フェイクニュース警報:プーチンはクロッカス・シティ・ホール襲撃事件直前にISIS-Kの脅威を軽視したりしなかった(抄訳)
アンドリュー・コリブコ氏の分析の抄訳。多少補足した。2024/03/19のプーチンの発言を根拠にして、03/22のモスクワのクロッカス・シティ・ホールテロ攻撃事件に関してロシアが事前の情報を掴んでいながらこれを軽視して警戒を怠ったとする主張が流されているが、これは完全にフェイクニュースだ。
Fake News Alert: Putin Didn’t Downplay ISIS-K Threats In The Run-Up To The Crocus Attack
2024/03/22のモスクワのクロッカス・シティ・ホールテロ攻撃事件に関して、プーチンが事件の前にISIS-Kの脅威を軽視していたと云う陰謀論が流布している。
根拠となっているのは03/19のプーチンの発言だ。
「また、ロシアにおけるテロ攻撃の可能性に関して、西洋の多くの政府機関が最近行った挑発的な発言も思い出したいと思います。これらの行為は全てあからさまな脅迫や、我々の社会を脅迫して不安定化させようとする意図の様です。」
FSB(ロシア連邦保安庁)は03/07にISIS-K細胞を摘発しているが、この時点でモスクワの米国大使館はこう警告している。
「大使館は、過激派がコンサート等を含むモスクワでの大規模な集会を標的にする差し迫った計画を立てているとの報告を監視しており、米国民には今後48時間、大規模な集会を避けるよう勧告すべきである。」
プーチンに関する陰謀論は、プーチンがこの警告を傲慢にも無視したかの様に、文脈から切り離して報道している。
03/23にロシアの特別機関は、テロ計画に関する情報を米国から受け取ったが、「それは一般的な内容であり、具体的な内容は何も無かった」と語っている。
だが03/19の演説で、プーチンはこうも語っている。
「私がこの点で注目したいのは、曾て西洋は国境を越えた様々な過激派やテロ集団を積極的に利用し、部分的には彼等のロシアに対する攻撃を奨励していたと云うことです。
予想通り、ネオナチのキエフ政権も、同様の外部支援を受け、屢々直接の指示を受けて、テロ戦術に切り替えました。 これには平和な都市への砲撃、政府関係者や著名人の襲撃、ロシアの重要なインフラや公共スペースを標的とした破壊的・テロ攻撃の実行犯を募集する試み等が含まれています。
私は連邦保安庁に対し、他の特別機関や法執行機関と共に、国家対テロ委員会が調整役を果たしながら、あらゆる分野で有意義な方法でテロ対策の取り組みを強化するよう求めています。我々は幅広い情報、技術、金融ツールを駆使する手強く危険な敵と対峙していることを理解しなければなりません。誤解しないで頂きたいのですが、我々は彼等が情報収集の面を含め、これら全ての分野でどの様な能力を持っているかを把握しており、彼等が使用するテロ手法も知っています。バルト海のノルド・ストリーム・パイプライン爆撃を挙げるだけで十分でしょう。彼等はどんな手段も使います。」
つまりプーチンはキエフや西洋のそのパトロン達がISIS-Kの脅威に何等かの形で関係している可能性が有ることを仄めかしているのだ。
クロッカス・シティ・ホールテロの翌日、接触者が居たとされるウクライナへ逃亡しようとしていたテロリスト達が捕らえられたことで、こうした疑惑に信憑性が加わった。
プーチンは手をこまねいていたどころか、ISIS-Kの脅威を積極的に阻止しようとしていた。
だがモスクワ大都市圏の人口が約2,000万人であることを考えると、全ての主要な公共エリアを保護することは不可能であり、強行すれば市民生活は混乱し、パニックを引き起こすかも知れない。従って詳細なセキュリティ・チェックポイントを設置せず、武装警備員を配置しなかったからと云って、プーチンがこれらの脅威を軽視していたと云う証拠にはならない。
また、西洋の挑発発言に対するプーチンの批判もその証拠ではない。これもまたパニックを引き起こすかも知れなかったし、またそれは彼等の方がFSBよりもテロ計画についてよく知っていることを示唆していたからだ。
そもそもこの種の情報を他国と共有する場合、米国の様に「一般的」な情報だけで「具体的な内容は何も無かった」としても、外交上の規範としては、相手国が先に発表しない限りはそれに関して公式声明を発表しないのが普通だ。西洋は外交上の規範を破り、ロシア社会にパニックを引き起こす可能性の有ることを行い、ロシアの治安当局の信用を失墜させようとした。だからプーチンは非難したのだ。
従ってプーチンまたはロシアの治安当局が事前の警告を無視した為にテロ攻撃に関して責任を負っていると云う主張は完全にフェイクニュースだ。
