fc2ブログ

怪傑レディ・フラヌール

著者:西尾維新

Amazon
BOOK☆WALKER

父の遺した盗品を、2代目怪盗フラヌールとして返却してきた道足。大量にあった盗品も気づけばあと1つ。そんなとき、道足の元へ驚くべき一報が入る。なんと、怪盗フラヌールが収監された、というのだ。収監されているのは偽物だ! 道足は、名探偵・涙沢虎春花と共に偽フラヌールの収監されている監獄へと向かうが……
シリーズ第3作で、シリーズ完結編。
こうしてみると、この道足ら、あるき野家の物語だったんだな、というのを感じる話だった。
物語は、偽フラヌールが現れ、しかも、収監されていた、というところから。その偽フラヌールは一体、何者なのか? そもそも、最期に遺された盗品は、どこにあるのかもわからないランダムウォーク監獄というもの。それを返却した、ということになっているのだが、じゃあ一体どこに? という問題が生じる。その謎解きから始まっていく。どこにあるのかはわからない。けれども、かつて父が収監されたとき、対応したのは父の友人で道足も家族のように付き合っていた日本の刑事・東尋坊。ということは、日本の主権が及ぶ範囲であろう、という予測はつく。そんな中で導き出したのは? 結構、強引な推理ではあるけど、過程に「なるほどね」という思いだった。そして、その監獄で出会った偽フラヌールは……妹!?
完結編でテーマとなるのは「償い」とは? というもの。
父が盗んだものを返却する、という行動をとってきた道足。それは父の行いに対する償い……のつもりだった。しかし、それは本当に償いなのか? ただただ、自分の罪悪感を消し去るための、自分勝手な行動ではなかったのか? それはただのエゴではないのか? 一方で、偽フラヌールであった妹が語った父の死の真相。そこから得られる妹の行動の意味。そして、父の遺志を引き継ぐ、と怪人となった弟。償いのため、犯罪者をギロチン送りにするという虎春花の言葉……。償い、って一体何なのか? 別に真面目な話、というわけでもないのだけど、読んでいるとどうしても、そんなことを考えてしまった。考えてみれば、実際の刑事司法とかでも、「償い」って何だろう? と思うところはあるしなぁ……
終盤にちょっとしたひっくり返し。さらに、物語全体を通しての、この兄弟の物語であったことは間違いないのだけど、それぞれ、色々と考えてたくなるテーマを含んだシリーズだったな、という風に思えてならない。

No.7222

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

Tag:小説感想西尾維新

こちら、終末停滞委員会。

著者:逢縁奇演

Amazon
BOOK☆WALKER

人の心を読むことができる、という異能を持ち、マフィアの下働きをさせられていた言万心葉。船の沈没により死んだ、と思ったところで女神に救われた……と思いきや……。その中で知り合ったLunaさんと共に、世の中を終わらせる「終末」を停滞させるための学園生活を送ることになって……
『このライトノベルがすごい!』で上位に入っていたので気になって入手した本作。
正直なところ、いつも冒頭に書いている粗筋ではどういう話なのかさっぱりわからないと思う。だって、書いている自分ですら「よくわからん文章を書いているな」と思っていたくらいだもの。
巻末の岬鷺宮氏の解説でも書かれているのだけど、とにかく物語として目まぐるしく変わっていく話の流れが印象的。冒頭に書いたように、マフィアの下働きだった心葉は死亡する。女神らしき姿の女性の前に出た、と思ったら、ようやく「停滞委員会」という学園生活(?)へと舞台が移り変わっていく。しかも、そこでもトラブルを解決するために、様々な場所で異能バトルを繰り広げ……と次々と新しい展開が待っている。けれども、じゃあ、詰め込み過ぎとかそういうのは全く感じないのがまず上手い。
そして、何よりも楽しいのはその戦いが実にポップな感じなところ。様々なキャラクターがいて、それぞれが「終末」という異能の力を使ってバトルを繰り広げるのだけど、使うたびに、その異能の能力説明なんかが入る。それがあることで、それぞれが生き生きと描かれており繰り返しになるけど楽しい。一応、メインヒロインのLunaさんだけでなく、メフ、ニャオ、ひかる……と言った面々が可愛いんだ、これ。350頁ほどの分量なのだけど、読み終わると、よくこの分量で、これだけたくさんのキャラクター、さらに目まぐるしい展開を描き切ったな、という感じすらする。
なんか、楽しかった。可愛かった。そんな言葉しか並んでいない気がするけど、だって、何よりもそういう感想な作品だ、ということで。

