろん、外国投資家とその弁護人は、そのような行為の合法性に異議を唱え、同意の撤回について、仲裁廷がその提訴に対する管轄権を有するかどうかを決定することを求めるかもしれない。しかし、仲裁廷が締約国の事前の同意なしに管轄権を受け入れた場合、仲裁廷の決定は破棄または取り消されやすくなる。最後に、投資を行った企業を有する国も、同意の撤回に異議を唱える可能性がある[67]。しかしながら、COVID-19のパンデミックに照らした例外的な状況を考えると、投資企業側の国はそのような行動を適切だと見なさない可能性がある。
結論
各政府は、経済に深刻な負荷がかかる中で公衆衛生システムを支援するための困難な決定を下しているのと同様、投資家対国家の仲裁という差し迫った脅威に直面している。各政府は、この危機の中で人々を救済し、経済を主導することに焦点をあてた経済支援パッケージを策定するための財政的な政策スペースを必要としている。私たちが各政府に呼びかける行動は、投資協定に基づいてなされるCOVID-19関連のすべての措置への投資家対国家の仲裁を一時停止するか、あるいはこの非常時には国際法の防御が適用されることを明確にするために、各国政府が一致協力することである。投資協定に基づくリスクを制限したいと考える政府は、多国間での解決策が見つかるまでの間は、投資仲裁への同意から撤退できる。
原文:Protecting Against Investor–State Claims Amidst COVID-19:
A call to action for governments
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[2] Connor, P. (2020).
More than nine-in-ten people worldwide live
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travel restrictions amid
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Centre. https://www.pewresearch.org/fact-tank/2020/04/01/more-than-nine-in-ten-people-worldwide-live-in-countries-with-travel-restrictions-amid-covid-19/
[3] International Air Traffic Association. (2020, March 5). IATA
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[10] Private hospitals will be made public for duration of
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[11] Ashurst. (2020). Law Decree No 18 of 17 March 2020 -
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https://www.ashurst.com/en/news-and-insights/legal-updates/law-decree-no-18-of-17-march-2020---cura-italia-decree/
[12] At the time of writing, the University of St. Gallen’s
Global Trade Alert project has estimated there have been around 82 curbs on
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[13] Singh, R.K. (2020). India bans all exports of virus drug
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[14] Medetsky, A. (2020). Virus puts risk of Russian
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[15] Vu, K. (2020). Vietnam’s ban on rice exports still in
force, government may set limit: traders. Reuters. https://www.reuters.com/article/us-health-coronavirus-vietnam-rice/vietnams-ban-on-rice-exports-still-in-force-government-may-set-limit-traders-idUSKBN21H0GO
[16] Johnson, K. (2020). Cambodia to ban some rice exports
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[17] This has sparked warnings that
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[18] Tan, H. (2020). China invokes ‘force majeure’ to
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third countries, and the protection of Europe’s strategic assets, ahead of the
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suspend dividends after BoE pressure. Financial Times. https://www.ft.com/content/c13d3d21-b6f3-4449-a916-2ba4271818e4
[22] Stubbington, T. & Fletcher, L. (2020). Zambia’s bonds
drop on expected restructuring. Financial Times. https://www.ft.com/content/a3755cf3-34a9-4992-a54b-686a6b5380b2
[23] Maki, S. (2020). A trio of downgrades spell default danger
for emerging markets. Yahoo Finance. https://finance.yahoo.com/news/trio-downgrades-spell-default-danger-214000184.html
[24] Lavopa, F. (2020). Crisis, emergency measures and the
failure of the ISDS system: The case of Argentina (Investment Policy Brief
#2). South Centre.
https://www.southcentre.int/wp-content/uploads/2015/07/IPB2_Crisis-Emergency-Measures-and-the-Failure-of-the-ISDS-System-The-Case-of-Argentina.pdf
[25] United Nations Conference on Trade and Development.
(2015). Recent trends in IIAs and ISDS. https://unctad.org/en/PublicationsLibrary/webdiaepcb2015d1_en.pdf
[26] UNCTAD. (n.d.). Investment policy hub: Argentina. https://investmentpolicy.unctad.org/investment-dispute-settlement/country/8/argentina/
[27] See for example, El Gobierno pagó US$ 677 millones por
juicios perdidos ante el Ciadi, Oct. 19, 2013. La Nacion. https://www.lanacion.com.ar/economia/el-gobierno-pago-us-677-millones-por-juicios-perdidos-ante-el-ciadi-nid1630428
[28] Rabinovitch, S. & Fontanella-Khan, J. (2012). Ping An
in arbitration claim over Fortis. Financial Times. https://www.ft.com/content/87437290-0620-11e2-bd29-00144feabdc0
[29] Papazoglou, S. (2019). Cyprus legitimately exercised its
police powers, defeats ICSID claims by Greek bankers. Investment Treaty News. https://www.iisd.org/itn/2019/04/23/cyprus-legitimately-exercised-its-police-powers-defeats-icsid-claims-by-greek-bankers-stephanie-papazoglou/
[30] Foty, C. (2019). Impact of the Arab Spring on the international
arbitration landscape. Kluwer Arbitration Blog http://arbitrationblog.kluwerarbitration.com/2019/07/26/impact-of-the-arab-spring-on-the-international-arbitration-landscape/
[31] Koroteeva, K. (2018). Egypt found liable for the
shut-down of an electricity plant during the 2011 uprising. Investment
Treaty News.
