アクセシビリティの向上は、自社サイトにとってどんな意義があるか。取り組みに当たって直面する課題は何か、そしてそれをどう乗り越えるか。国内企業でアクセシビリティへの取り組みを続けてきた、日立コンサルティング 公共コンサルティング本部の岡山将也マネージャー、ツルカメの森田雄代表取締役社長・UXディレクター、サイボウズ グローバル開発本部 東京第2開発部 小林大輔氏による対談を、2回にわたってお送りする。
今日はお集まりいただき、ありがとうございます。まず、簡単に自己紹介をお願いできますか。
岡山氏 僕は元々日立製作所で、インターネット関連の仕事に携わっていました。Webサイトを作ったり、電子商取引のシステムを手掛けたりしていました。2007年からは、日立コンサルティングに在籍しています。
ライフワークとして取り組んできたのが、出版物のアクセシビリティです。視覚障害者である友人から、本を読みたいのに読めないと困っているのを聞いたのが直接のきっかけです。現在は、日本電子出版協会などの団体でも活動しています。
森田氏 僕は1995年ごろからWebのデザインに携わってきました。もう20年になります。Webデザインに欠かせないものとしてアクセシビリティについても活動してきましたが、その根源になっているのは、(Webの考案者である)ティム・バーナーズリーも言っていた「Webは、そもそもアクセシブルなものだ」という事実です。
情報をWebに載せるだけで、載せていないよりも圧倒的にアクセシブルになる。せっかくこういう土壌にコンテンツを置くのだからアクセシビリティを突き詰めて誰でも使えるようにすべきだ、その方が面白い、と感じてここまでやってきました。
小林氏 僕はサイボウズで「kintone」の開発をしているプログラマーです。デザインを専門にしているわけではなく、プログラマーの立場からアクセシビリティについて社内で情報発信したり、取り組みを対外的に発表したりしています。
以前、サイボウズに弱視の人が入社したことがあります。その社員に使ってもらって製品のユーザビリティテストを実施したのですが、様子を見て衝撃を受けました。拡大率を300%くらいにしたうえで拡大鏡を使って、さらにモニターに顔を近づけて見る、といった具合なんですよね。それでも見えない文字や判別できない色がありました。