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私も泣いた。

2012/10/19 Fri 22:46

私も人間だから、落ち込んだり、劣等感にさいなまされる日々もある。
ここ数ヶ月、本当に「いやだあああ!」と言うほど落ち込んだ。

まず、私の命の次に大事なパスポート、ビザもついている私のパスポート、これが事情により「びっりびり」に破れた。

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★びっくりしすぎて思わずのぼりますた。


そういうわけで、わたしはとてもとても落ち込んでいて、近所の徒歩3分圏内のショップにミルクを買いに行くのも「いやだ」、たまった洗濯物を干すのも「いやだ」で、ゴードンに多大なる負担をかけているのだが、


いいの。人間だもん、そういう時あるに!


ゴードンも私のストレスを分かっているようで、「ごはん わ わたし つくります しんぱい ない」、「わたし じぶん つくる できる」と凄く協力的なのだけれど。

とある日曜日の朝、なんだか懐かしい「ぷーん」という柔らかでまろまろな出汁の香りで目が覚めた。

お母さんやおばあちゃんが作ってくれたきしめんの、かつお出汁の香り・・・・・・

そうまどろんでいたが、


はああっ!!!!

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★わかってますたよ、わかってますたあああ!「だってあまいものとうどんがすき」

「かつお出汁」、「きしめん」、「まろののり」、「ゆずこしょう」

あああああ!

慌ててガウンを羽織って階下に降りたが、そこには嬉しそうに、私の「きしめん」、最後の「きしめん」、しつこくも「最後の・きしめん(愛知県地元産)」をほうばる夫がいた。

「きしめんは増えますね。おなか一杯です!」

あほ!

「こんなに のびのびです まろー」

うっとりとした顔の夫、

私「せ、せめてお汁だけでも」

夫「そうなんです、いいおあじ でてますよ。食べて食べて。」

あんたは何人だ!


「わたしのきしめん・・・麺は どこですか・・・」

脱力して聞くと、「もちんは寝てました おそすぎます、いらん。」、と。

魂抜けた私の前で、「うわーすげいよー ボニートフレーク(鰹節)うごくうごく めらめら!」と、
鰹節に興奮する彼、お前は名古屋に帰れ!!!

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★白鳥もびっくりです。


そういえば日本に帰国するたびに、本当に「ゴードンをロンドンにおいてきたらよかった」と後悔するのだ。

たとえば、わたしのおかん

イギリスでは新鮮な魚がなかなか手に入らない。刺身に飢えている。寿司が食べたい。

はるばる(お金がないので)経由便で18時間ほど、ヘルシンキやらパリやら、アムステルダムに時にはイスタンブールなどを経由、ようやくおかんの顔を見て、「おかえり、何が食べたい?」という温かな母の顔に「じーん」

私は何でもありがたく頂戴する性格なので出された機内食はぺろっと平らげるが、ゴードンは「いやだ、にほんのごはんがたべたいんです、へんなごはん いりません、まてます!」と頑なに機内食を拒む有様。

そのせいでフライトの後などは顔面蒼白、どうみても倒れそう。目の下には筋が入って、なんだか魂抜けてるし。

そこで、おかん。

「寿司、寿司、すし!!刺身!」と大騒ぎする私。

なのに、ゴードンは隣で「う、うどん、うどん、うどん、おかしゃん、うどん!」と一緒に頑張るのだ。

しかも、何度も言うが、夫の方がずっと倒れそう。あ、本当に倒れるかも。

やめれ、まじでやめてくれ。

心優しい母は、たらふく機内食を食べた私と、倒れそうな彼を見比べて、

「なら、うどんにしようか。」


おおおおおおおおおお!!!!いやだ、い・や・だ!!!

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★夜中にすがきやラーメンとか、やめてほしい。

いつも完全なる敗北。


君は散々、ロンドンで、私のうどん(きしめん)を食べつつ、

「ゆず胡椒は人類が発明した一番の薬味だ!!!」といいながら、わ、わたしのゆず胡椒、も散々たべてるもん。

1・ご飯にかける

2.芋にかける

3.うどんに入れる

4.肉につける

5.魚に添える


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★おかげで今まで1ヶ月に2本必要だったNANDOSのソースが全く減らない。


さて、話は戻るが、お話したとおり私は今年の5月に事情によりパスポートをびりびりに破損してしまった。

真っ青になり日本大使館に駆け込んだが、なんと彼らは、書類がそろい次第たったの5日で新しいパスポートを発行してくださった。

神業である。

神業!!!