No.7221

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

Tag:小説感想電撃文庫逢縁奇縁

逆転ミワ子

著者:藤崎翔

Amazon

ピン芸人No.1決定戦準優勝。女性芸人No.1決定戦優勝。元看護士という経歴を持つ人気急上昇中の女性芸人・ミワ子が、テレビ雑誌に掲載したエッセイ&ショートショート集。しかし、その連載が終了し、本として出版されるというその矢先、彼女は失踪してしまった。人気俳優と結婚し、順風満帆だったはずの彼女に何が起きたのか?
という形で描かれた作品。一応、「逆転」シリーズの第3作ということになるらしいのだが、第2作目を読んでいなかった。
正直な感想を言うと……『逆転美人』もそうなのだけど、これを書く著者の労力というのは凄いと思う。色々なところを計算しなければならないし、例えば、ちょっとした誤字脱字とか、そういうのがあったとして、それを修正したら、全てを書き直ししなければならないのだから。そういう意味では、間違いなく労作であるのは確か。
ただし……
はっきり言って、小説として面白かったのか? と問われると答えは「?」となる。
というのも、本作の3分の2くらいは、芸人であるミワ子が書いたエッセイ、そして、ショートショートというのが延々と綴られるのみ。芸能人が書いたもの、ということもあり、特に何かがあるわけでもないようなものがずーっと綴られていくだけ。少なくとも物語性がないので、「ほーん……」という感じで読んでいて、という状態。
そもそも、「失踪した」という情報は冒頭で記されるのだけど、それ以上の情報は終盤に、担当編集者による解説という形で綴られるのみ。だから、そこから何かを読み解く、という感じにもならず……
あまりぐちぐちとかくのは嫌なので、これ以上は書かないけれども仕掛けにこだわり、言い換えると、それだけ、という感じがしてしまった。

No.7220

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

Tag:小説感想藤崎翔

名探偵の有害性

著者:桜庭一樹

Amazon
BOOK☆WALKER

かつて、「名探偵の時代」があった。事件が起きれば、どこからともなく名探偵が現れ、警察やマスコミの影響を受けることなく論理的に謎を解く。そんな名探偵が時代の寵児となったが、しかし、平成中期以降、その存在は忘れられていった。それから20年余り、令和の世となったある日、人気配信者が突然、名探偵の糾弾を始めた。その槍玉に上がったのは、名探偵四天王の一人であった五狐焚風。風の助手であった鳴宮夕暮は、風と共にかつての推理を検証する旅に出る……
著者の作品を読むのは6年ぶり、というか、ほぼ7年ぶりか。そして、その前に読んだときの感想でも、「久々」と書いていた自分……
冒頭で書いたように、主人公である夕暮は元名探偵助手。しかし、名探偵黄金時代が終わり、現在は亀戸で夫と共に喫茶店を営む日々。そして、名探偵であった風とも20年以上連絡を取っていない。そんな中で沸き起こった名探偵の糾弾。「五狐焚風を許さない」という配信者の言葉は一体、何なのか? そんな謎と共に旅に出る。
……のだけど、いかにも過去の行動に何があったのか? 間違っていたのだろうか? というミステリのように見えるのだけど、むしろ、若き頃の思い出と、現在の世知辛い自分の生活との対比と言った部分が印象に残る。
初めての事件で助けたはずの相手。しかし、その相手は、その事件をきっかけに人生が大きく変わっていた。風が名探偵として有名になるにつれ、生まれていった「キャラクター付け」。さらに、四天王と言われる存在になったことから生まれる嫉妬。しかし、共に活動をする中で絶対に輝いていた。一方での現在。結婚をしているが、しかし、夫は浮気をしている。浮気相手からの執拗な連絡。突如、家から消えた自分に連絡をしてくる夫。また、カップルとして売られていた風も、バツイチとなっている。色々と世知辛いアレコレが自分の前に立ちふさがる。そんな中で夕暮は、自分の人生について振り返っていくことになる。それはある意味で、自立の物語なのかな、という風に思う。
ただ、その一方で、物語の発端となった配信者の言葉とか、そういうものはちょっとグダグダになった感もある、かな?

