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雨の中の涙のように

著者:遠田潤子

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BOOK☆WALKER

アイドルデビューから俳優に転身し、多くの人々を魅了する堀尾葉介。そんな彼に関わった人々を描く連作短編集。全8編を収録。
という風に概要を示してみたのだけど、巻末の解説によると、元々は連作短編集と意図して描かれたわけではないらしい。でも、それぞれの人物像を描く物語なので、それはそれで納得できるものになっていると感じる。
1編目『垣見五郎兵衛の握手会』。愛媛県で印章店という名の実質文具店を営む伍郎。ふと目にした雑誌に写っていたのは、かつて自分が愛した女性とそっくりのアイドルだった。そして、かつて、芸能界を目指した時代を思い出す。
幼いころから時代劇に憧れ、そんな役者を志した伍郎。しかし、現実は厳しく、仕事があっても端役ばかり。同じような境遇であったしのぶと出会い、結婚も考えた。そんなとき、自分と共演……というか、自分の出演する番組に主役として出演することになったのが葉介だった。アイドルとしての知名度などもあり、主役に抜擢された葉介。しかし、おごることなく、殺陣などについて自分に教えを乞う。そして、自分が苦労して手に入れた技術もすぐに習得してしまう。圧倒的な才能の差。そこで自分はその道を諦めた。しかし、しのぶは反対に……。葉介の存在によって分かれた道。しのぶを待っていた運命。葉介が何かをしたわけではない。けれども、その存在感というのを感じさせるエピソードだった。
2編目『だし巻きとマックイーンのアランセーター』。群馬県で卵製品の店を営む章。店の経営はとりあえず順調。そんな彼に見合いの話が入ってくる。だが、その女性が葉介のアイドル時代の曲を歌ったことで、彼はいたたまれなくなり……
章の店が人気になったのは、幼いころの葉介がここでだし巻き卵をよく買っていた、というエピソードがあること。ファンが多く訪れ、仕事は順調。だが、その多忙さにより父は過労に倒れた。さらに、葉介目当ての女性によって章は傷つき……。テレビで紹介される、みたいなことの功罪っていうのはよく言われるけど、これはトラウマにもなるよな。でも、他者にはうかがい知れない。そんな章の葛藤と、そんな彼を一括する見合いを勧めてきた女性の清々しさが凄く良いイメージを残してくれた。
そんな感じで、葉介とちょっとしたかかわりを持った人々を描いた上での最終章。その葉介について描かれる。そこまでも、子供時代にイジメを受けていた、とかつらい過去がある中、父を振り回していた母との出来事が……。どちらかというと明るい結末で終わることが多い作品集で、その源泉となっていた葉介のそんな過去があるからこそ、と思わされるエピソードだった。

No.7233

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Tag:小説感想遠田潤子

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