https://www.iisd.org/itn/2018/12/21/egypt-found-liable-for-the-shut-down-of-an-electricity-plant-during-the-2011-uprising-ksenia-koroteeva/
[32] Unión Fenosa v. Egypt. (2014). Investment Policy Hub.
https://investmentpolicy.unctad.org/investment-dispute-settlement/cases/567/uni-n-fenosa-v-egypt
[33] Scolding, E. (2020). Tensions mount at Lebanon’s banks as
customers push against capital controls. Middle East Eye. https://www.middleeasteye.net/news/confrontations-mount-lebanons-banks-customers-push-against-capital-controls
[34] Farchakh, M. (2020). The ongoing Lebanese financial
crisis: Is there potential for investor–state arbitration? http://arbitrationblog.kluwerarbitration.com/2020/03/08/the-ongoing-lebanese-financial-crisis-is-there-potential-for-investor%E2%80%93state%20-arbitration/
[35] Philip Morris Asia Limited v. The Commonwealth of
Australia, UNCITRAL, PCA Case No. 2012-12; Philip Morris Brands Sàrl, Philip
Morris Products S.A. and Abal Hermanos S.A. v. Oriental Republic of Uruguay,
ICSID Case No. ARB/10/7.
[36] Chemtura Corporation v. Government of Canada, UNCITRAL
(formerly Crompton Corporation v. Government of Canada), Methanex Corporation
v. United States of America, UNCITRAL.
[37] Williams, Z. (2016). Investigation: As Colombia pushes
for cancer drug price-cut and considers compulsory licensing, Novartis responds
with quiet filing of an investment treaty notice. Investment Arbitration
Reporter.
https://www.iareporter.com/articles/investigation-as-colombia-pushes-for-cancer-drug-price-cut-and-considers-compulsory-licensing-novartis-responds-with-quiet-filing-of-an-investment-treaty-notice/
[38] Musmann, T. (2017). Eli Lilly v. Canada – The first
final award ever on patents and international investment law. Kluwer Patent
Blog.
http://patentblog.kluweriplaw.com/2017/04/04/eli-lilly-v-canada-the-first-final-award-ever-on-patents-and-international-invest-ment-law/
[39] ILC Articles p. 80 https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/commentaries/9_6_2001.pdf
[40] See Article 25 of the International Law Commission’s Articles
on State Responsibility. https://legal.un.org/ilc/texts/instruments/english/commentaries/9_6_2001.pdf
[41] Paddeu, F., & Parlett, K. (2020). COVID-19 and
investment treaty claims. Kluwer Arbitration Blog. http://arbitrationblog.kluwerarbitration.com/2020/03/30/covid-19-and-investment-treaty-claims/
[42] Charlotin, D. (2018). Union Fenosa v. Egypt: In
now-surfaced award, tribunal dismisses necessity defence and sees no abuse in
investor pursuit of multiple arbitrations. Investment Arbitration Reporter. https://www.iareporter.com/articles/union-fenosa-v-egypt-in-now-surfaced-award-tribunal-dismisses-necessity-defence-and-sees-no-abuse-in-investor-pursuit-of-multiple-arbitrations/
[43] Whitsitt, E. (2009). Tribunal rebuffs defense of
necessity in recently published award: National Grid p.l.c. v. Argentine
Republic. Investment Treaty News. https://www.iisd.org/itn/2009/03/02/tribunal-rebuffs-defense-of-necessity-in-recently-published-award-national-grid-p-l-c-v-argentine-republic/
[44] LG&E Energy Corp., LG&E Capital Corp. and
LG&E International Inc. v. Argentine Republic (ICSID Case No. ARB/02/1).
[45] Waibel, M. (2007). Two worlds of necessity in ICSID
arbitration: CMS and LG&E. Leiden Journal of International Law, 20(3). https://www.researchgate.net/publication/228213318_Two_Worlds_of_Necessity_in_ICSID_Arbitration_CMS_and_LGE
[46] For a discussion of potential defences available to
states in the context of COVID-19 measures, see Pathirana, D. (2020). COVID-19,
preventative measures and the investment treaty regime. Afronomics Law. https://www.afronomicslaw.org/2020/04/13/covid-19-preventative-measures-and-the-investment-treaty-regime/
[47] Reynoso, I. (2019). Spain’s Renewable Energy Saga:
Lessons for international investment law and sustainable development. Investment
Treaty News. https://www.iisd.org/itn/2019/06/27/spains-renewable-energy-saga-lessons-for-international-investment-law-and-sustainable-development-isabella-reynoso/
[48] Some consider that the asymmetric structure of the
investment treaty regime, lack of system of precedent in ISDS and the resulting
inconsistency and unpredictability of arbitral outcomes lend themselves to
third-party funding in speculative or marginal claims. See for example Garcia,
F. (2018, July 30). The case against third party funding in investment
arbitration. IISD Investment Treaty News; International Council for
Commercial Arbitration & Queen Mary Task Force. (2017, October 17). Third-party
funding in investor-state dispute settlement. Draft report for public
discussion. Round Table Discussion of the ICCA-Queen Mary Task Force on Third
Party Funding in International Arbitration
[49] Benedetteli, M. (2020). Could COVID-19 emergency measures
give rise to investment claims? First reflections from Italy. Global
Arbitration Review. https://globalarbitrationreview.com/article/1222354/could-covid-19-emergency-measures-give-rise-to-investment-claims-first-reflections-from-italy;
Aceris
Law LLC (2020), The COVID-19 pandemic and investment arbitration. Aceris Law. https://www.acerislaw.com/the-covid-19-pandemic-and-investment-arbitration/
[50] Hulley Enterprises Ltd. v. Russian Federation (PCA Case
No. 2005-03/AA226).