こうした陰謀論や、或いはこのテロがプーチンが特別軍事作戦を「戦争」に変えることを正当化する為に行わせた「偽旗」作戦だと云う主張は、情報戦の為に広められているに過ぎないので、耳を傾けるべきではない。
Fake News Alert: Putin Didn’t Downplay ISIS-K Threats In The Run-Up To The Crocus Attack
2024/03/22のモスクワのクロッカス・シティ・ホールテロ攻撃事件に関して、プーチンが事件の前にISIS-Kの脅威を軽視していたと云う陰謀論が流布している。
根拠となっているのは03/19のプーチンの発言だ。
「また、ロシアにおけるテロ攻撃の可能性に関して、西洋の多くの政府機関が最近行った挑発的な発言も思い出したいと思います。これらの行為は全てあからさまな脅迫や、我々の社会を脅迫して不安定化させようとする意図の様です。」
FSB(ロシア連邦保安庁)は03/07にISIS-K細胞を摘発しているが、この時点でモスクワの米国大使館はこう警告している。
「大使館は、過激派がコンサート等を含むモスクワでの大規模な集会を標的にする差し迫った計画を立てているとの報告を監視しており、米国民には今後48時間、大規模な集会を避けるよう勧告すべきである。」
プーチンに関する陰謀論は、プーチンがこの警告を傲慢にも無視したかの様に、文脈から切り離して報道している。
03/23にロシアの特別機関は、テロ計画に関する情報を米国から受け取ったが、「それは一般的な内容であり、具体的な内容は何も無かった」と語っている。
だが03/19の演説で、プーチンはこうも語っている。
「私がこの点で注目したいのは、曾て西洋は国境を越えた様々な過激派やテロ集団を積極的に利用し、部分的には彼等のロシアに対する攻撃を奨励していたと云うことです。
予想通り、ネオナチのキエフ政権も、同様の外部支援を受け、屢々直接の指示を受けて、テロ戦術に切り替えました。 これには平和な都市への砲撃、政府関係者や著名人の襲撃、ロシアの重要なインフラや公共スペースを標的とした破壊的・テロ攻撃の実行犯を募集する試み等が含まれています。
私は連邦保安庁に対し、他の特別機関や法執行機関と共に、国家対テロ委員会が調整役を果たしながら、あらゆる分野で有意義な方法でテロ対策の取り組みを強化するよう求めています。我々は幅広い情報、技術、金融ツールを駆使する手強く危険な敵と対峙していることを理解しなければなりません。誤解しないで頂きたいのですが、我々は彼等が情報収集の面を含め、これら全ての分野でどの様な能力を持っているかを把握しており、彼等が使用するテロ手法も知っています。バルト海のノルド・ストリーム・パイプライン爆撃を挙げるだけで十分でしょう。彼等はどんな手段も使います。」
つまりプーチンはキエフや西洋のそのパトロン達がISIS-Kの脅威に何等かの形で関係している可能性が有ることを仄めかしているのだ。
クロッカス・シティ・ホールテロの翌日、接触者が居たとされるウクライナへ逃亡しようとしていたテロリスト達が捕らえられたことで、こうした疑惑に信憑性が加わった。
プーチンは手をこまねいていたどころか、ISIS-Kの脅威を積極的に阻止しようとしていた。
だがモスクワ大都市圏の人口が約2,000万人であることを考えると、全ての主要な公共エリアを保護することは不可能であり、強行すれば市民生活は混乱し、パニックを引き起こすかも知れない。従って詳細なセキュリティ・チェックポイントを設置せず、武装警備員を配置しなかったからと云って、プーチンがこれらの脅威を軽視していたと云う証拠にはならない。
また、西洋の挑発発言に対するプーチンの批判もその証拠ではない。これもまたパニックを引き起こすかも知れなかったし、またそれは彼等の方がFSBよりもテロ計画についてよく知っていることを示唆していたからだ。
そもそもこの種の情報を他国と共有する場合、米国の様に「一般的」な情報だけで「具体的な内容は何も無かった」としても、外交上の規範としては、相手国が先に発表しない限りはそれに関して公式声明を発表しないのが普通だ。西洋は外交上の規範を破り、ロシア社会にパニックを引き起こす可能性の有ることを行い、ロシアの治安当局の信用を失墜させようとした。だからプーチンは非難したのだ。
従ってプーチンまたはロシアの治安当局が事前の警告を無視した為にテロ攻撃に関して責任を負っていると云う主張は完全にフェイクニュースだ。
こうした陰謀論や、或いはこのテロがプーチンが特別軍事作戦を「戦争」に変えることを正当化する為に行わせた「偽旗」作戦だと云う主張は、情報戦の為に広められているに過ぎないので、耳を傾けるべきではない。
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