No.7219

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

Tag:小説感想桜庭一樹

著者:小林湖底

Amazon
BOOK☆WALKER

世界最難関、男性のみが受験可能な試験――科挙。雷雪蘭は、少女でありながらも男装をして合格を目指す受験生。そんなやつは他にいないだろう……そう思っていた雪蘭だったが、試験会場ではどう見ても女の子な受験生・耿梨玉と出会う。男だが、亡き姉の正装で受験をしている、という梨玉と打ち解けた雪蘭は、腐敗した官僚世界を正すため、共に試験に挑むことになるのだが……
「科挙」か……。自分、大学受験は世界史で受けたし、中国史は得意だったけれども、その具体的な内容って全く知らないんだよな……なんてことを読みながら考えていたり。
ということで、ずばり「科挙」を題材とした物語。冒頭に書いたように、女性でありながら科挙に挑む雪蘭。そして、男だけど、女装して試験に挑む梨玉。試験に合格するためには後ろ暗いことも、という覚悟を持つ雪蘭。しかし、知り合った梨玉は、自分とは正反対な素直でまっすぐな存在。そんな試験の第一弾だったが、試験で主席だったものが次々と殺害されてしまい……
普通に考えれば、試験中に殺人などがあれば、試験を中止なり延期などする、となりそうだけど、中世の王朝。試験を実施する地方の役人にそんな権限はない。いや、それだけでなく、「恙なく実施する」ことが出来なければ自らの汚点となり失脚、処罰の対象にも。勿論、そんな中で役人もまた、不正などを働いている。そんな中で、自分を守るため、不正を正しながら試験を受けることに。
第1巻に関しては、どちらかというと世界観の説明のような感じがする。過酷な試験である、というそれは、何段階も試験が存在している。しかも、その種類も多種多様。さらに、合格者には強い権力を得るため、その合格者の一族には傲慢なものもいるし、何度も不合格を味わい、人生を狂わせた者も……。この辺りの雰囲気は、受験生のころに勉強したものが、実際にはこうだったんだ、というような感想にもつながったし、また、それが過酷さをより強調しているように思う。
さらに、キャラクターとしても、雪蘭の変化。覚悟をもち、人を信頼しない、というような覚悟を持った彼女が、まっすぐな梨玉に充てられて、人を信用しよう、という思いも抱いていく。勿論、まだ完全に、ではないが……というような部分も面白かった。そして、この巻の最後に明らかにされる彼女の出自という真相。まだ試験に合格しているわけではない現状。仲間となるキャラクターたちも固まってきた状態で、ここからどう物語を転がしていくのか楽しみにしたい。

No.7218

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

Tag:小説感想MF文庫J小林湖底

著者:皆藤黒助

Amazon
BOOK☆WALKER

自ら設計し、しかし事故物件となってしまった「白い家」を救うために、事故物件を再生する活動をする建築士の天木。そんな天木の事務所で住み込みのバイトをする大学生の織家紗奈は、自らに備わった霊感を用いて天木の活動を手伝っている。夏休み、織家は同級生の七瀬から、自分がバイトをしている喫茶店で心霊現象が起きていることを知らされ……(『恋する事故物件』)
など、全4編(というか、2編は前後編なので、実質3編)を収録したシリーズ第2作。……というか、これで完結かな?
粗筋でも書いた『恋する事故物件』。ビルのオーナーが営む喫茶店でバイトをする女子大生の七瀬。そのビルでは5年前、オーナーの息子が飛び降り自殺をしてしまった。店が閉店する午後9時になると店は闇に包まれ、何かが転落する音が……。それを解決する、つまり、霊を祓うのかと思いきや、七瀬はその霊に恋してしまった、と言い……
前巻のエピソードで、「人間側の事情も描いてほしい」というのを書いたのだけど、このエピソードなんかはそれを体現したような印象。オーナーの息子は、なぜ自殺してしまったのか? そして、織家が視た幽霊の姿。確かに、元はイケメンだったかもしれない。でも、現れるのは飛び降り自殺をしたときの遺体の姿。それに恋をするものか? 何かチグハグな中で、オーナーが考えていたことは……。ある意味では善意。でも、善意こそが最大の悪意へと転じる。反省しているようでしていないオーナーの人間性の後味の悪さが印象に残る。
そんなエピソードを交えつつ、ついに、最大の懸念材料である白い家の問題解決を図る『白い家』。
何かがあったはずではない「白い家」。そこに居ついてしまった霊と関連性がある事故。そして、その事故現場から連なる道。だが、そうなったとしても、これは異常な状況。それを引き起こしたのは……
2編分の分量で描かれる「白い家」解放の作戦。当たり前のように怪異が蠢き、その中で悪戦苦闘をする織家。そして、そんな彼女を救うべく、「白い家」がどうしてこうなってしまったのかを探る天木たち。そこにあったのは、不幸な偶然と、無知な人間のふとした遊びの悪影響。霊がどういう存在なのか? その辺りの法則とか、そういうものからのガッツリとしたオカルトモノの流れ。オカルトの謎を解く、というよりは、ホラーハウスに入ってしまった恐怖的な部分が勝っていたような気がするけど、これはこれで怖いものがあった。
一応、目的を果たした、ということでこれで完結なのかな? 主要目的がなくなってしまった気がするのだけど、でも、この設定なら色々と話を作れそうなだけに、続編が出るならそれに期待したい。

