日本の皆様、お願いします。夫が家なき子になりました。
2015/11/30 Mon 20:22
★いつものあけましたも今年はばたばたーってありませんでしたね。BAFTA試写会ラッシュでしたよ。
イギリスから笑いを届けたくて、どれだけ日本がすばらしいかをイギリスに住んでいる環境を通じて伝えたくて、いつも元気や優しさをくれる家族や友人に近況報告もかねてだらーと更新してきましたが、とてもたくさんの方が訪問してくださっているのに驚いています。本当にありがたいです、ありがとうございます。
私が本当にだらーな性格なので更新がイギリスの某有名店ののウェブサイト修復スピード並でごめんなさい。あれ、もう直らないんじゃないかしら。
実は今度の12月6日でまるっとイギリス生活も9年に入ります。信じられませんがYOUTUBEなどでみる動画で日本のタレントさんや流行の言葉が分からずに、「わたし浦島。。。」と呟いたりしながらも何とかやっております。どうかこれからもぱちぱち男爵てつおとモモグラモをよろしくお願いいたします。また、イギリス情報、イギリス英語のライターの記事もこちらのウェブサイトで連載させていただいています。よろしければちょっと真面目なモモグラモものぞいてやってください。
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夫が「耳が痛いんです。。。」と夜中に赤子のように泣き出した。
「痛いんです、痛い、しくしく。」
本当にこのようにひーんと泣くので私はすっかりあわててしまった。
「耳が痛くて眠れません、何にも聞こえません、もうどうしよう!」
どうしようと言われてもここはイギリスなのだ。夜中の3時になにができよう。い、いや、むしろ、明日の朝になったとしてもなにができよう。
何度も書いているが、この国では自分の登録しているGPという町医者に、まず予約を取ってからしか診てもらえない。
そして、その予約を取るのがまた大変なのだ。朝に電話をしたところで取れる確立はほとんどないのだ。
月曜日だったとしよう、そうすると「来週の火曜日はどうかしら?」などとサラッと言われてしまうのである、明日の火曜日ではないのだ、来週なのだ。うわーーん。
あまりに痛がるので鎮痛剤をのませて、背中をさすっていたがまったく本人がびっくりしてしまったようで、
「痛くてねむれません、しんぱいです、もうなんじゃこりゃ。」
ぶつぶつぶつぶつ日本語でびびりながら小一時間、ようやく明け方に少し眠れたようだ。私もどっと疲れてしまった。
★赤子が赤子をあやさせてもらって、しあわせー。
翌朝GPに何の期待も抱かずに電話をしたら、
①「忙しいので自動メッセージです、そのままお待ちください、なお20分経過しても繋がらなかった場合は自動でガチャンと切れますからよろしく。」
②「忙しいので自動メッセージです、ただいまの電話応答待ちの人数は23人です、そのままおまちあれー」
③「この電話は使われておりません。」
登録してあるGPをはじめ思いつくところ、アドバイスだけでももらえるかと緊急医療サービスにもかけてみたが、
「なんじゃこりゃ!!!」と、今度は私がぶちきれた。期待していなかったのにぶち切れてしまうほどなので、その対応は本当に皆様の想像を超えるのではと思うのである。
「お願いだからプライベートに言って頂戴、もう絶対に放っておかないでプライベートにいって!」
「はい、いきます。痛いんです。」
ちなみにお金さえたっぷりあればプライベートの医者に行くことも可能なのだ。診療代だけで目玉が飛び出るほどなので滅多にいけないが、これほど痛がっているのだから仕方がない。
しくしくしながら出勤していった夫から、「ランチタイムにプライベートに予約しました。こわいです、こわすぎます。」と報告が来たのでドキドキしながら家で結果を待ちわびていると、
「いってきました。」
お、きた。
「どうだった?中耳炎?なんだって?」
「なにもみえませんでした。」
「??」
「耳垢がたまりすぎて何も見えないと先生に言われた。」
もう、この時点で私脱力、なんて情けないんだろう!!!!
「でも何万円も払って見えませんじゃないよね?お掃除してくれなかったの??お医者さんでしょう?!」
「自分でイヤードロップかって何日か耳の垢を柔らかくして、取りやすくしたらまたきてくださいといわれました。ランチを食べられませんでした、はらへた。」
「○×怒凹なんじゃそれ!!!」
数万円も払ってわざわざ診てもらったのに、いったいどういう情けないことだろう。メッセージを見て思わず涙が出てきてしまったほどである。
★さあ、日本の時間です!
