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2010.12.25
自分ではじめる(セルプヘルプ)ための認知行動療法ブックリスト
ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をはじめる セルフヘルプのためのワークブック (2010/12/08) スティーブン・C・ヘイズ、スペンサー・スミス 他 商品詳細を見る |
登場以来、精神療法のセルフヘルプ本としては圧倒的な売上を記録し、米Amazonでは一時はハリー・ポッターさえ上回った、第3世代行動療法のひとつACT(アクセプタンス・コミットメント・セラピー)のセルフヘルプ本、Get Out of Your Mind & Into Your Life: The New Acceptance & Commitment Therapyの翻訳(あっという間に消えてしまった)が出版社をかえて再登場。
従来の認知療法と異なり、認知の査定も修正も変容も行わない(認知を変える努力は却ってアダになる)このアプローチは、自動思考を捕まえるのも、それを論破するのも難しすぎる(いや、実際難しいのだ)と感じる人にこそ。
※「世代」について間違ったことを書いてたので訂正。
ここでいう「世代」は、行動療法というくくりの中の世代であって、大くくりにまとめると下のような感じになる。
第1世代 行動療法
第2世代 認知(行動)療法
第3世代 ACT、弁証法的行動療法など
フィーリングGoodハンドブック (2005/08) デビッド・D. バーンズ 商品詳細を見る |
バーンズ博士のベストセラーFeeling Goodの続編。前編が認知療法の本拠地うつ病を中心にしたものなら、さらに適用を広げていった認知療法の発展に従い、不安、緊張、恐怖の克服、対人コミュニケーションなども問題も扱っている。
辞書のように分厚いが、必要なところだけ拾い読みするのが正しい使い方。
〈増補改訂 第2版〉いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法 (2004/04/27) デビッド・D.バーンズ、山岡 功一 他 商品詳細を見る |
全米で300万部のロングセラーFeeling Goodの翻訳第2版。多くの読書療法の研究でも使われるセルフヘルプの認知療法本の決定版。
実に多くの技法とアイデアに満ちていて、いつまでも使える。
問題は辞書のように厚いことと、値段が高めなこと。
とりあえず第3章と第4章を読めば、認知療法は始められるので、後は適時、辞書のように引いて使うのがよい。
自信をもてないあなたへ―自分でできる認知行動療法 (2004/06/26) メラニー フェネル 商品詳細を見る |
低い自己評価が抑うつの悪循環を生む。
ネガティブな自動思考に代わる見方を探すことから始め、
最終的にスキーマを新しいものに代え、自己評価を取り戻そう。
認知療法の自習書としては目標設定が高いが、本自体は読みやすい。
二冊目の自習書に、「いやな気分よ、さようなら」が合わなかった人にも。
うつと不安の認知療法練習帳 (2001/12) デニス グリーンバーガー、クリスティーン・A. パデスキー 他 商品詳細を見る |
認知療法のワークブックでは、最も詳しいもののひとつ。
別冊で、指導者向けの解説本「うつと不安の認知療法練習帳ガイドブック」もある。
こころが晴れるノート―うつと不安の認知療法自習帳 (2003/03/20) 大野 裕 商品詳細を見る |
シンプルだが、数多くの技法が盛り込まれている。
また、コピーすればすぐに使えるように様式もたくさん入っているのもすぐれもの。
日本の認知療法の第一人者によるもの。
子どものための認知療法練習帳 (2006/03) ロバート・D. フリードバーグ、レベッカ・J. フリードバーグ 他 商品詳細を見る |
本来は、抑うつや不安を抱く子ども(8~11歳)が認知療法を行うのに、どんな風に手助けすればいいかを解説した専門家向けのマニュアル。けれど認知療法をやって詰まりそうなところを、やさしくガイドする18の課題を、「ちゅーた」と「らった」のキャラクターが紹介してくれる。
「こんにちは。はつかねずみのちゅーたとらったです。あなたは、かなしい気持ちになったり、いらいらした気持ちになったとき、どうしていますか?そんな気持ちが、このままずっと続くと思ったり、自分が悪い子だと思ってしまうことがありませんか?でも、ほんとうにそうなのかな?これから、この本のなかで、わたしたちといっしょに考えてみましょう。」
このワークブックにも、別売でガイドブックがある。『子どものための認知療法練習帳ガイドブック』
子どもと若者のための認知行動療法ワークブック―上手に考え、気分はスッキリ (2006/08/15) ポール スタラード 商品詳細を見る |
ありそうでなかった子供と若者のための認知行動療法セルプヘルプ・ワークブック。ちょっとしたことで頭にきて暴力を振るってしまったり、怖い体験を思い出して動けなくなったり、ひどく落ち込んでしまったり、困っているのに止められない癖に悩んだり、といった問題に悩む子に、個人でも使えるし、教室でも使えるもの。
生き方を変える大法則 (小学館文庫) (1998/03) 大野 裕 商品詳細を見る |
一番値段の安い認知療法の本。
日本の認知療法の第一人者が書いているし、認知療法がどんなものか手っ取り早く知りたい人のために。
