「お誕生日おめでとうございます」
そう言ってチャンミンは微笑んだ
誕生日前日の夜から当日の朝まで濃密な夜を過ごした俺とチャンミン
付き合い始めた頃なんてイベントがあると嬉しそうに楽しそうにしていたのに
「昼間は友達とパーティーなんでしょう?」
「うん、そう」
「まぁ、楽しんで来て下さい」
なんて素っ気ない言葉を紡ぐ
『行かないで』とか『ひとりにしないで』とか『早く帰って来て』とか
言葉にしなくなってどれくらい経ったのだろう
昼前に目覚めたらそこにチャンミンは居なくて
ひとりで目覚めて凹む
「…今日は誕生日なんだから一緒に居てくれても…」
なんて、呟いた言葉は温度の無い部屋に吸い込まれて
確かに今日は友達が誕生日のパーティーをやるからって言ってくれて
チャンミンもどうかって言ってくれたからそのまま伝えたのに
「僕が居ると皆さん気を遣うかも知れないので」
そう言って断られてしまった
「はぁ…」
誕生日に友達とのパーティー
それは物凄く楽しいし嬉しい事だと思う
だけど、そこに恋人のチャンミンが居ないのは寂しい
そう言ったら
「だから今、こうして一緒に居るんじゃないですか」
そうだけど、そうじゃないんだよ
でも、確かに友達とチャンミンと同時にっていうのは無理があると思う
友達は俺達がそういう関係だって知らないワケだし
チャンミンの言う事は正論
間違ってない
だけど、恋人なんだからもっとこう、なんていうか、イチャイチャしたいのに
俺とチャンミンは本当に付き合ってるんだよね?
今は何だかそう思えないんだよ
「ぅぅ…」
消えてしまったチャンミンの温もりを求めてシーツに触れるけど
そこに温度はもう無くて
だいぶ前に部屋を出て行ったのだと推測できた
このベッドの上でチャンミンが『もうやめて、ゆるして、お願い、』そう何度も何度も繰り返して
『体力オバケめ…』そう俺の手をつねった
最高に可愛くて綺麗で艶かしい姿を満足するまで堪能して最高の誕生日だなんて思っていたのに
目が覚めたらひとり
「…怒ってんのかな…」
まぁ、怒ってるだろうなと思いながらベッドから這い出て
それからゆっくりとシャワーを浴びて
約束の時間に遅刻しないように貸し切りの店へと急ぐ
店の扉を開けると笑顔の友人達が迎えてくれて
あぁ、幸せだなって思う
*****
沢山のプレゼントを貰って
沢山飲んで騒いで
幸せな時間を過ごして
今日はありがとうって皆と別れて
ひとりになってため息をつく
いつまでもこうしていたいのに
いつまでもこうしてはいられない
それでも、幸せの余韻に浸りながら自宅へと戻ると
玄関には見慣れたスニーカー
「えっ?」
慌ててリビングへと駆け込む
「お帰りなさい」
「…チャンミン…」
暖かな部屋にひとり
「なん、で…?」
「なんででしょうね?」
「…俺、遅くなったかも知れないのに…」
「だって…」
チャンミンはソファーから立ち上がり俺の前へ
そしてじっと俺の眼を見つめて言った
「最後に戻って来るのは、どうせ僕の所でしょう?」
「…チャンミン…」
好き、とか
愛してる、とか
言葉じゃ言い表せないくらい好きで
なのに素っ気ないからせつなくて
俺とチャンミンの温度が違うんじゃないかって不安になってた
だけど、違うんだ
きっと俺達同じくらい好きで好きで好きで好きなんだ
「ふふ、ユノ
お誕生日おめでとうございます」
「ありがとうチャンミナ…」
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