しかも本当に親身になって、今後の対策などを教えてくださった。安心のあまりそして優しい日本語にその場でありがたくて腰が抜けそうなくらいになったものである。

「古いパスポートについているビザは、破損がないのでなんとも申し上げられませんが、担当によって何があるか分からないので、やっぱり新しいパスポートに移行されるのが確実です。どうぞ手続きされることをお勧めします。」

この国に私が滞在するためには、EEA ファミリーのメンバーであるという滞在許可のビザがいるのだ。思えば、そのビザを4年前に発行した際の悪夢、なんせ1年近くも申請してから発行されるまで時間がかかったため、その間パスポートはないわ、日本には帰れないわ、本当に不安だった。

「もうすぐ、もうすぐ、絶対にもうすぐ。」そういいながら1年近く待った。パスポートが帰ってきて、そのページに無事にビザを見た時は、安堵のあまり泣き崩れてしまったほどだ。

日本大使館のパスポート5日で発行、イギリス私のビザ1年、ありがとう。

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★日本の家族にもお友達にもいっぱいたすけてもらいますた。


さて、その命の次に大事なビザ、新しいものに移行しようと夫と書類をかき集めた。

そして、何度もホームオフィスに電話をした。なぜなら対応する人によって言うことが違うので、3,4度は確認しつつ、万全に書類を備えて送ったのが5ヶ月前。

またパスポートがない暮らし。予定をしていた2度の国外でのホリデーも全部キャンセルし、「移行だけだから、すぐに戻ってくる、戻ってくる。」と、また自分に言い聞かせる毎日。

何も音沙汰なしの5ヶ月。いやいや、まだまだ我慢。

さて、5ヶ月たったある日、夫は「さすがに12月までには戻ってくるに決まっているから!」と、日本への一時帰国チケットを「ぽち」っとしたのだ。

嬉しかった。本当にうれしかった。嬉しさのあまり何度も何度もフライトの詳細を「でれー」と眺めていた。

その次の日、まさに次の日。

「ばさっ、べりっ」そういう嫌な音と共に、郵便受けから何かが落ちた。

雨でべたべたになったその封筒は、無理やり郵便受けに突っ込まれたものだから半分破れていた。

あまりの惨状に、「どうせジャンクメールだろう」と手にとって、口をあんぐり開けてしまった。

パスポート、帰ってきた。それも雨ににじんで帰ってきた。


「いやだ!」
そのダメージを気にして、しかし、帰ってきたことに安堵しながらビザの移行されたページを確かめようと、慌てて新しいパスポートを確認したが、


「ない、ない?」

真っ白なのだ。新しいパスポートにはビザは移行されておらず、私は大いに焦った。
そして見つけた。

「書類不足で申請は却下。」

そうかかれた同封されたホームオフィスからの手紙。もうこの時点で頭は真っ白だった。

あれだけ確認したのに。悔しい、やるせない!

なんだか自分が本気で歓迎されていない気もして、色々なことでダウンしていた私は、言葉を失うほど落ち込んでしまった。
会いたい家族も友人も日本にも大勢いる、スーパー銭湯に入って、ぼけーとしたい。助けて、どうして、私はここで一体何をしているんだろう。

ビザが移行されていないということで、日本から帰る英国入国の時、もしかして「入国拒否」とかスタンプ押されちゃうんだろうか。

いつも散々冷たくあしらわれる英国のイミグレーションで、経緯を説明して、それで本当に入国できるのだろうか。

人によって言うことが違う、ホームオフィスの誰もあてにできない、もういやだ。

一瞬そんな思いすらよぎってしまった。

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★秋のヨーロッパはちょっとさみしですよ。

夫に気力なくメールをしたが、その返事をみる元気すらなくベッドに横になってじとーと過ごした。
以前調べた情報によれば、「古いビザが無事なら、2冊持ち歩けば大丈夫。」という人もいれば、「移行していなかったら入国拒否にあった。」という人もいて、もう何がなんだか、考えるのも嫌だった。

更には「面白くないイギリス入国拒否の話。」ウェブページなども発見してしまい、とある人が「7年間会っていない妹に会いたいから。」と英国への入国審査官吏員に告げたところ、「そんな長い間あっていないなら、会わないでもいいから。」と入国拒否されたとか。ええええ。

5ヶ月待ってこれ。しかも今から申請しても間に合わないし、日本のチケットは予約したし。

なんだかイギリスに悪態をつきたくなった。

もう、日本に帰りたい。まじで帰りたい。5年目にして本気でそう思った。



そのうち夕方になり、「おかえり!」といつもの通り、元気な夫がびゅんっと帰ってきた。

じとーーーとしている私を見ると、

「もちん!きょうの ごはんわ わたし つくります。」

と、力強い声。

「またうどん食べちゃうんでしょう?私のきしめん、わたし、日本に帰りたいよ!」

思わず声を荒げる私に、にゅうっと差し出されたのは、

私の大好きなあたりやさんの御寿司。

「まだまだあります。」

そしてワンカップ。

「これもかたですよ!」

日系のお店の大福。

「もちん、だいじょぶ!わたし、今日はホームオフィスに9回も電話しました。みんな、おなじこといいました。ビザが無事だったら、入国できます。はい、だいじょぶ、日本にかえりますよ!」

