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     聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥。

     だが、大人には、その「一時」が惜しい。耐え難い。

     いつのまにかプライドが、贅肉のようにへばりついているのだ。
     だから若者よ、大人には、「怒らせると手がつけられない暴君」に接するがごとく、接するのがよい。つまらない大人に限って(だからこそ、というべきか)、バカにされるとすぐ怒り出す。


     話がそれた。


     「当たり前」すぎて、人に聞くのもそうだが、いざ調べると、なかなかわからない類の事柄がある。常識とか教養とか背景知識とかトリビアとか、重なってなさそうで重なっていたりもするが、そういう事項だ。
     
     ましてや、異文化のことともなれば、なおさらである。

     たとえば数学で出てくる円錐は、はたまた円弧は英語ではなんといえばいいか。
     大脳と小脳はそれぞれなんといえばいいか。
     テコの原理で日本語なら「支点」という、あそこは英語なら何になるのか。

     数学事典や解剖学の本を読めば良い? その通りだが、こういう「当たり前」の知識抜きで、専門的な本を読むのは実に大変だ。
     ボキャブラリー不足に悩む人の多くが、実は「常識」「当たり前として前提とされる知識」の不足に苦しんでいるのだ。

     そんな時には、こんな辞書がある。

    The New First Dictionary of Cultural Literacy: What Your Child Needs to KnowThe New First Dictionary of Cultural Literacy: What Your Child Needs to Know
    (2004/10/31)
    E. D. Hirsch、

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     英語にはいろんなfirst dictionaryがあるけど、これは教養(Cultural Literacy)のfirst dictionary。つまりは、子供達が知っておかなくてはならない基本的な事項についての「最初の辞典」。大人気で、すでに第3版。

     子供達のむちゃくちゃに広い好奇心と想像力をまるごと満たすには少々足りないかもしれないが、それでもこの辞典がカバーする範囲は、神話、歴史、宗教、哲学、音楽、芸術、地理、医学、科学技術と広い。何しろ「教養の辞典」なのだから、あまりに「当たり前」すぎて、調べるのが難しいことが、実に広いジャンルに渡って載っている。

     何しろ最初の辞典だけあって、じつにわかりやすい英語で、とてもシンプルに短く書いてある。1項目なら数分かからない。隙間の時間にでも読める。

     大人なら、知っていることも少なくないだろう。そして自分が知っていることについて読むのが、ストレスも少なく、英語読みには最適である。かといって、知ったことばかりでも、読むのに張りが無い。

     「知っていそうで、ちゃんと知らないこと」というのは、そういう意味でも狙い目だ。迷うほどには未知でなく、興味をかき立てぬほどには既知でない、「教養の辞典」がカバーするのはそういう領域である。




     あまり英語を読むのがなれていなくて、英語の辞書をつかうのはちょっと、という人には、こんな辞書がある。正真正銘のFirst Dictionary(最初の辞書)だ。

    Scholastic First DictionaryScholastic First Dictionary
    (1998/08)
    Judith S. Levey

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     見出し語は1500語以上、小学生程度の読解力と(ここが重要→)興味にターゲットと合わせて編集されている。
     全224ページだから、各ページに平均8個の言葉とその意味がおさめられていることになる。
     1ページあたり最低2枚掲載されているカラー写真が、言葉の意味を理解する手助けとなる。

     言葉の定義は、(ここが重要→)年齢にふさわしい難易度に合わせた文章で書かれている。
     コウビルド(Cobuild)という英英辞典をご存知の方ならピンと来るだろう、あれである。
     まるで子供が「この言葉、どういう意味?」と質問した際に、ちゃんとした大人が返してくれる答えのような感じだ。

    bump
    1.A bump is a round place that is above the area around it.
    (bumpってのはね、周りに比べて、そこだけ丸く盛り上がってるところのことだよ)

    例文)William got a bump on his head when he hit it on a low branch of a tree.
     (ウィリアムは低い木の枝に頭をぶつけて、こぶ(bump)ができちゃった)。



     このタイプの定義だと、先日、紹介した「英英辞典」の逆引き(例「血を吸う」が分からないなら「吸血鬼」の定義に出て来るはずだと予測して引く)にも使いやすい。

     こういうのは、学校の先生が教えてくれればいいのにね。



     おれはもう少し英語ができるぜ、ちびっ子用だと物足りないね、という人には、First Dictionaryではなく、Children's Dictionaryというのがいくつも出ているから、そいつを開いてもらいたい。

     英語を実務で使ってる人でも、この手の辞典を手元に置いて、言葉のコアの意味を確認するのに使っている人がいる(かなりできる人だ)。

    American Heritage Children's Dictionary (American Heritage Dictionary)American Heritage Children's Dictionary (American Heritage Dictionary)
    (1998/08/24)
    American Heritage Dictionaries

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    Scholastic Children's DictionaryScholastic Children's Dictionary
    (2007/06)
    Inc. Scholastic

