シリーズ２作目にあたる

森博嗣の「ナ・バ・テア」（2004，None But Air）

を読んだ。

シリーズ１作目「スカイ･クロラ」で，カンナミから撃たれた草薙水素（スイト）が話の中心となるのだが，シリーズそのものがけっこう「わけのわからない」ものでもあることから，以下自分なりのまとめの意味もあってネタバレなしに書けないので，悪しからず。

タイトルは「空しかない」という意味。「なばてあ」とフラットに読むのではなく，「な↓　　　ばッて↑あ↓」という感じか？（笑）
これは，「地上では笑えない」などと思うパイロットたちの「本音」にも通じるのだろう。

飛行歴１年で名門チームに初めての「女性」として配属された草薙。
同時に整備士の笹倉も同じ基地からの異動となるのだが，彼もシリーズを通じての登場人物となる（キルドレである草薙に対し，笹倉は「ふつう」の大人）。

合田を指揮官とするこのチームが「名門」であるのは，コードネーム「ティーチャ」という名パイロットがいるからであり，草薙も（彼から基地No2と認められたこともあり），笹倉も（彼から整備を任されたこともあり）けっこう舞い上がっている（表現が悪い，作中にそんなことは書かれていない。単なる憶測である，笑）。

キルドレ（ここまででは，薬によって大人にならなくなったという「スカイ･クロラ」の中でのカンナミの一方的説明しかない）中心のパイロットたちの中にあって，ティーチャはキルドレではない（年をとり衰えていく）。
しかも，もともとチータ（cheetah）だったのが，誰かが「hとr」を間違えて（文字順も入れ替わり）ティーチャ（teacher）になったという。

草薙の１か月と１週間ほど後に栗田と比嘉澤が配転されてくる。

栗田は「スカイ･クロラ」でカンナミの前任者であり，女性パイロットの三ツ矢をして，カンナミに対し「クサナギさんが，クリタという人を撃った」とかクリタは死なずに「貴方になった」とか言わしめる人物。

また，キルドレである比嘉澤が大人のティーチャに「男」を感じることに草薙が反発を表明した直後に，比嘉澤が空中戦で死に，その夜，フーコ（彼女もシリーズのキーパーソン）を押しのけた草薙がティーチャと寝室をともにして妊娠という展開に！！

堕胎するという草薙の意志に反し，ティーチャの意向を受けた相良医師（昔からのかかりつけ）は彼女を自分の息子のいる大きな病院に連れていき，胎児をとりあげ，「生かす」。
生命力の強い（老衰で死ぬことはない）キルドレの子供も生命力が強く（普通はこの時点で取り出せば死ぬ），「人工的」に育てられて，後に「瑞季」として登場するわけだ。

その間に，ティーチャは会社を辞めるのだが，エピローグで草薙はキャノピィの前に「猫の絵」を描いた強い敵機と遭遇することになり，翼の振り方から，パイロットが「ティーチャ＝チータ」であることを知る。

草薙の着任から半年強の間の話である。
ちなみに，ティーチャが会社を辞めた理由は公式的には，トラクタ（前にエンジン）からプッシャ（後ろにエンジン）への機種の移行への反発となっているが本意は不明。

……とまとめてみたが，読みどころは「空中戦」だと思う。

思うのだが，なかなかついていけないのももどかしい。なにしろ空中だし，自分自身高い所および飛行機がダイッ嫌い！！　だし（笑）
言葉（例えば「ストール＝失速」）は，結構調べながら読んだので，「近いかな」という動きまでは想像できるのだけれど……

「僕」にもちょっとびっくり。「スカイ･クロラ」より「前」の話とは知っていたので，「僕」候補はいろいろいたのだが，かなりあとまで「僕＝草薙水素」に気づかなかった（笑）

また，初版で読んでいるせいか，第１話は，「episode 1：gride」となっている。「glide」だと思うのだが……


シリーズについての日記は，それぞれ，
１作目「スカイ・クロラ」，
３作目「ダウン・ツ・ヘヴン」
４作目「フラッタ・リンツ・ライフ」
からお読みください。

時代･場所，登場人物（機種）などをフリーページの森博嗣メモ（ナ･バ･テア）に簡単にまとめてありますので，ごらんください。
森博嗣の他作品についての日記は，フリーページ　読了本（日本）　（森博嗣）からごらんください。


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