政党は急成長できるのか 大阪5区のことなど
今国会での衆議院解散はたぶんない、と前の記事で書いた。
自民党内でも慎重論が強いようだし、あの山口3区戦争が決着つかないと、解散はできないだろう。
首相「非常に難しい判断」 山口新3区の候補者調整
2023年6月7日 産経新聞
山口県は選挙区がひとつ減るため、4区の安倍晋三の後継と、3区の岸田派の林芳正外相が公認争いをしている。
岸田は何が何でも林を推して安倍派を屈服させるだろうが、そう簡単ではない。時間がかかる。
とは言え、当分選挙はないよと高をくくっているわけにもいかず、少し足下の分析をしてみようと思う。
足下というのは、いまこの文章を書いている大阪市東淀川区を含む、大阪5区(東淀川、淀川、西淀川、此花)である。
自分の設計事務所があるという意味でも足下だし、前回の衆院選ではかなりがんばって活動したと言う意味でも、しばらく議員事務所で仕事をしたという意味でも、私にとっては足下と感じている。
前回、2021年10月の衆議院選挙では、以下のような結果だった。
(朝日新聞より引用)
見ての通り、現職が3人もいる。普通に考えると、現職がどっか行くことはないので、次回も3人は立候補すると考えられる。
さらに、大阪ではこんな事情が生じている。
維新、公明の「金城湯池」で主戦論 衆院関西6選挙区、関係に揺らぎ
2023年5月14日 毎日新聞
これまで大阪で4つ、兵庫で2つの選挙区は、自民も維新も候補者を出さずに公明候補が議席を得てきた。
公明は、自民とは国政で、維新とは大阪で協力関係をとってきたからだ。
しかし、4月の地方選で大勝ちした維新は、もう公明とは組まない、と宣言したのである。
地方選での維新の票数を見ると、6選挙区すべてで公明は議席を失う可能性がある。
大阪5区もその一つであり、現職3人と維新候補の四つ巴になる可能性が高い。
そうなった場合、どのようなことが想定されるのか。
昨年7月の参院選の比例では、維新81332票、公明31853票で、約10:4の比率だったが、これには自民票が入っていない。(自民は自民に投票しているから)
今年4月の府議選では、東淀川と淀川は、維新、公明、その他の3候補だった。そのなかで維新は75000票、公明は31000票である。自民がでない場合でも、だいたい10:4程度になっている。自民票は連立を組む公明よりも維新に多く流れていることがわかる。(もちろん地方選だからという要素は強い)
次に共産だが、宮本の48000票は、比例票の投票先でいうと共産21000、社民2000、民主系の約半分で12000、それに維新から13000票程度が流れていると、私は推測している。
問題はれいわだ。大石の34000票は、比例でれいわに投票した1万の3.4倍もある。つまり、他党が候補を立てると、非常に苦しくなるということだ。
これも私の見立てだが、比例では民主系に入れた人が1万、維新が14000、程度が選挙区では大石に入れているのではないか。よって維新が候補を立てると、単純計算では 大石はかなり苦しくなる。
それに加えて、参政党が候補を出してくることが考えられる。参政党はれいわを狙い撃ちにしているようなところがあるうえに、大阪5区は参政党の本拠地である吹田の隣でもあり、おそらく出してくるのではないか。
詳細は明かせないが、これまでの数年間の分析から、各陣営の努力を考慮せずに、単純な票の流れを考えたときの私の見立ては以下の通り。
(クリックで拡大)
このままでは、れいわは議席を失う可能性がある。
■
では、どう努力するべきなのか。
次に挙げるのは、2019年からのれいわ票の動きだ。
(クリックで拡大)
こちらは右から左に時系列となっている。れいわの比例票の得票率は、2019年から見れば微増しているとは言え、全国平均とほぼ変わらない。(大阪の中では明らかに高い方だが)
現職議員の地元で、なぜ支持が広がっていないのか。私自身の反省も踏まえて、検証してみよう。
地元活動をしてこなかったかというと、必ずしもそうではない。
昨年の3月から5月は、怒濤のような「カジノ住民投票署名」で、れいわはよく奮闘した。事務所スタッフもボランティアも、本当によくがんばったと思う。署名運動の主体となった住民活動家のなかでも、れいわの評価はずいぶん上がったのは間違いない。
ただ、署名運動が終わるやいなや7月の参議院選に向けて走りだすことを余儀なくされ、運動を成果として集約することが十分にできなかった憾みはある。