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     カラフルなイラストやシンプルで分かりやすい語義説明、大きめの文字などは、First Dictionaryを引き継いでいるが、このレベルに来ると、「言葉の歴史」、「類義語の使い分け」なども解説してあり本格的だ。

     ネィティブの小学生向けの辞典だが、見かけのフレンドリーさから、あなどってはいけない。

     ESL(English as a Second Language。英語を母国語としない人達のための英語教育あるいは英語を第二外国語として話す人)用の初級英英辞典(たとえばLONGMAN WordWiseとかOXFORD Wordpower)よりも、見出し語が多かったり、ESL用辞書には含まれてない単語が載っているほどだ。



     さて、これ以降は、やっぱり子供向けだが、翻訳すれば商売になりそうなレベル(実際、翻訳のあるものもある)。

     斎藤秀三郎(イギリスからやってきたシェイクスピア劇団に「てめえらの英語はなっちゃいねえ」とべらんべえ調で囃した伝説の英語達人)は、夏休みにブリタニカ(Encyclopaedia Britannica)を読破したそうだが、子供向け事典なら、我々にも読破可能だ。

     今回紹介する中では、例外的に複数冊で一人前の値段がするMy First Britannicaより、まずはScholastic Children's Encyclopedia がオススメ。
     英語における「話題の泉」でもある。

    Scholastic Children's EncyclopediaScholastic Children's Encyclopedia
    (2004/06)
    Inc Scholastic

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    My First Britannica: A Captivating Reference Set for Children 6-11 Years (Encyclopaedia Britannica)My First Britannica: A Captivating Reference Set for Children 6-11 Years (Encyclopaedia Britannica)
    (2003/11/01)
    Encyclopaedia Britannica

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     なお『My First Britannica』のほんの一部を訳して、CDも付けて商売にしているのが以下の本。
    CD BOOK アメリカのジュニア科学事典で英語を学ぶ―惑星・星・月・化石・恐竜・大陸などアメリカの小学生向けの英文を読むCD BOOK アメリカのジュニア科学事典で英語を学ぶ―惑星・星・月・化石・恐竜・大陸などアメリカの小学生向けの英文を読む
    (2006/05)
    喜多 尊史

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    さて、ここから下は、最初にあげたThe New First Dictionary of Cultural Literacyの著者によるもの。
    むしろHirschさんは、こっちの教養辞典の著者として名高かったのが、ジュニア用を作ったのである。

    ここら辺も、向こうでは、ジュニア・ハイからハイ・スクール・レベル。
    つまり大人になるなら、知っとかないとね、というレベル。

    Cultural Literacy: What Every American Needs to Know (Vintage)Cultural Literacy: What Every American Needs to Know (Vintage)
    (1988/04/12)
    E.D. Hirsch Jr.

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    Cultural Literacy: Library EditionCultural Literacy: Library Edition
    (2007/06)
    E. D. Hirsch

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     これは上の音声(オーディオ・ブック)版。

    教養が、国をつくる。―アメリカ建て直し教育論教養が、国をつくる。―アメリカ建て直し教育論
    (1989/02/10)
    E・D・ハーシュ中村 保男

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     そして上の翻訳。どう考えても、なんでこんなタイトルに?




    The New Dictionary of Cultural Literacy: What Every American Needs to KnowThe New Dictionary of Cultural Literacy: What Every American Needs to Know
    (2002/10/03)
    E. D. HirschJoseph F. Kett

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    アメリカ教養辞典 普及版―神話から科学技術までアメリカ教養辞典 普及版―神話から科学技術まで
    (2003/05)
    E.D.,Jr. ハーシュJames Trefil

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    これもHirschさん。原書および翻訳(←こっちはまともなタイトルで良かった)。
     翻訳は、品切で値段が高騰してるみたいだけど、大丈夫、英語で読めます。




     さて、こちらはESL用。平易な文章なので基本的な英語力(中学終了レベル)で、つまり(日本の)高校生ぐらいから読める(ちゃんとfor Learner's of English と書いてある)小型百科事典。

    Oxford Guide to British and American Culture for Learner's of EnglishOxford Guide to British and American Culture for Learner's of English
    (1999/12)
    Jonathan Crowther

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     ESL用だけあって、ネイティブには当たり前だが、外のいる人には分かりにくいだろう歴史・風俗習慣・文化・サブ・カルチャーに詳しく、また分かるように説明してくれる(なんて発音したらいいのか分からない固有名詞を発音記号付きで多数盛り込んでいるのも助かる)。
     ここら辺が、本格百科事典には欠けていて、類書がない部分。ネイティブのバックグラウンドや「前提」となっている常識を知るにはもってこいである。

     逆にこの一冊が手元にないばっかりに、とんでもない勘違い翻訳をしている人がいる。そんなことも分かる、ちょっと怖い事典。





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