そこで私は我に帰った。

「えっ、あの中々つながらないホームオフィスに半日で9回も?!うそ!」

すると夫は、笑いながらこういったのだ。

「わたしの 同僚と おともだち、みんな もちんが だいすきです。みんなで 一緒に でんわ しました。みんな 何度も かけました。ボスも かけました。 大丈夫 です、わたしたち、日本 かえります!」

「えっ・・・。」

「だいじょぶです!みんな もちんが だいすき おてつだい いります!ぜったいに ぜったいに だいじょうぶ、みんな やさしの ひと、おてつだい します!」

底で私は思わず、年甲斐もなく「うわーーん」とおお泣きしてしまったのだ。

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★忘れてしまうものですね。

なんてアホなんだろう、私は。
私のビザの事なのに、人にこんなに助けてもらって、夫に全て任せて怠けていたのに、結果に落ち込んだり文句を言ったり、「もちんのことだけじゃありません、私たちの ことです。」と言ってくれる夫、彼だって凄く辛かったに違いないのだ。

「ごめんなさい、わたしがいじんです、わたしと結婚しました、だからまいにち たいへんです、このストレスは、はい、もちんは日本にすんでたら いりませんでした。、ごめんなさい。かわいそです、わたし こころ いたいです。」

そういう夫はなんだか涙ぐんでいるようだった。


そうなのだ。いつもこうなのだ。私は自分ばかりが大変だと勝手にぶーぶー文句をたれて、落ち込んで、そのくせ「何が出来るか」と考えることもなく、お尻がとても重くて。

そして、周りの温かな強い人たちに助けられて、その無言の教えに、「はっ」とする。
彼らも大変なことをいつも抱えているのだ。私だけではない。

私はゴードンと結婚したとき、自分が国際結婚をするなどと思ったこともなかった。ゴードンという人と結婚をして、彼が南ア人だった、それだけであった。

それに、イギリスにくると決めたのも私自身であった。彼との結婚を決めたのも私自身、誰の判断でもないのだ。

ビザの問題だけでなく、いわゆる「国際結婚」らしきものには、色々な障害もあった。それでも、ゴードンの「だいじょぶ!」力強い、またユーモアあふれるやり方で、がんがん潜り抜けてきたのだ。その間に私は、めそめそして、いったい彼はどれだけ私の分頑張ってきたことだろう。


「わたしもおともだちもみんなも、あしたもあさっても、ホームオフィスにでんわしますよ!ぜったいに、日本にかえれます!しんぱいしない!ボスも おてつだい します、かれ こわいの ひとです、ホームオフィスに かんかん 怒る いいました。だいじょうぶ です。」

ニコニコそう笑う彼に、私は心の中で手を合わせた。彼の友人にも、同僚にも、かんかん怒るといってくれたボスにも、私の家族にも、友人にも、みんなに手を合わせた。ありがとう、本当にありがとう、私も頑張る!


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★甘いものがあれば幸せ、そういうあなたにわたしもなりたい。

「むしろ入国拒否されたら、もちんは喜んでばいばーいしますよ。毎日おうどん食べて、日本でにこにこです。」

不謹慎にもそういう彼、

「私はここでゴードンと暮らしたいから、きっちり出来ることをやって必ず帰ってくるよ。これからも、一緒に乗り越えようね。」

はっという顔をした彼、感動しているのかと思いきや、

「はらへた。(腹減った)」

いきなり階下にだだだっと降りると、「うどん!」と叫びながらいつもの準備。

いいや、今日は。いいや。

おうどんが彼の、その強さの秘密だったら、いいや、どんだけでも食べちゃって。

でも、もうすぐ、おかさんとおとさんと、一緒にあつあつのおうどん食べようね。

大好きな妹たちにも、「ドーナツかったる!」、「(ユニクロ)パンツ買ったる!」って、遊んでもらおうね。

もうすぐ。

そしたら、懐かしい山や海、川に日本の風、その中でまたきっと元気になるから。


待ってて、日本!


余談だが、私のこの話をしたら、「俺は今日も筋肉痛」のポストマンが涙目になって、「これでも食べて元気を出しな。」と、チョコレートバーをくれた。

「これは俺のおやつだけれど、今日は君にあげる。」

いつもタバコをすいながら配達する彼の手から差し出されたそれは、ほんのりタバコの香りがした。

そして、こういう人たちがいる限り、私はイギリスを嫌いにはなれない、憎めないといつも思うのだ。

さて、グラム家、今日もゆっくり前進中です。

みなさまも素敵な秋をお過ごしください。




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