長いこと放ったらかしにしていた当連載ですが、思うところあってまたちゃんと書きたいと思います。今回はその「思うところ」から始めたいと思います。
休んでいた言い訳
長いこと放ったらかしにしていたのは、原稿を書く余裕がなかったということもありますが、それ以上に「もう今さら私が言うべきことはないじゃん」と思っていたからです。
オープンソースが普及したお陰で、オープンソースの技術についての解説は、そこらじゅうで見掛けます。かつてオープンソースの解説を書いている人達は「オープンソース」という大きなくくりでしたが、今は個別のソフトウエアについて書かれるようになりました。つまり、専門化が進んでいます。
「ビジネス」についても、いろんな切り口で書かれるものが増えて来ると共に、「いわゆるIT技術」がコモディティ化したお陰で、ビジネスモデルには「そんなものがあるのか」的なものまで出て来るようになりました。また、「使っている」ということがビジネスに含めるなら、今やほとんどすべてのIT関連のビジネスはオープンソースのビジネスと言えるまでになりました。
「コミュニティ」については、多くの「コミュニティ」があって、とても追い切れるものではありません。最近は「勉強会」という名のコミュニティも膨大にありますが、実はどれにも顔を出していません。個人的には「いい歳」をしてコミュニティに出掛けて行って長老然とした顔をするのは、それこそいい歳してすることではないと思っています。それが許されるのは、自分で作った勉強会を続けている吉岡さんとか、オリジネータの松本君くらいなものです。報告のブログとか見ると行きたい気もするのですが、我慢するためになるべく疎くなるようにしています。
そういったことを考えると、「今さら私があれこれ言うべきことはないな」ということで、モチベーションだだ下がりです。いやむしろ「老兵は消え去るのみ」と思っていました。
とあるオープンソースなソフトについての議論から思ったこと
「消え去るのみ」と思っていた私が、「やっぱり書こう」と思ったのは、twitterでの「とあるソフト」についての一連の議論でした。ここではそのソフトが何であるかはどうでも良い話ですし、関係者をdisする意図もないので、それが何であるとかのポインタは示しません。分かる人は「お察し下さい」ということで。
その一連の議論を読んだ時に、「案外わかってそうでわかってない人が多いな」と感じたことが、「また書こう」という気になったきっかけです。「みんなもうオープンソースなんてあって当然で、わかってて当然」だから、「老兵がグダグダ言うべきことなんてない」と思っていたのですが、直接「技術」や「ビジネス」あるいは「コミュニティ」でない、その外側に案外理解されていないことが多いということに気がつきました。「技術」や「ビジネス」「コミュニティ」はよく語られますが、それ以外のところはそうでもないということです。「著作権」についても、それなりのところではよく解説されていますし、専門家の解説も増えたのですが、一般にはまだ馴染みがないようです。
そういった現状を見ていて、いわゆる「四方山話」的なものであっても、まだまだ需要があるのだと気がつきました。結局のところ、オープンソースの初期で言われていたような「啓もう活動」的なものは、いまだに必要なようです。さらに言えば、「啓もう活動」と言った上から目線的なものは既にそれなりに充実して来たと思うのですが、「身近なもの」として親しまれてないなということを発見しました。そう考えると、まだ「私」が語るべきものはあるなと思うわけです。と言うか、「私」がどうこうと言うよりも、もっといろんな人の耳目に触れるところにオープンソースの解説が必要で、「優れた解説」が少数あることよりも、もっとオープンソース的に「程々の解説」が大量にあることの方が良いんだということに気がついたのです。「老兵」だろうが何だろうが、間違ってなければ語った方が良いし、仮に間違っていたにしても「一つの真理」でしょう。なので、これから気楽にいろいろ書いて行こうと思います。
と言い訳したところで、本題に入りたいと思います。
問題の「とあるオープンソースなソフト」の議論で見掛けた誤解についての話です。話題のピックアップのしかたは多少恣意的かも知れませんが、「特定の何か」を指しているわけではなく、あくまでも「とある」なので、その辺はお察し下さい。
「オープンソースだと××をしてはいけない」
さて問題です。以下に挙げるもののうち、正しいものはどれでしょう?
A. GPLv3で公開されたものを流用してクローズドなアプリは作れない
B. GPLv3で公開したソフトは後から非公開にできない
C. GPLv3で公開したソフトに広告を入れるのは著作権法違反
ヒント: 元の議論では「GPLv3」と書かれていますが、オープンソースライセンス全般に言えることです。