[51] Charlotin, D. (2018). Arbitrators hold Egypt liable for
more than $2 billion as a result of unfair treatment of gas plant investors. Investment
Arbitration Reporter.
https://www.iareporter.com/articles/arbitrators-hold-egypt-liable-for-more-than-2-billion-as-a-result-of-unfair-treatment-of-gas-plant-investors/
[52] Per the exchange rate of Egyptian Pounds to USD at October
2019.
[53] Bonnitcha, J., & Brewin, S. (2019). Compensation
under investment treaties. International Institute for Sustainable
Development.
https://www.iisd.org/sites/default/files/publications/compensation-treaties-best-practicies-en.pdf
[54] Gaukrodger, D. & K. Gordon (2012). Investor-state
dispute settlement: A scoping paper for the investment policy community (OECD
Working Papers on International Investment, 2012/03). OECD Publishing. http://www.oecd.org/investment/investment-policy/WP-2012_3.pdf
[55] Olivet, C., & Eberhardt, P. (2012). Profiting from
injustice: How law firms, arbitrators and financiers are fuelling an investment
arbitration boom. Transnational Institute.
[56] Per the exchange rate of Australian dollars to USD at
July 2018. Hutchens, G. & Knaus, C. (2018, July 1). Revealed: $39m cost of
defending Australia’s tobacco plain packaging laws. The Guardian Australia. https://www.theguardian.com/business/2018/jul/02/revealed-39m-cost-of-defending-australias-tobacco-plain-packaging-laws
[57] Tethyan Copper Company Pty Limited v. Islamic Republic of
Pakistan, ICSID Case No. ARB/12/1
[58] Masood, S. (2019, May 12,). Pakistan to accept $6 billion
bailout from I.M.F. New York Times. https://www.nytimes.com/2019/05/12/world/asia/pakistan-imf-bailout.html
[59] As seen in the cases of Abaclat and Others v. Argentine
Republic, ICSID Case No. ARB/07/5 and Ambiente Ufficio S.p.A. and others v.
Argentine Republic, ICSID Case No. ARB/08/9.
[60] Stiglitz, J. (2020, April 7). World must combat looming
debt meltdown in developing countries. The Guardian. https://www.theguardian.com/business/2020/apr/07/world-must-combat-looming-debt-meltdown-in-developing-countries-covid-19
[61] General Assembly of the United Nations. (2020, April 2). Global
solidarity to fight the coronavirus disease 2019. https://www.un.org/pga/74/2020/04/02/global-solidarity-to-fight-the-coronavirus-disease-2019/
[62] United Nations General Assembly. (2020, March 27). Strengthening
of the United Nations system. https://www.un.org/pga/74/wp-content/uploads/sites/99/2020/03/A-74-L.52.pdf
[63] The resolution was approved without the presence of the
governments through a so-called “silence procedure” according to which a
resolution is adopted unless a single country objects.
[64] World Health Organization. (2019). Seventy-Second
World Health Assembly. https://www.who.int/about/governance/world-health-assembly/seventy-second-world-health-assembly
[65] Porterfield, M. (2014). Aron Broches and the withdrawal
of unilateral offers of consent to investor–state arbitration. Investment
Treaty News.
https://www.iisd.org/itn/2014/08/11/aron-broches-and-the-withdrawal-of-unilateral-offers-of-consent-to-investor-state-arbitration/;
Howse,
R. (2017). A short cut to pulling out of investor–state arbitration under
treaties: Just say no. International Economic Law and Policy Blog. https://worldtradelaw.typepad.com/ielpblog/2017/03/a-short-cut-to-pulling-out-of-investor%E2%80%93state%20-arbitration-under-treatiesjust-say-no.html
[66] United Nations Conference on Trade and Development.
(2003). Dispute settlement. International Centre for Settlement of
Investment Disputes.
https://unctad.org/en/docs/edmmisc232add2_en.pdf
[67] Johnson, L., Coleman, J. & Güven, B. (2018). Withdrawal
of consent to investor–state arbitration and termination of investment treaties. https://www.iisd.org/itn/2018/04/24/withdrawal-of-consent-to-investor%E2%80%93state%20-arbitration-and-termination-of-investment-treaties-lise-johnson-jesse-coleman-brooke-guven/