No.7217

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

Tag:小説感想皆藤黒助

大樹館の幻想

著者:乙一

Amazon
BOOK☆WALKER

「おかあさん……ああ、おかあさん……」 山の中腹、その名の通り、大樹を囲うように建てられた大樹館。世界的作家が暮らすその家で、その妻の13回忌が行われるその日、館の使用人・穂村時鳥の頭に奇妙な声が届く。声の主は彼女の腹に宿った胎児の声。そして、その夜、作家の息子が奇怪な死を遂げ……
乙一初の館モノミステリ」 作品の紹介には、そう書かれており、確かにそれは間違いない。けれども、それだけじゃない、というのが著者らしいな、というのがまず思ったこと。
物語としては、舞台となる大樹館で13回忌の法要が行われ、主である作家の息子、その家族が帰省する中、事件が発生する。長男が不可解な死を遂げ、車はパンクさせられ、さらに電話線も切られ、外部との連絡が遮断された中、さらに主が何者かに殺害されてしまう。一体、誰が何のために事件を起こしたのか、という謎解きが始まる。……というのが基本線。ただし、そこに様々な要素が加えられている。
それが、冒頭に書いたように時鳥の腹に宿った胎児の声。
その声は、やがて生まれ、未来を知っている存在の声。成長した胎児の時代、この事件は大きな謎として残り、様々な推理が試みられた。しかし、それでも謎を解くことは出来ず、時代を超えた謎になっている。そんな中、最初の大きな容疑者となったのが胎児の母である時鳥。だが、ここで容疑を免れたことにより、事件は胎児の知る未来とは全く違うものになっていき……
大樹館で起こった事件の調査。館モノのお約束としての、ギミックであるとか、そういうものを散りばめつつも、目の前の事件と、未来を知る存在からの助言。双方の差異。しかし、その差異によって明らかになっていく新たな真実。普通の、事件現場を調べて、そこから手がかりを得て、というのとは違った設定を上手く利用したミステリとして楽しむことができた。けれども、そういう要素を取り入れながらも、しっかりと論理的な本格ミステリに仕上げているのが流石、という感じ。

No.7216

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

Tag:小説感想乙一

著者:下等妙人

Amazon
BOOK☆WALKER

「……生き残っているのは、私たち<戦乙女>だけなのです」 特殊な魔力を理由に蔑まされてきた少年・オズワルドが目を醒ますと、そこは邪神によって滅びかけた数百年後の世界だった。邪神への抵抗を続ける「戦乙女」たちから、何故か大賢者と慕われるオズワルド。だが、エッチすぎる姿をした戦乙女たちに列状を催した時に記憶が回復。そして、戦乙女もまたステータスが上昇して……
物語の舞台は冒頭に書いたような世界なのだけど、戦乙女たちには、RPGとかみたいにステータスが設定されており、それでどのくらい強くなるのか、というのが客観的に評価される世界。修業とか、そういうことでも当然、ステータスを挙げることはできるけど、エロ行為でよりUPすることができる。邪神による侵攻が迫る中、オズワルドは戦乙女たちにエロ行為をして……というエロ&バトル作品。
まぁ、ある意味、清々しい設定だなぁ、という感じ。しかも、作中で描かれるように、エロ行為でパワーアップすることができるのだけど、同じ行為を繰り返すだけで慣れてしまうとパワーアップの効果は薄くなる。効果に影響をするのは、「どれだけ興奮したのか」という点。だからこそ、行為はより過激になっていく……。ますます、清々しい設定だ!
……ということなのだけど、レーベル的な制約なのか、他のレーベルではもっと過激な描写もあることを考えるとこの手の作品としては大人しいかな? と。また、戦乙女の中でも最強の存在であるソフィアがオズワルドの幼馴染で、っていう立場ではあるのだけど、(邪神に対抗するためには、ソフィア一人だけでは足りない、という事情もあってか)色々な戦乙女のエピソードを挟み、エロ行為などもして……という感じになってしまったため、ヒロインそれぞれの個性が薄くなってしまったように感じる。
ちょっとインパクトに欠ける、という感じがした。
というかね……この状況だと、オズワルド……。ほぼほぼ生殺し状態のように思えるのは自分だけかね?

