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Author:青木勇気
小説を出していたり絵本も書きたかったりします。物書きと呼ぶにはおこがましいくらいのものですが、物語を書いて生きていけたら幸せだなと思っています。

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クラウドファンディングが切り拓く“1兆円市場”とは?

2014.05.06 23:37|雑記
「◯◯カードはお持ちでしょうか?」

最近では、コンビニエンスストアや飲食店での会計の際に必ずと言っていいほど、ポイントカードの有無について聞かれる。これはひとえにポイントカードがコモディティ化したことの表れであるが、いかにもマニュアルに書かれた通りに声をかけている感は否めず、言われた側も煩わしく思うことが多いのではないだろうか。

今や、ポイントカードなどで付与されたポイントを現金換算すると1兆円を超えると言われるが、そのうちの4割ほどが失効ポイントになっているのもうなずける。つまり、ポイントカードの利用シーンは拡大しているが、肝心のポイントの使い方は整備されておらず、一部の大手ポイントサービス事業者が加盟店からの手数料やユーザーの失効ポイントで儲かるだけで、市場自体が活性化しているとは言えないのが現状だ。

そんな中、先日お店にチェックインするだけでポイントが貯まる「楽天チェック」アプリがリリースされた。すでに先駆者の「foursquare」がクーポンを発行するなどチャレンジしたパートではあるが、カードではなくアプリで一元管理すること、そしてゲーミフィケーションを盛り込んでポイントを集める楽しみを演出することで、o2oによるポイント利用を促す算段だ。

他にも、さまざまなアプローチでポイントサービス市場を活性化させようとする動きがある。失効ポイントが地域の社会貢献活動へ寄付されるシステムを構築し、ビジネスを展開している株式会社サイモンズの代表・斎川氏は、「これからの時代は、失効ポイントを社会に提供することにより、お互いを支え合うような社会還元型システムの構築が求められます」と言っており、有効期限切れのポイントを社会・地域貢献団体やNPO法人に寄付する活動を推進し、注目を集めている。今のところ、寄付金の規模としては年間数千万程度のポテンシャルではあるが、失効し無駄になってしまうポイントを掬い取り、必要とする者へとつなぐスキームは、非常に価値があると言えるだろう。

一方、クラウドファンディングサービス「WESYM」を運営する株式会社WESYMは、クラウドファンディングのプロジェクトをお金だけでなく、ポイントでも支援できる独自の決済システムを構築している。具体的には、“シード=SEED”という仮想通貨を購入する形でプロジェクトを支援し、決済の際にクレジットカードはもとよりTポイント、楽天スーパーポイント、永久不滅ポイントなどさまざまなポイントを使えるというものだ。「現金で支払う」というハードルを、「貯まったポイントを有効活用する」ところまで下げることで気軽にサービスを利用してもらい、ひいてはポイントを貯めて使うことをより浸透させようとしているのである。

■ ポイントサービスとクラウドファンディングが抱える共通の課題

一見すると、ポイントサービス市場とクラウドファンディング市場は交わることのないものに映る。だが、インフラやプラットフォームが整備されているにもかかわらず利用が促進されないという点では、伸び悩んでいる理由は同じだと言えるのではないだろうか。

2013年度の世界におけるクラウドファンディングの市場は5000億円程度と予測されているが、日本においては漸く100億円に届くかどうかというところで、この数年で一気に事業者が増えたとはいえ、未だ発展途上のビジネスだ。その理由として、欧米のように税金対策としての寄付文化や制度が浸透していないから、国内の主要なクラウドファンディング事業者のほとんどが支援額が大きい「投資型」ではなく、eコマースのような「物品購入型」を採用しているから、といったことが挙げられるが、もちろんそれだけではない。

金融庁の金融審議会において、「投資型」クラウドファンディングの制度導入は前向きに進められており、規制緩和により法人の参画が増えてくれば市場規模は大きく膨らむと期待されてはいるが、ポイントカードがコモディティ化してもポイントが使われないように、一般ユーザーに通販サイトと同じような形で日常利用されない限り、大幅な成長は見込めないだろう。つまり、ポイントサービス市場とクラウドファンディング市場が相乗効果で成長していく絵を描く必要があるのだ。

ポイントサービスの成長はeコマースの成長に連動するものだが、利用シーンを増やさなければ本当の意味では活性化しない。だからこそ、クラウドファンディングに「決済システムとしての進化」と「サービスとしての深化」が求められる。どういうことか? 先に挙げたWESYMを例に、ひとつの答えを示そう。

■ パートナー戦略でクラウドファンディングサービスを拡大

WESYMは、小規模なベンチャー企業ながら多数の企業と提携し、クラウドファンディングの決済システムのAPIを提供することで、さまざまな分野に特化したクラウドファンディングサービスと多種多様なプロジェクトを生み出す、というパートナー戦略を採用している。クラウドファンディングサービスを単独で拡大するのではなく、ポイントでの支援ができる独自の決済システムを武器にパートナーを増やす。これが、「決済システムとしての進化」である。

どんな企業が参加しているかというと、FMラジオ局を運営する株式会社J-WAVEによる、放送連動型音楽専門クラウドファンディングサービス「J-CROWD MUSIC」、日本最大級のQ&AコミュニティOKWaveを運営する株式会社オウケイウェイヴによる、みんなの夢をみんなでかなえる夢実現プラットフォーム「OKDreams」、ガールズポップカルチャーの発信に特化したTokyoGirls'Updateを運営する株式会社オールブルーによる、全世界対応型のプロジェクトサポートプラットフォーム「Tokyo Girls' Update CROWD」など、業種業態も多岐に渡る。

それぞれのサイトを見ていただければ分かるが、培ってきた自社のビジネスやサービスの強みを活かしつつ、クラウドファンディングを盛り込むことで新しいスキームをつくろうとしていて、非常に興味深い。特に、「OKDreams」は先進性がありユニークだ。クラウドファンディングは、基本的に夢や目標を持つ個人が実現するために必要な資金を募るものであるが、OKDreamsは夢やアイデアそのものをユーザーから募り、ミッショナーやスポンサーとして企業を呼び込み、テーマを設定して具体的なプロジェクトにしていくというのだ。個人と企業の力で社会を変える、つまりは「共創社会」の実現を目指すサービス、これはまさに「サービスとしての深化」である。

ちなみに、第一弾のテーマは「宇宙を身近に!」ということで、宇宙にみんなの夢を打ち上げるプロジェクトで参加者を募集している。まだあまり知られていないサービスであり、参加にあたってそれ相応のITリテラシーが求められるところに課題はあるが、「コミュニティ×クラウドファンディング」が生み出す新しい価値に注目したい。

■ おわりに

本稿のタイトルにある「クラウドファンディングが切り拓く“1兆円市場”」の可能性を感じていただけただろうか? 私は、2014年下半期から2015年の上半期にかけて、スマートフォン・タブレットでのECサイト利用、o2osでのポイント発行シーン増加→ポイント利用活性化→クラウドファンディングの浸透という流れができ、1兆円市場が本物の戦場になると予測している。

もちろん、この市場を切り拓くファクターはクラウドファンディングだけではないと思われるが、逆に言うと、この流れの中でも浸透しないようだと、クラウドファンディングの未来は明るくないと言えるだろう。

「Yahoo!ニュース 個人」の記事を転載しています