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設楽不動産営業日誌 お客様のご要望は

著者:水生大海

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小学生の時に誘拐された、という経験を持つ設楽真輝。現在、祖母が経営する街の不動産屋で働く彼の元には、物件に纏わる不可思議な謎が次々と舞い込む。そんな事件を解決しているうちに……
なんか不思議なバランスの作品だな、というのが読みながら思ったこと。
物語は基本的に、真輝が勤める不動産会社に対して要望やらクレームやらがやってくる。それを解決する、という日常の謎ミステリという展開。けれども、主人公の背景にはかつて、彼が経験した不可解な誘拐事件が関わっている、という深刻な事情が見え隠れてしている、というちょっと変わった構成のため。
1編目『その残置物はわたしのじゃありません』。ペット可のアパートを退去した夫婦。その部屋のクリーニングの最中、指輪が発見された。退去した夫婦は、その部屋で指輪を紛失した、ということから返却するのだが、その指輪に刻まれたイニシャルは夫婦のものではなくて……。ひょんなことから始まった夫婦喧嘩。浮気をしていた、としても果たして自宅に女性を呼ぶのか? 疑問がある状況の中、このアパートならではの真相が待っていて……となるんだけど、そこまでペットが自由に行動できるだろうか? という感じがしてしまった。
3編目『事故物件なんて冗談じゃない』。心霊現象が起きている、という借主。そのアパートは出来て以来、そこで亡くなった人などはおらず、心霊現象など起こるはずがない。金縛りが起きる、という訴えも、ちゃんと科学的な根拠をもって示すも相手は聞き入れない。そんな中、その部屋で火事まで起きてしまって……。この話は、ただただ心霊現象を訴える人が不快っていう印象しか残らなかった。だって、何を言っても「心霊現象」「事故物件だからだ」しか言わないんだもん。火事についても……うーん……
そして、過去の因縁とも関わる4編目『相続税そんなの払えねえんだよ』。相続税を払うため、相続したマンションを売却したい、という相談が持ち込まれる。しかし、その人物は、相続した人物の代理人。相続した当人は、どうやら売却したくないらしい。さらに、その当人は、真輝のかつてのクラスメイトで、大手ドラッグストアの非嫡出子で……
これも、相続に関する民法の規定とか、そういうのはちゃんとやっている。そして、真輝の事件の解明にも……。ただ、真輝がやったこともまた犯罪行為だしなぁ……。
なんか、基本的には不動産会社を題材にした日常の謎ミステリではある。あるんだけど、結構、深刻な問題が起きていて、でも、謎自体は比較的わかりやすい。実際に困っている人とか、そういう部分を考えればリアルなんだろうけど、ミステリ好きとしては、謎と深刻さのバランスがあまり良くなかったな、と感じてしまう作品だった。てか、真輝の過去ってなくてもよかったのでは? とすら思ってしまった。

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Tag:小説感想水生大海

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