日本にいた頃は風邪を引いただけですぐに病院にいった。「万病の元!」とばあちゃんに心配され、なんと素晴らしくありがたく温かな環境にいたのであろう、耳が痛ければすぐに耳鼻科にかかれたし、膀胱がおかしくシクシクなりがちだったピアニスト時代(緊張するとすぐに膀胱炎)はステージ前に駆け込みすぐにみてもらえた。
★「虫」のばあさまはレベル99でゴードンは「ラストボス」と読んでいます。
こっちでは「風邪をひいたから予約したい。」とGPに訴えても「風邪くらいパラセタモールのんでねてちょう。電話もしないで。」となる。診てくださいといってるのではない、予約なのだ。それでも「蜂蜜しょうが紅茶のんで50P(日本で言う50円感覚)のパラセタモールかって寝ていたら治るからそもそも電話しないでよっ。」なのだ。
9年前初めて日本を離れてきたイギリスはあまりに不便で暗くて寒くて辛かった。その冬にすぐに大変な風邪をひいた。そのまま中耳炎になってしまい、何度も「倒れるまね」、「耳が聞こえないまね(本当にそのレベルであったが)」、「痛くて痛くてお風呂にも入れずに臭いでしょう!」感を装い何度もGPに専門医に紹介状を書いてもらうように泣き落としで頼んだが、「オリーブオイルをたらせ」、「ミントティーをのむか、オイルをお湯にたらして鼻呼吸しろ。」、などともはや南アのウィッチドクターか?並みのアドバイスしかもらえずに死ぬ思いでようやく帰った3年後の日本、駆け込んだ耳鼻科で「。。。。。これはどうしたらこうなりましたか。お体は大事にしてくださいよ!」と怒られながらも優しい温かな日本人の先生にぱーっとみてもらったおかげであっという間に良くなった。
★そんなに甘いもの食べたら絶対に虫いるね。
夫はその私の苦しみぬいた鼻たらし3年間を知っていたので、「・・・・わたしも歯医者にいってもいいかもしれません!」と、その奇跡の復活、私が生き生きとしだして鼻たらし妻ではなくなる過程、「味噌煮込みの香りがするの!お出汁の香りがようやくするのよ!」と涙ぐむのに感動し「行ったが最後、間違った歯を抜かれたイギリスのNHSの歯医者の話」に怯え、「虫はいません!むしはいない!」とイギリスでは断固として医者に行かなかった彼すら歯科検診に行くという結果になった。
ちなみに一度だけ強制的に私が連れて行ったイギリスでの歯科検診では、私が大きな麻酔注射を歯に刺されるのをみて「死んだ」と倒れてしまった夫、目薬もさせない南ア人だったのである。それが日本で「歯科検診受けたい」といってくれて私も大喜び、早速予約をし、ガクガクブルブルの夫を「先生、やってやってください!」と診療室に送り出したあと「ぎょえー」と声がするのを期待して待合室で待っていたのだが、
「ほーっほっほ、私虫いませんです!先生がピカピカに磨いてくれました!痛くないし泣きませんでした!」とまるでどこかの国とりに成功したかのような風体で、しかし子供にだけもらえるキャンディーをしっかり握り締めながら夫がぴかぴかの笑顔で生還したときには本当に手を合わせて拝みたくなった。
素晴らしい、素晴らしすぎる、日本。
★大好き、大好きなんです、日本。
あれから6年、NHSの制度もなんとなく改善されてきたかに思えるが9年で一度だけしか専門医に診てもらったことがないイギリス生活、なんとか生き延びている。
★どんなにね、BAFTAの試写会とかあってもガンダルフやマグニートに会えてもね、「味噌煮込み」あったらすぐにキャンセルして名古屋いく。
私たちにとって「頼みの綱」である日本、大事な私の祖国、飛び込んでくるニュースに不安や悲しみを覚える事件もあるが、それと同時に「子供が一人で電車やバスに乗れる国。」、「たった一人の乗客のためにずっと電車を運行させたやさしい国。」、そんな日本にすっかりほれ込んでいる夫であるが、やはり誰だって生まれた国は恋しい。さらにそこで16年も暮らしていたのだから、どんなに不自由な南アでの生活であっても「シンバチップス」や「オーマのラスク」、「ミントクリスプス」が恋しい、大好きでいつか帰りたい国であったことに間違いはないのだ。そして彼、夫は物凄くアフリカの大地を愛している。自然を愛して動物や鳥を仲間だと思って、その耳で、目で、しっかりと朝に聞こえる鳥の声や焼け付く太陽を刻んで生きてきたのだ。
誰よりもアフリカが大好きな夫、本当にいつか帰れる日を楽しみに信じていたのだ。
だが、昨日義父が家に来た際に、
「借金だけ残った、南アの家を売ってしまったが返せない。」としれっと発言しだしたのだ。
夫が「・・・・・DAD,それいつのこと。」と搾り出すようにようやく質問すると、
「半年前」だと言うのだ。
夫はそれを聞いて「そう、そうなんだね、わかった。」と言いながら黙り込んでしまった。
彼らが帰ったあと、夜中の3時を過ぎてもまったく寝る気配がないので私も気になり一緒におきていた。そおっと彼の部屋をのぞくと、
静かに泣いているのだ。アフリカで撮影した写真や動画をみて、なくなってしまったじいちゃんばあちゃんの笑顔を見て、懐かしい大好きな家の写真を見て、夫が泣いていた。