No.7215

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

Tag:小説感想富士見ファンタジア文庫下等妙人

中山民俗学探偵譚

著者:柳川一

Amazon
BOOK☆WALKER

昭和21年、栃木県足利郡でひっそりと暮らす民俗学者・中山太郎の元を地元新聞の記者が訪れる。探偵小説家を志す記者は、柳田国男に師事し異端の民俗学者として活躍した中山にかつて、彼が交流をした人々との話を聞く。そんな記者に中山が語るのは、謎に満ちた出来事であった……
という連作短編形式の物語。全6編を収録。
まず、自分が民俗学とかに詳しくない、っていうこともあるんだけど、中山太郎という人物については全く知らなかった。調べてみると、どちらかというとフィールドワークよりも文献資料とかを探ることを主にした人物だったらしい、ということだけわかった。
著者のデビュー作にあたる『三人書房』もそうだし、本作は前作以上に「ミステリ」の形をとりつつも、当時の文化人の交流であったり、そんな彼らの生き様とかを描くことに注力した作品という印象。
例えば1編目『オシラサマ』。物語は中山と記者の会話で、かつて漂泊の俳人と言われた種田山頭火と柳田国男が列車の中で邂逅し、会話をしたことがあった。しかし、互いに相手が著名人であることを知らないままに会話をしていたのだ、という話から始まる。そして、『遠野物語』について調べる中で知ったオシラサマと呼ばれる怪異についての話と、種田山頭火の生涯について語られる。そこで印象に残るのは山頭火の生涯について。人生の中で様々な苦難を味わい、各地を旅しながら句を残していった山頭火。俳人として名を残しつつも、それは変わらず、そして、さらっと死にたいと言っていた山頭火。終の地で、その願いは確かに達成された……。話はオシラサマの祟りとリンクさせながら進んでいくのだけど、オシラサマの方は添え物感を感じる物語になっているように感じた。
ミステリとしての色が強いのは5編目『生人形』かな? ある生人形師が残した人形の展示会が行われた。だが、その人形には不穏な噂があり、展示会の前にも奇妙な出来事が起きていた。そんな話を耳にしつつ、展示会を訪れた三遊亭円朝が見たものは……
不穏な噂のある人形。実際に起きた出来事はその呪い? しかし、それは実は……。そんな謎は間違いなくミステリとしての形。ただ、そんな中で生人形の展示会は「見世物」「興行」であるという忘れがちだが大切な事実。そして、そこを見破る円朝の芸人としての目というのが印象に残る。
勿論、本作のエピソードとか、そういうものはフィクションなのだろうけど、それでも、作中で描かれる人々の世界というのを感じることができた。

No.7214

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

この記事は、「新・たこの感想文」に掲載するために作成したものです。
他のブログなどに、全文を転載することは許可しておりません。
「新・たこの感想文」以外で全文を転載したブログ等がありましたら、それは著作権を侵害した違法なものとなります。

Tag:小説感想柳川一

ブログ開設20年を迎えました!

2004年12月7日にOCNブログで「たこの感想文」を開設。
FC2ブログに移り、ブログ名も「新・たこの感想文」に変わったりしましたが、本日をもって、ブログ開設20年となりました。

本当、ブログが開設された日に生まれた子供が立派な成人ですよ!
とか書くことになるんだろうな、と思っていたら民法が改正されたおかげで、そのネタは開設18年で出来ることになってしまったり、世の中、ままならないものです。

この1年も、相変わらず淡々と感想を投稿するだけのブログを続け、『このライトノベルがすごい!』の協力者をする、という程度の活動ですが、それはこれからも続けていければな、と思っています。
今後も、よろしくお願いします。

No image

');q.setNumEntries(5);q.load(dispfeed);function dispfeed(a){if(!a.error){var b=document.getElementById("feedContainer");for(var i=0;i'}else{n+=r}b.innerHTML+=''}var p=b.getElementsByTagName('a');for(var j=0,l=p.length;j