海賊党党首のインタビュー記事を発見
ソフトウェア特許の話やDRM、著作権の切れた著作物配信サイト、前首相のJASRACの会合での発言などを見てきて、俺は著作権制度や特許制度に興味を持つようになりました。
んで、ネットで色々と調べ物をしていると、著作権制度や特許制度の大幅な変革を掲げる政党を発見しました!その名も「海賊党」。穏やかな名前ではないですが、たぶん海の暴力集団の政党というわけではなく、「海賊版」の方の海賊だと思われます。なにしろ、掲げている政策が著作権制度と特許制度だけだそうですから。まあ、政党と名乗りながらどこの議会にも議席を持たず、それどころか活動実態もあるのかどうか怪しい政党は山ほどあるのでしょうが、この政党は欧州議会に議席を持っているそうです。
党のサイトに掲げてある文章はスウェーデン語で、俺はスウェーデン語は読めないのでまいっていましたが、党首にインタビューしたというCNETの記事を見つけました。こちらは日本語です。
「著作権は5年で十分」--欧州議会で議席獲得した海賊党、主張の根拠を語る(前編) - CNET Japan
「特許は要らない」--欧州議会で議席獲得した海賊党、主張の根拠を語る(後編) - CNET Japan
…あー、期待して読んだのですが、ちょっと支持はできないかなー。
俺は著作権保護期間については短縮されるべきだと思っています。70年なんかとんでもねえ、むしろ短くするべきだと。「死んだ後も本を書き続けている人がいるでしょうか?」はその通りだと思います。模倣や翻案は創造の源泉ですが、死後保護期間を長くすればするほど権利関係が複雑になり、利用したくても許可を取るのも困難になり、源泉は枯れてしまいます。とにかくろくにメリットもないのにデメリットだらけです。
が、いくら何でも五年は短過ぎやしませんか。ダ・ヴィンチ・コードを例にあげていますけれども、徐々に徐々に評価が高まっていき、発表からだいぶ経って大ヒットに漕ぎ着ける作品だってあったでしょう。だいたい、生きている人間の権利を何を根拠に取り上げるのでしょうか?まともな国だったら憲法違反では?かつての米国のような、方式主義・登録制で、登録時より何年で失効するとするんだったら、つまり著作権は自然な権利ではないということで違憲ではなくなるでしょうが、すると著作権というものの根本を考え直さなければなりません。それに、現代の著作物とその媒体の多様化を見るに、登録制復活は不可能でしょう。
また、「著作権は普通の市民 (のプライバシー) を脅かしています」の主張も分かるのですが、そこから繋がるお金儲けを目的としない著作物のやりとりは自由 (本文中には「無料」とありますが、多分freeを訳し間違えたのでしょう) とするべき、という主張は行き過ぎだと思います。
著作権は、レコード会社や出版社からロイヤリティをもらうだけの権利なのでしょうか、違うでしょう。そもそも著作者には著作物でお金儲けをする権利があるはずです。許可なく無料でファイルを配っている連中がいて、そのせいで売上が落ちれば、やはりそれは損失でしょう (もちろん、単純にダウンロード数*単価=損失という計算はおかしいと思いますが) 。同じものが違う値段で売られていたら安い方を買うのは市場原理の常です。有体物を安売りすれば旨味が減るのはそれもまた当たり前ですが、知的財産はコピー可能なものなのですから、どんなに安くしたって、無料で配ったって無権限でやっている奴は痛くもかゆくもありません、他方それでおまんまを食っている人は必死です。それを止めるのも著作者の権利であるべきです。
特許はいらないって主張はおもしろそうなんですが、特許制度は単なる技術の私有化ではなく、むしろ広く世に公開することを促進する (一定期間の独占を認めるのは公開の代償) という目的があるはずで、そのことに一切触れていないことが気になりました。…期間を短くするってんだったら賛成できるんですけれども。20年前の有用な発明が特許切れとなる日にも変わらずその価値を保ち続けている、なんてこと今の時代そうそうないでしょうからねえ…。
