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2016年3月21日 (月)

東芝事業計画の狂気!「2015年度、原子力事業で300億円の営業利益」(室町正志社長)はウソ!原子燃料は売れていない!

 2016年3月18日。

 東芝は「とてもこの世のものとは思えない」事業計画を発表した。

 赤字総額7100億円。自己資本が1500億円しかなくなった会社が、これからどうやって儲けるの?

<原子力へ最注力>

 いきなりこれだ。

<基盤事業の燃料・メンテナンスで世界№1の地位を確保>

<革新的安全炉AP1000の建設完遂、新規受注を成長エンジンに>

<注力成長領域><原子力>

 子会社ウェスチングハウス(WEC)は、約束をぜんぜん守れず、巨額の赤字を出した。

 2012年度 8億6600万ドル

 2013年度 5億7300万ドル

 合計 14億3900万ドル 約1605億2405万円

 東芝原子力事業の赤字。

 2013年度 358億円

 2014年度 29億円

 合計 387億円

 日本を代表するメーカー、東芝にギャンブルの鉄則を贈りたい。

「損を取り戻そうとして賭けると必ず負ける」

 しかし、東芝のエネルギー事業について、室町正志は説明会でこう言い張る。

「2015年度については、送電、変電、配電事業での減損およびロス案件の引当、また、不採算事業のコスト精査により、一時的に悪化いたしましたけれども……」

 一時的に?

 しかも、損失を出したのは原発ではない?

「収益の柱である原子力事業では、15年度、約300億円の営業利益を出しており、16年度以降も、燃料、メンテナンス事業を中心に堅調に推移する見通しでございます」

 子会社が1600億円以上の大損をしたのにV字回復?

 室町社長の説明が真実なら、原子力事業の営業利益は「-29億円」から「300億円」へ。なんと、329億円も改善されたことになる。

 マジ!?

 これからも儲け続けられるの?

 

『日経ビジネス』が入手したWEC内部で交わされたメール(2013年夏)。

<Q2(第2四半期)での資金不足は深刻な状況。通期ではウランの売上未達と新規建設の遅延による回収減が、収支に大きなインパクトを与える。>

 このメールは、「原発建設工事の遅延」よりも先に「ウランの売上未達」を経営危機の原因として挙げている。

「3・11」後、ウラン価格は3分の1になった。

 WECの燃料売上。

 2012年度 1353億円 

 2013年度 1261億円

 燃料の営業利益。

 2012年度 83億円

 2013年度 34億円

 儲けは半分以下になった。

「ウランを買う人がいなくなったんだから、当然、そうなる」

 私はそう考えていたのだが……。

 翌2014年に「奇跡」が起きた。

 2014年度 売上 1368億円 史上最高額

 2014年度 営業利益 129億円 史上最高額

 なぜ!?

 腑に落ちないニュースがあったら、金の流れを追え。

 

「3・11」以降、東芝HPの「ニュース&トピックス」に「原子燃料」という言葉はまったくなかったが……。

<ウェスチングハウス社によるスウェーデン 原子力発電プラント向け燃料供給等に関する受注について>(2014年5月28日)

 北欧の福祉国家、スウェーデン?

<ウェスチングハウス社によるスウェーデン・オスカーシャム原子力発電プラント向け取替燃料供給に関する受注について>(2014年8月28日)

 またしてもスウェーデン?

 WECは、今から48年も前の1968年にスウェーデンに侵攻し、リングハルス2~4号機を建設した。

 1979年。2号機運転開始の4年後にスリーマイル島原発事故が起きた。

 史上初の炉心溶融事故を受け、スウェーデン政府は、原発の是非を問う国民投票を行った。結果……。

「原発建設を禁止する」

「2010年までに原発を段階的に廃止する」

 原発10基(総電力の4割以上)が稼動するスウェーデンほど原子力に揺れた国はない。

Photo

2012年10月。スウェーデンのフォルスマルク原発に、白昼堂々、侵入するグリンピース活動家。うちふたりは32時間も敷地内に居座った!

 1986年にチェルノブイリ原発事故が起きると、原発廃止の約束を守らない政府に対する批判が噴出。脱原発の世論はさらに高まった。

 WECら「国際原子力マフィア」は粘りに粘ったが……。

 1999年12月。バーセベック1号機強制閉鎖。

 2005年5月。バーセベック2号機強制閉鎖。

 ところが、2006年9月の総選挙で福祉国家建設を推進してきた社会民主労働党が歴史的敗北を喫した。穏健党を中心とする連立政府は「原発の新設も廃止も行わない」決定を下してしまう。

 

 スウェーデンの「原子力マフィア」の中核企業はアセアトム社という。50%政府出資の半官半民企業である。アセアトム社は沸騰水型原子炉を独自開発し、70年代までに9基の原発を建設した。

 1988年。アセアトム社の親会社アセア社がスイスのブラウン・ボベリ社と合併。アセア・ブラウン・ボベリ(ABB)社の誕生を機に、アセアトム社はABBアトム社に改称する。

 2000年5月。ABBアトム社とWECは合体する。英国原子燃料会社(BNFL)がABBアトム社を買収。BNFLは前年に買収したWECとABBアトム社を統合してしまうのだ。

 ABBアトム社は消滅し、2006年10月、WECは東芝に買収された。

 ……って……どういうこと?

 WEC・東芝は、スウェーデンの原発を独占している。「スウェーデンからの燃料受注」とは、極端な言い方をすれば「東芝の内部取引」なのだ。

「2016年度以降も、燃料、メンテナンス事業を中心に堅調に推移する見通しでございます」(室町社長)

 室町さんに問いたい。

「原発燃料事業がV字回復した2014年は、スウェーデン国民にとってどんな年だった?」

 2014年9月。スウェーデン総選挙で社会民主労働党が中心の中道左派連合が勝利し、8年ぶりに政権に返り咲いた。

 脱原発政策を推し進めてきたスウェーデンの現政権が「原発はやめる」と言っただけで、東芝の事業計画は崩壊する。

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