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日本人がウクライナに関して抱いている誤解———ワシーリー・モロジャコフ教授(抜粋)

2023/03/30のスプートニク日本語版の、拓殖大学国際日本文化研究所教授ワシーリー・モロジャコフ氏のインタビューより、日本人がロシアやウクライナに対して抱いている誤解や思い込みについての部分を抜き出してみた。全文日本語訳されているし、それ程長くない記事なので、興味の有る方は元記事にも目を通してみて欲しい。

 日本人の圧倒的大多数は何故ウクライナ情勢が全く理解出来ないのか? 一言で言えば、日本人の圧倒的大多数はウクライナになど本当は関心が無いからだ。関心が無いから勉強もしないし、だからその無知に付け込んだプロパガンダに簡単に影響を受ける。普段「日本スゴイ」的番組しか観ていない日本人は、自分達とは異なる歴史や文化を理解する為の努力を疎かにしているから、自分達の手持ちの短い物差しで他者を測ろうとする。が、それは傲慢なのだ。
【視点】ロシアと日本、隣国である運命からは逃れられない=拓殖大学のワシーリー・モロジャコフ教授に聞く



 過去数十年の世界の歴史学においては、現代の道徳的評価を過去の出来事と結びつけようという動きがあります。しかしこれは歴史学の原則を破るもので、非常に懸念される傾向です。わたしは歴史的類推には反対しています。しかしながら、歴史を知ることなく、現代の出来事を理解することはできません。

 20年ほど前のことだと思うのですが、今後50年に政治においてどのような出来事が起こると思うかと問われたことがあります。そこでわたしは、ウクライナは連邦にならない限り分裂し、南北朝鮮は統一すると答えました。

 南北朝鮮の統一については十分に理解できることです。彼らは一つの民族であり、同じ文化を持ち、共通した領土と双方の物理的に明確な国境があるからです。

 ウクライナについて言えば、多くの民族、文化、文明が混在しており、しかもその国境は人工的に作られたものですから、ある部分だけを基礎として一つの統一国家を建設するという試みは、やったところで絶対に上手くいくはずではないのです。

 これはチェコスロバキアやユーゴスラビアでも証明されています。歴史を知っていれば、1991年に定められたソ連の国境に基づくウクライナの統一国家というものが存続不可能なものだと言うことができます。

 存続するには、連邦制にするしかありません。なぜなら、まず西の土地は、ロシア帝国の構成体に一度も入ったことがないからです。

 それから、ロシア帝国に入っていたマロロシア(小ルーシ)の土地があり、ウクライナの土地だったことのない東ウクライナがあります。その土地はまったく別の意識を持つロシア人が住んでいたロシアの県でした。そして、あのクリミアですが、ここはいつも孤立した地域でした。

 また思い出さなければならないのは、ウクライナがどのようにして「集め、作られたか」ということです。ウクライナを作ったのはレーニン、スターリン、そしてフルシチョフです。

 これらの東の国の第二の公用語がロシア語であるべきなのは明白です。クリミアでも、第二の公用語はロシア語、第三がクリミア・タタール語であるべきです。そうすることでウクライナを維持することができるでしょう。



 ポストソ連のすべての共和国の未来には恐ろしい地雷が埋められていました。それはつまりソ連領土内の国境です。当時はその国境線は大まかなもので、誰も独立国家の国境線になるとは想定していませんでした。

 これを日本人に説明するとき、わたしは静岡県と山梨県が独立を宣言したと想像してみてくださいと言います。そして大阪に行くのにビザを取得しなければならなくなるのだと。すると日本人は笑って、「そんな馬鹿な」と言います。

 日本人がウクライナ、あるいはフランスなどヨーロッパの国の名前を意味にするとき、彼らは自動的に日本の過去や現実をそこに投影します。日本には同じ民族しかおらず、国の言語は一つ、そして政治体制も一つで、国境に至っては物理的なものですから、一度も変更は生きていません。

 ですから、平均的な日本人は、ウクライナという国も昔からずっと存在していて、そこには朝鮮人や中国人と日本人が異なっているように、別の民族とはまったく異なるウクライナ人という個別の民族が暮らしていて、ずっとウクライナ語で話してきたと考えます。

 学生たちには、統一ドイツの国境ができたのは1871年で、150年の間にこの国境が何度も変更されてきたこと、1870年まで、統一されたイタリアという国は存在しなかったこと、そして20世紀ににロシアという名称は4回変わり、国境も何度も変わったと説明します。つまり、ヨーロッパの歴史を理解するために重要なのは、ヨーロッパの地理を理解することなのです。

 もちろん、そのことを知っている日本人もいますが、それは限られた人たちです。多くの人は自動的に一つのモデルをすべてに当てはめようとします。ですから、静岡県や山梨県が独立するという例を出すと、彼らは困惑してしまうのです。

 

 間違っているかもしれませんが、ウクライナ問題に特に関心のある日本人はいないと思います。日本のジャーナリストはそれに関する情報はたくさん出ている、日本の読者は興味を持っているからだと言います。

 しかし、それはメディアが人々の関心を煽っているのです。それに正しい名前をつけるとしたら、ジャーナリズムではなく、プロパガンダが現れたのです。

 プロパガンダのメカニズムをしっかり調べてみると、プロパガンダの形式や手法、とりわけ「ヘイト・プロパガンダ」と「残虐行為プロパガンダ」は第一次世界大戦時から変わっていないことがわかります。その技術的な方法は変わりましたが、やり方は同じなのです。

 敵対する双方が意図的に情報を流布し、それをごちゃ混ぜにしますが、すべてはプロパガンダ対決の枠内に収まっています。そしてこれは、戦争に限らず、あらゆる紛争において避けられないものです。



*訳者付記:参考までに、ウクライナの国境が歴史によってどう変遷して来たのかを示す動画を紹介しておこうと思う。歴史上、「統一されたウクライナ」なるものが持続して存在したことは一度も無かったことが見て解ると思う。
The History of Ukraine: Every Year

History of Ukraine (since 600 BC) - Every Year
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川流桃桜

Author:川流桃桜
一介の反帝国主義者。
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