近頃、わんさか出ている認知療法の新書本や一般書の類を買うくらいなら、こっちをお勧め。
不安な心の癒し方 (2006/02/27) ロバート・L・リーヒ 商品詳細を見る |
著者は『認知療法全技法ガイド―対話とツールによる臨床実践のために』のロバート・L・リーヒイ。7つの認知療法とあるように、認知療法に蓄積された多くの技法を、不安な心を改善する7段階のプログラムにまとめている。その中には最近のマインドフルネス認知行動療法も入っている。
弁証法的行動療法ワークブック―あなたの情動をコントロールするために (2009/02/09) スコット・E・ スプラドリン 商品詳細を見る |
ボーダー(境界性人格障害)や自殺祈念への高い治療率で注目を集める弁証法的行動療法のセルプヘルプ本。
リネハンの弁証法的行動療法では、境界性人格障害について、古い精神医学が言ってきたような「人格」の問題などではなく、衝動情動のコントロール不全と考える。原題:Don't Let Emotions Run Your Life(情動にあなたの人生を好きにさせない)。
自傷行為とつらい感情に悩む人のために―ボーダーラインパーソナリティ障害(BPD)のためのセルフヘルプ・マニュアル (2006/01) ロレーヌ ベル 商品詳細を見る |
これも弁証法的行動療法に基づく境界性パーソナリティ障害向けのセルフヘルプ本。
ごく一部の章はセラピスト向けだが、ほとんどの章が、うつや摂食障害、自傷行為や怒りの問題など、境界性人格障害の人がが直面するであろうさまざまな問題と、その問題を克服するためのスキルの内容、ならびにそのスキルを身につける方法の説明に割かれている。ワークブック形式(記入式マニュアル)であるのも、セルプヘルプ目的に使いやすい。
食も心もマインドフルに―食べ物との素敵な関係を楽しむために (2005/10) スーザン アルバース 商品詳細を見る |
摂食障害についてのセルフヘルプ本だが、第3世代行動療法に基づいたセルフヘルプ本の、最初に出た邦訳でもある。
とくに第3世代行動療法が重要視する「マインドフルネス」の概念や関連する技法がやさしく説き語ってあり、第3世代行動療法への入門書としても使える。
10分間瞑想健康法―日々の不安・うつ・パニックがとけていく!! (2006/07/07) ジェフ・ブラントリー 商品詳細を見る |
なんかすごい邦題がついてるが、第3世代行動療法のひとつ、MBSR(Mindfulness-based Stress Reduction Program:マインドフルネス・ストレス低減プログラム)についてのマニュアル本"Calming Your Anxious Mind: How Mindfulness and Compassion Can Free You from Anxiety, Fear, and Panic"の邦訳。MBSRの創始者ジョン・カバットジンが序文を書いている。
強迫性障害からの脱出 (2000/12/25) リー ベアー 商品詳細を見る |
強迫性障害には、行動療法が有効であることが分かっているが、日本ではまだ実施機関も少ない。
この本は、コンサルテーション精神医療の分野でも有名なMGH(マサチューセッツ総合病院)OCD部門の中心的治療者の執筆。強迫性障害の説明から代表的な治療法E&RP(暴露・反応妨害法)の実践法、自己チェックリストなど、詳しく説明。アメリカでは強迫性障害への行動療法の教科書とされているもの。
食べたい!でもやせたい (1991/09) L. ワイス、M. カッツマン 他 商品詳細を見る |
認知行動療法に立脚した過食症の治療法を紹介。
完全主義、強迫性傾向、うつ状態、自己主張ができにくいなどの問題にも目配りしてある。
7週間の治療プログラムにしたがって、各章が1週間分のプログラムをまかなうように作られている。練習問題や宿題も用意されており、ワークブックとして利用できるように工夫されている。セルフヘルプする人にとって自己援助的なガイドとして役に立つ。
正体不明の声―幻覚妄想体験の治療ガイド (2002/05) 原田 誠一 商品詳細を見る |
統合失調症のための、認知行動療法からのアプローチ。幻聴にどう対処するかで、幻覚妄想へ下り落ちていくか否かが変わる。一般の人にも読めるほど、実にわかりやすく書いてある。
正体不明の声―幻覚妄想体験の治療ガイド 対処するための10のエッセンス
うつ・躁回復ワークブック―自分で記入し、自己コントロールするためのプログラム (2001/07) メアリー・E. コップランド、マシュー マッケイ 他 商品詳細を見る |
必ずしも認知療法だけの本ではないが(もちろん認知療法の技法はたくさん取り入れられている)、躁鬱病の人にとっては最高のセルフヘルプ本であるので紹介する。
同病の人たちは最大の情報と知識の供給源である、とのコンセプトのもとに120名の躁鬱病患者たちから集めた情報をもとに自ら躁鬱病経験者であるカウンセラーがまとめた本(その研究は米国社会保障省の研究助成を受けている)。「どんな医者がいいか」「どんな医者にあたってどんな目にあったか」「自殺後どんな風に周りに扱われたか」「本当はどんな風に対応してほしかったか」などアルアル話が満載な上に、簡潔なワークブック形式にもなっているという三ツ星本。日本でも、こんなスタイル/出自のセルフヘルプ本が出るのを願ってやまない。
自殺予防の認知療法―もう一度生きる力を取り戻してみよう (2005/09) トーマス・E. エリス、コリー・F. ニューマン 他 商品詳細を見る |
