今年は,一言で言えば「両極分解」が進む年でしょう。
昨今は,資産や所得の格差が広がる「格差社会」が問題視されています。しかし,知情意の力に加え,ネット上の影響力・人脈力などの個人の能力格差と,その集積の差によって法人のブランド格差が広がる「もう一つの格差社会=ブログ格差社会」が,目に見えないところで進んでいるのです。
それは,ICT(情報通信技術)ツールの進化・大衆化と比例して,これからも広がる一方でしょう。
もはやSF小説にも追いついたネット大衆化社会
2007年のはじめに展望した潮流は,ますます加速します。
驚くことに,心あるブロガー=ネットワーカーにとって,まさに天国のような情報発信のインフラが急速に整いつつあります。
誰でも上手に静止画と動画+音声が撮れるデジタルカメラ。その画像や音声を誰でも簡単に整理・保管した上で,スキルなしで即ネット公開できるパソコン+ソフト+ネット関連サービス。気の合う仲間を簡単に見つけてコミュニティを広げるサービス。いつでもどこでも無線でインターネットに常時高速接続できるサービス。写真撮影からネット公開までの作業を,よりお手軽にどこでも一台でこなせるケータイやPDA(携帯情報端末)…。
何よりありがたいのは,昔ならSF小説の世界に思えた最先端の情報機器とサービスが,趣味の資金で賄えるほど安価に提供されていることです。
使うヒトと使わないヒトの「個人力格差」はいずれ深刻化
こうした「新技術の福音」を目前にしながら,残念なことに,個人向け「超エンパワーメントツール群」を使うヒトと使わないヒトに大きく分かれてしまっています。このままでは,ブログやビデオキャスティングなどのソーシャルメディアをうまく使うヒトと,それらを相変わらず静観あるいは無視し続けるヒトとの「個人力格差」が,どんどん広がっていくと考えます。しかも,その格差は「目に見えないところ」で少しずつ広がっていくのが「おそろしい」のです。
一見すると,単にパソコンが使えるか使えないかという「デジタルデバイド」問題のように見えるかもしれません。しかし,パソコンを使えるかどうかと,ブログなどで「日常的な情報受発信」を「自らの意識で継続」できているかどうかとは,似て非なるものだと考えます。
デジタルデバイドであれば,極論するなら有能な操作助手=オペレーターをサポートに付ければ済む話です。パソコンの操作はできなくとも,独創的な発想や達人的スキルがあって,助手と二人三脚でネットに接続ができれば,大きな問題にはならないかもしれません。
しかし,ブログ発信の継続には「単なるパソコンスキル」にとどまらない「別の個人力」が必要です。その上,継続によって,その個人力がますます磨かれていくと思うに至りました。ブログを続けるうちに「観察力,表現力,共感力…(後述する13の個人力)」といった本人の潜在的「個人力」が開花し,自ずと成長させられるからです。そのため最終的にはブログやパソコンを使わない時の「生身のコミュニケーション力」や,それに基づく「個人のブランド力」でも大きな差がついてしまうと予感します。
個人力の集積である法人の場合,さらに「格差」が拡大
もちろん,これは個人を法人に置き換えても同じことです。むしろ,個人の能力差が掛け算で利いてくるので,法人の方が格差が大きくなるはずです。
しかも,企業規模や知名度が大きな企業ほど,この「見えない情報格差=個人のコミュニケーション力・ブランド力格差」が,ある日突然「劇的に現れる可能性」があります。例えば,現場リーダーによるブログ発信はその職場のモラルや行動にも大きな影響を与えます。モラルの低下が,予想だにしない不祥事を引き起こして,一瞬にして企業ブランドが崩壊し,売上や利益などに深刻な影響を与えているのは周知の事実です。
昨年も著名企業の不祥事が続き,2007年を象徴する漢字が「偽」になるという非常事態になりました。そんな企業においても,トップはもちろんのこと,現場現場のリーダーが,ブロガーとして「あるべき日常」を発信していれば,悲しい事態には陥らなかったのではないかと思います。心ある社員もたくさんいたはずなのに,残念でなりません。