Linuxといえば“無料で使える”パソコンOSとして知られているが、Linuxの魅力はそれだけではない。筆者は、自分好みにカスタマイズしたLinuxを作成し、それをパソコン上で起動したり、ハードディスクにインストールしたりして使えることだと考える。
Linux*1ではソースコードが公開されているのだから、Linuxに詳しいプログラマならそれも可能であると思うだろう。しかし、Linuxの初心者でも自分好みにカスタマイズしたオリジナルLinuxを簡単に作成できてしまう。それも不具合修正やセキュリティ対処などのメンテナンスが可能で、安心して使い続けられるものになる。
*1 LinuxはOSの中心的な機能を提供するカーネルのこと。正確にはOSとしてのLinuxは「Linuxディストリビューション」だが、ここではLinuxと呼ぶ。
既存のLinuxをベースにする
筆者の所属する日経Linuxでは、オリジナルLinuxとして「自分Linux」を作成する記事を以前に掲載していた。Linuxを構成する各種ソフトウエアのソースコードからオリジナルLinuxを作成する内容だ。
その記事では、初心者でもオリジナルLinuxが確実に作成できるよう構成するソフトウエアの種類やソースコードのバージョンを限定した。これでは、オリジナルLinuxを構成するソフトウエアの不具合が発生してもアップデートできない。また、オリジナルLinuxといっても記事通りに作るだけなら、誰が作っても同じ構成のLinuxが出来上がる。
そこで2011年6月2日発売のムック「この一冊でLinuxがイチからわかる」では、既に存在するLinuxのインストールCDをカスタマイズしてオリジナルLinuxを作成する方法を紹介した。このムックはLinuxを初めて使う人、あるいはLinux初心者を対象としたものであるが、オリジナルLinuxの作成がとても簡単であったために含めることにした。
実際に読んでいただくと分かるが、既存のLinuxをベースにすると、多くの作業を簡略化できる。さらに、そのLinuxを開発しているプロジェクトのメンテナンス環境をそのまま利用できる。
GUIツールでソフトを追加・削除するだけ
では、簡単にオリジナルLinuxの作り方を紹介しよう。基にした既存のLinuxは「Ubuntu 11.04 Desktop 日本語 Remix」(以下、Ubuntu)である(画面1)。デスクトップOS向けでは、人気のLinuxだ。
UbuntuのインストールCD内は、起動用のプログラムおよびUbutnu本体のプログラムが格納されている。そして、Ubuntu本体のプログラムは主に、OSの中心的な機能を提供する「カーネル」と、すべてのプログラムが格納されている「ルートファイルシステム」で構成される。
このルートファイルシステム内をカスタマイズすることで、オリジナルLinuxを作成できる。具体的には、ルートファイルシステムから不要なソフトウエアを削除し、必要なソフトウエアを追加するだけだ。
ソフトウエアの追加や削除には、グラフィカルなユーザーインタフェースのツールが利用できる。そのツール上でマウスを使いながらソフトウエアを選択し、インストールまたはアンインストールする。選択するソフトウエアによって、自分だけのLinuxを作成できる。
もう少しカスタマイズを凝りたいなら、ソースコードからソフトウエアをコンパイルして追加したり、デスクトップ画面をオリジナルの外観に変更したりすることも可能だ。これらの方法もムックで紹介している。
このようにして作成したオリジナルLinuxは、ソフトウエアの構成が違うだけでUbuntuと同一であり、そのソフトウエアもほとんどがUbuntuに含まれるもの。そのため、Ubuntuを開発しているプロジェクトが提供する不具合修正やセキュリティ対策などでアップデートされたソフトウエアがそのまま使える。自分でメンテナンスすべきものは、ソースコードからパッケージングして追加したソフトウエアのみとなるが、そのメンテナンス方法はムックで紹介している。
画面2は筆者がカスタマイズしたUbuntuである。デスクトップ画面を「Xfce」というソフトウエアに変更している。画面1のUbuntu標準のデスクトップ画面とは外観が大きく違うことが分かるだろう。
Linuxが一通り使えるようになったら、オリジナルLinuxの作成にぜひチャレンジしてほしい。新しい楽しみが生まれることだろう。