どんな名医もセラピーも、死んだクライエントを救うことはできない。自殺の危険の高い人、心配する家族や友人、そして専門家への認知療法を用いた実践的なテキスト。励ましを与えるばかりでなく、自己破壊の暗い闇から脱出し、よりよい人生へと踏み込んでいく方法を与える本。
〈自己発見〉の心理学 (講談社現代新書) (1991/03/15) 国分 康孝 商品詳細を見る |
ここから論理療法。
論理療法の概略を手っ取り早く知るためにはこれ。
論理療法にまなぶ―アルバート・エリスとともに・非論理の思いこみに挑戦しよう
論理療法にまなぶ―アルバート・エリスとともに・非論理の思いこみに挑戦しよう (1989/02) 不明 商品詳細を見る |
論理療法の創始者アルバート・エリスが来日したときに、日本の臨床家とのワークショップやそれに参加した人たちの投稿からなる。わかりやすい。
論理療法による3分間セラピー?考え方しだいで、悩みが消える (2005/02) マイケル・R. エデルシュタイン、デヴィッド・ラムゼイ スティール 他 商品詳細を見る |
論理療法は、創始者エリスが書いたもの以外にむしろ良書があるような気がする。わかりやすいABCDEF図式(Activiate Event出来事→Breif不合理な信念→Consequence結果→Dispute論駁→Effective Thought効果的な考え→new Feeling新しい感情) をつかって、膨大な事例を取りあげている。自分でコラム法をやるときなど実に参考になる。
思いやりの人間関係スキル―一人でできるトレーニング (1993/02) リチャード ネルソン・ジョーンズ 商品詳細を見る |
SST(社会的スキル・トレーニング)も重要かつ有用な認知行動療法の仲間だが、セルフヘルプ本として「いやな気分よさようなら」レベルでお勧めできるものが残念ながらまだない。
この本は相当よくできていると思うのですが、前半の自己理解のあたりが「難しすぎる」という評価も。
中盤以降から(または使えるところから)使ってみるのが正しい使い方だと思う。
言いたいことがきちんと伝わる50のレッスン―話し上手になれる本 (2000/12) 平木 典子 商品詳細を見る |
アサーティブネス・トレーニング(主張訓練)は、攻撃的にならず、さりとて相手の言いなりにもならないためのトレーニング。いろんな紹介本があるけれど、すぐに使えるマニュアルとなったものではこれを勧める。とくに言いにくいマイナスの感情を表現するレッスンは必読。同著者のシリーズに、 NO を言える人の「話し方」47のレッスン―自分の気持ちをきちんと伝えるヒント や 自分の気持ちを素直に伝える52のレッスン―ほめ上手になれる本 がある。これらも、よくできたマニュアル。
Managing Your Mind: The Mental Fitness Guide (2007/03/08) Gillian Butler、Tony Hope 他 商品詳細を見る |
プライベートにもビジネスにも、メンヘラーにも健常者にも使えるビブリオセラピー(読書療法)の最終兵器。
認知行動療法を中心に、交流分析その他のスキルも詰め込んで、鬱から学習支援、記憶法、友達づくりからダイエットまで、あらゆる困りごとを自分のこころをストレッチにして治す/改善するメンタル・フィットネス本。
The Authoritative Guide to Self-Help Books (1994/05/06) John W. Santrock、Ann M. Minnett 他 商品詳細を見る |
ビブリオセラピー(読書療法、自分でセルフヘルプ本を読んで行う)の盛んなアメリカでは、ガイドブックも充実の極みに達している。数多のセルフヘルプ系書籍を紹介する、これ自体が Authoritative(権威ある)有名なブックガイド。
Writing Successful Self-Help and How-To Books (Wiley Books for Writers Series) (1997/01) Jean Marie Stine 商品詳細を見る |
こっちは、そういうセルフヘルプ本の書き方ガイド。作り手サイドから見ると、セルプヘルプ本は2倍使えるようになる。
Using Books in Clinical Social Work Practice: A Guide to Bibliotherapy (1997/12) John T. Pardeck 商品詳細を見る |
これは、治療のプロ向けの、セルフヘルプ本の使い方ガイド。ビブリオセラピー(読書療法)をどう治療戦略の中で活用し、有効に利用するか。医療費が高いせいかセルプヘルプ本が隆盛する医療環境の中で、精神科医やセラピストなどのプロはどのようにセルフペルプ本を活用し、効果的かつ経済的なサービスを提供するのか。プロの立場から分析すると、セルフヘルプ本は3倍使えるようになる。
(参考)
認知行動療法・認知療法の道具箱(ナット&ボルト)
Anderson L, et. al.(2005). Self-help books for depression: how can practitioners and patients make the right choice? British Journal of General Practice. 55(514):387-92. PMID: 15904559 [full text]
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