参院選挙は、残念な結果ではあったが、れいわの知名度を上げるためには役に立ったはずだ。
だが、数字を見ると愕然とする。
2019年参院選の時と比べて、大阪府内の比例票の得票率は全く同じ、数にしてもわずか8%しか増えていない。
参政党に奪われた分を、新たに獲得したとも言えるが、大局的な党の支持というのは、そう簡単に激変するものではないのである。
下記のグラフは、自民党と社会党ができた55年体制以降の、衆議院の議員数の推移だ。ウィキペディアの表をすこし分かりやすく再構成した。
これを見てわかるのは、各党の議員数が大きく変わるのは、合併や分裂のときだけで、それ以外にはおよそ20%以内の変動に収まっているということだ。
唯一の例外は2009年の政権交代と、それが崩壊した2012年のときだけである。
つまり、有権者は「ちゃんと見て選んでいる」ということだ。
党、Party というのは読んで字のごとく、あるPart(部分)の代表ということ。得票≒議員数その党が言っていることに共感し期待してくれる人の数にほぼ比例している。
社会情勢や党の努力によってもちろん変動するけれども、その幅はほぼ20%以内。一気に何倍にもなるということはない。
唯一例外の2009年はリーマンショックを背景に、民主党が約3倍に、自民党が約1/3になったけれども、その過剰な期待を裏切った民主党は、3年後にわずか1/5以下に激減する。
そして、約2000万人の有権者が、政治に絶望し、選挙に行かなくなってしまった。無関心なのではなく、棄権しているのであり、良い悪いは別にして、これもまた選択なのだ。
特定の政党を大好きな人は、得票が伸びないのは「まだ知られていないからだ」と考えがちだが、実際は必ずしもそうではない。今訴えている内容を支持してくれる人は、これくらいしかいないのである。支持を広げるためには、何を訴えるのか、を考え直さなくてはならない。
こうして見てみると、2022年の参院選で、得票数を8%伸ばしたというのは、結構すごいことだったということがわかる。
■
問題は、参院選後である。
署名運動と参院選の成果を、組織化という果実に実らせる段階を、どう闘ったか。
れいわは、地方選で組織作りをする、という方針を立てた。
これ自体は、間違いでは無かったと思う。しかし、なかなか思うようには進まなかった。
とくに大阪5区においては、れいわが大阪市議選に公認した予定候補が二人そろって反旗を翻すという事態になった。
詳細は省くが、公認時点であきらかだったことを蒸し返して、恨みつらみをぶちまけて「反れいわ」の尖兵となってしまった。ただ単に、個人的な事情を優先するために責任をれいわに押しつけたのか、もともと候補を引き受けておいて、やり直しがきかない時点で卓袱台返しを狙っていたのか。。。。
とにかく、この事態のおかげで、れいわは最重点区である淀川区と東淀川区で地方選の候補を立てることができなかった。地方選を唯一の方針としていた中では、ほとんど流血の損失といえる。
(あの2人たちは、その流血を見てほくそ笑んでいるのだろうが)
いずれにしても、今言えることは以下のことだ。
まず、一つの政党が独自で伸ばせるのはせいぜい20%程度である。
そして、大阪5区においては独自勢力をつくるための大きな機会損失があった。
ここから導かれるのは、野党共闘しかないだろう、ということだ。
れいわは極端に野党共闘を嫌う。独自性を失って、自死に等しいと思っているのだろう。
しかし、共闘というのは、同じ組織になることでも、ずっと一緒になることでもない。
特定の目的のために、一時的に手を結ぶ契約にすぎない。
それに、れいわはもっと自信を持っていい。
自分たちこそが主流派なんだと胸をはって、共闘の軸になればいいのだ。
共闘したら自分たちが霞むなどと、情けないことは言わないでほしい。
共産党は比例順位をつけるので、惜敗率にかかわらずその順位通りに比例復活する。
つまり、宮本は選挙区に出る必要もなければ、どんな数字でも上がれるときは上がれるのである。
それでもなぜ選挙区に出るかというと、地方選のためだ。
組織の活性化を図って、地方選の票を固めるために、国政に候補者を立てるのである。
2015年までは、そのために全選挙区に候補を立ててきた。
先方の要望が分かれば、交渉の余地はある。
今やるべきは、れいわ大石を大阪5区の野党統一候補にすることだ。
と、私は思うのだけれども、賛同は少なそうだなあ・・・
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