続く
んで、ネットで色々と調べ物をしていると、著作権制度や特許制度の大幅な変革を掲げる政党を発見しました!その名も「海賊党」。穏やかな名前ではないですが、たぶん海の暴力集団の政党というわけではなく、「海賊版」の方の海賊だと思われます。なにしろ、掲げている政策が著作権制度と特許制度だけだそうですから。まあ、政党と名乗りながらどこの議会にも議席を持たず、それどころか活動実態もあるのかどうか怪しい政党は山ほどあるのでしょうが、この政党は欧州議会に議席を持っているそうです。
党のサイトに掲げてある文章はスウェーデン語で、俺はスウェーデン語は読めないのでまいっていましたが、党首にインタビューしたというCNETの記事を見つけました。こちらは日本語です。
「著作権は5年で十分」--欧州議会で議席獲得した海賊党、主張の根拠を語る(前編) - CNET Japan
「特許は要らない」--欧州議会で議席獲得した海賊党、主張の根拠を語る(後編) - CNET Japan
…あー、期待して読んだのですが、ちょっと支持はできないかなー。
俺は著作権保護期間については短縮されるべきだと思っています。70年なんかとんでもねえ、むしろ短くするべきだと。「死んだ後も本を書き続けている人がいるでしょうか?」はその通りだと思います。模倣や翻案は創造の源泉ですが、死後保護期間を長くすればするほど権利関係が複雑になり、利用したくても許可を取るのも困難になり、源泉は枯れてしまいます。とにかくろくにメリットもないのにデメリットだらけです。
が、いくら何でも五年は短過ぎやしませんか。ダ・ヴィンチ・コードを例にあげていますけれども、徐々に徐々に評価が高まっていき、発表からだいぶ経って大ヒットに漕ぎ着ける作品だってあったでしょう。だいたい、生きている人間の権利を何を根拠に取り上げるのでしょうか?まともな国だったら憲法違反では?かつての米国のような、方式主義・登録制で、登録時より何年で失効するとするんだったら、つまり著作権は自然な権利ではないということで違憲ではなくなるでしょうが、すると著作権というものの根本を考え直さなければなりません。それに、現代の著作物とその媒体の多様化を見るに、登録制復活は不可能でしょう。
また、「著作権は普通の市民 (のプライバシー) を脅かしています」の主張も分かるのですが、そこから繋がるお金儲けを目的としない著作物のやりとりは自由 (本文中には「無料」とありますが、多分freeを訳し間違えたのでしょう) とするべき、という主張は行き過ぎだと思います。
著作権は、レコード会社や出版社からロイヤリティをもらうだけの権利なのでしょうか、違うでしょう。そもそも著作者には著作物でお金儲けをする権利があるはずです。許可なく無料でファイルを配っている連中がいて、そのせいで売上が落ちれば、やはりそれは損失でしょう (もちろん、単純にダウンロード数*単価=損失という計算はおかしいと思いますが) 。同じものが違う値段で売られていたら安い方を買うのは市場原理の常です。有体物を安売りすれば旨味が減るのはそれもまた当たり前ですが、知的財産はコピー可能なものなのですから、どんなに安くしたって、無料で配ったって無権限でやっている奴は痛くもかゆくもありません、他方それでおまんまを食っている人は必死です。それを止めるのも著作者の権利であるべきです。
特許はいらないって主張はおもしろそうなんですが、特許制度は単なる技術の私有化ではなく、むしろ広く世に公開することを促進する (一定期間の独占を認めるのは公開の代償) という目的があるはずで、そのことに一切触れていないことが気になりました。…期間を短くするってんだったら賛成できるんですけれども。20年前の有用な発明が特許切れとなる日にも変わらずその価値を保ち続けている、なんてこと今の時代そうそうないでしょうからねえ…。
続く
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