見てはいけないものをみてしまったと思った。いつも頑固で強がっている夫であるから見られたくないに違いない、そおっと部屋をあとにしようとすると、「・・・・・帰る場所が本当にいってしまったよ、なくなっちゃった。重いでも全部、全部置いてきた、16年前に南アを出てから2回しか帰っていなかったんだ、いつかあの家にまた帰ってみんなで笑えると信じていたけれど、なくなっちゃったよ。」
★なくならないものは、あなたの心の中に
どう言葉をかけてよいかわからなかった。突っ立っている私に、
「・・・・・今年も桜は美しいだろうか。」と夫が突然言うので、私はそうだとばかりに「当たり前じゃない、日本の桜はね、それははかなくて繊細ででも力強くてね、ぶわーっと列島がピンクに染まってね、みんながしあわせーって思うのよ。綺麗って思うのよ。私が小さなころばあちゃんの家の近くの桜並木を自転車で駆け抜けたけれどね、桜がまって髪にさらさらーって落ちてくるのよ、もう夢みたいに綺麗で懐かしくて、私も実家をなくしたけれど心にずっとその光景は残っている。あなたのアフリカはあなたの心にあるはずなんだから、なくなったりしない。そして帰る場所も日本がある、みんながゴードンをまっているんだからね。」
夫はじーと写真を眺めながら、「赤い乾いた土に大きな花、それから真っ赤な太陽が急に隠れて恐ろしいくらいに綺麗な厚い雲がやってくるとね、ばりばりって雷がなるんだよ。動物も人間も太刀打ちできない、身動きできないくらいの雷なんだ、どしーんってなるんだ、空はピカピカ光ってね、それが終わると雨がざーって降る。庭のサルもインパラも急にほっとしたみたいにみんな雨を浴びるんだよ。後はまた熱い大きな太陽が照って、乾いた赤い土地に戻るんだよ。」
★大丈夫だよ、帰る場所はあるからね。あなたが手を引いていると思っていたあの子はあなたの手を引いて、ゴードン大好きといっていたよ。
続けて夫が、「小さなころ御菓子を買いたくても、友達にあいたくても、父に頼んで銃やナイフを積んだ車を出してもらうしか、村を出ることすらできなかった。日本に初めていったとき、初めて一人で夜中に歩いて、ゲームセンターで大好きなゲームを好きなだけ楽しんで、御菓子がいっぱい並んだコンビニで全部の種類を試したくてワクワクしたんだ。子供のころにできなかったころが全部夢のようにそこにあったんだ。そんな国はこの世の中のどこにも見たことがなかった。どうして南アは日本みたいになれないんだろう、どうして帰れない祖国になってしまったんだろう、どうして俺は日本人に生まれることができなかったのだろう、それでも恋しいアフリカをどうやったら断ち切れるのだろう。」
私は何も言えなかった。そのままずっと二人で日本と南アの写真をみた。朝の鳥の鳴き声が聞こえても見続けた。
★帰る場所、私たちの大好きな人たち。
ようやく夫が寝たので私は今このブログをこうして書いている。そして心から思う、家なき子になってしまった夫がいつまでもぼけーとのそーと安心しきって歩ける日本、日本の皆さん、日本がいつまでも美しく平和でありますよう、本当に心からそう願います、夫は日本に行くとイギリスの10倍くらい歩くスピードが遅くなるんです。亀のようなんです。それは体も心も安心しきって力が入らなくなるから、あったかくて幸せで優しい国に降り立った瞬間から本当にそうなるんです。
どうか、日本がいつまでもそのままでありますよう、本当に心から願います。次に夫が日本に降り立った際に「ただいま」と思えるいつもの優しい日本でありますよう、私のワガママなお願いがどうか神様仏様に届きますよう、はじめて自分の足で夜中に酔っ払いながらドーナツ買って友人につきあってもらってボーリングデビューしだよね、隣人が殺されてしまって人に対して心を閉ざしていた夫がそこまで「のそー」となれる国が、大好きな人たちがいる日本がいつまでもそこにありますよう、
★はじめてだったね。なにもかも、なにもかも初めてだった。
家なき子になってしまった夫がいつか帰れる場所が、希望があることに感謝します。温かな光や人の優しさがそこにあることに本当に感謝します。
★そして私の祖国、私の大好きな場所、家族や友達やみんながいる日本。
次に日本にいけるまで、みなさまもお元気で、私たちも地味ながら平和にそれまでがんばっていこうと思います。
それではまた、イギリスから今度は元気に笑いをお届けできるといいな。
読んでくださってありがとうございました。
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私も中耳炎が悪化して鼓膜に穴が開いてた時、何回もウォークインに行っても治らず、帰国が迫ってたので痛かったけど放置して日本の耳鼻科に駆け込んだら、ぴゃーって治りましたw
帰る場所がなくなるのは辛いですが、その分日本の優しい人たちや場所が男爵さんを癒してくれる事を願ってます ;)
いつまでも日本が優しい、平和な国でありますように!