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バングラデシュのクーデター後の政治的暴力は将来の方向性にとって幸先が悪い(抄訳)

2024/08/06のアンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。多少補足した。08/05にバングラデシュのシェイク・ハシナ首相が辞任した後、彼女の父親でバングラデシュ建国の父である「バンガバンドゥ」のシンボルまで攻撃されたことは、この国の将来の方向性にとって幸先が悪い。
The Post-Coup Political Violence In Bangladesh Bodes Ill For Its Future Direction



 2024/08/05、バングラデシュのシェイク・ハシナ首相が抗議活動の高まりを受けて辞任し、軍主導の暫定政権が発足してからは、以下の様な政治的暴力が相次いだ。

 ・議会が占拠された。
 ・ハシナ宮殿が襲撃された。
 ・旧与党の事務所の一部や党員の自宅が略奪を受けた。
 ・少数派のヒンズー教徒が襲撃された。

 残念なことだが、「革命的」状況では報復的な政治的暴力や少数派が狙われることは予想される事態だ。

 しかし、「バンガバンドゥ」として知られ、建国の父として崇められているシェイク・ムジブル・ラーマンの数々のシンボルもまた攻撃を受けたことを予想出来た人は殆ど居なかった。彼の彫像や壁画は破壊され、首都に在る彼の記念博物館は放火されたが、そこは昔は彼の家であって、彼がバングラデシュの独立を宣言した場所でもあった。


 彼はシェイク・ハシナの父親ではあるが、所謂「平和的な民主主義の抗議者」達がハシナを告発している犯罪については何の関係も無い。

 当時一部の人々は彼の世俗主義と非西洋諸国との協調路線を理由に彼を嫌悪していたが、それは1975年の彼の暗殺とその後の軍事クーデターに繋がった。だが現在のバングラデシュ国民の殆どはその頃にはまだ生まれてすらいなかった(バングラデシュの平均年齢は27.6歳)ので、彼についての個人的な記憶が有る訳ではない。

 彼の政策についてどう思っているにせよ、バンガバンドゥは依然として建国の父であり、彼のシンボルが標的とされたことは、バングラデシュの将来の方向性にとって幸先が悪い。

 彼のシンボルを攻撃するのは宗教的・政治的過激派だけだ。抗議者達は自分達が「平和的な民主主義の抗議者」であると称しているが、彼等がこの様な蛮行を行ったと云う事実は、彼等が実際には過激な反国家勢力であると云うハシナの主張に信憑性を与えるものだ。

 起こったことには野党であるバングラデシュ民族主義党とその同盟者達の指紋がべったり付いている。彼等は宗教的過激派と騒ぎ回っているとか、政治的過激派であるとか非難されているが、その主張には根拠が無い訳ではない。

 民族主義党の創設者のジアウル・ラフマンは、バンガバンドゥ暗殺から2年後に政権に就くとイスラム主義政策を実行し、その後西洋(当時のパートナーであるアラブ諸国や中国を含む)に軸足を移した。それ以来、民族主義党とバンガバンドゥのアワミ連盟との間の対立は絶えず続いている。

 アワミ連盟とジャマーアテ・イスラーミー運動との対立も続いているが、この運動は、後にイスラム主義政策の為に民族主義党と同盟を結んだパキスタン支持者達で構成されている。

 この国の歴史に於けるこの重要な瞬間にこれ程大々的にバンガバンドゥのシンボルが攻撃されたと云うことは、アワミ連盟の支持者達は最早誰も安全ではなく、政治的暴力が今後も続くだろうというメッセージを送っている。軍が秩序を回復出来ない限り、民族主義党-ジャマーアテ・イスラーミーはアワミ連盟に対して殺戮を始めるかも知れない。

 そうなればインドへの大規模な人口流出が起こる可能性が有り、既に人口動態的に緊張している国境地域を不安定化させるだろう。

 そこまで事態が悪化しなかったとしても、ジャマーアテ・イスラーミーは自国からアワミ同盟の世俗主義とインドとの連携と云う遺産を消し去るまでは満足しないだろう。バンガバンドゥが象徴しているのは正にそうした政策なのであって、彼のシンボルが標的にされたことは、それらの政策が続く限り、或る程度の騒乱が今後も続くかも知れないことを暗示している。

 バングラデシュには自らの主権に従って自らが望むあらゆる政策を公布する権利が有るが、これは圧力を受けて行われるべきではない。

 民族主義党-ジャマーアテ・イスラーミーが望む全てものを手に入れるかは不明だが、しかし議会(民族主義党は1月の選挙をボイコットした為に参加していない)は解散され、投獄されていた党首はその直後に釈放された。従って彼は新たな選挙の前に暫定政権に就く用意が出来ているものと思われる。

 その場合、民族主義党-ジャマーアテ・イスラーミーは何等かの方でインドから距離を置くよう、自国の当局に圧力を掛けるだろうが、それは地域の緊張を悪化させことだろう。
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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