総務省のグローバル時代におけるICT政策に関するタスクフォース 電気通信市場の環境変化への対応検討部会は2010年6月28日、「ワイヤレスブロードバンド実現のための周波数ワーキンググループ」の第4回会合を開催した。今回は12者(NEC、富士通、パナソニック、クアルコムジャパン、日本エリクソン、インテル、日本無線、情報通信ネットワーク産業協会、アプリックス、情報通信研究機構、国際電気通信基礎技術研究所、東京大学名誉教授 斉藤忠夫氏)に対するヒアリングが行われた。
ヒアリングでは「国際協調のために700MHz帯や900MHz帯でそれぞれペアバンドを構成する」「周波数帯のひっ迫状況において、早期割り当てのために700M/900MHzでペアバンドを構成する」という大きく二つの考え方に対しての意見が述べられた。
そんな中、アプリックス代表取締役の郡山龍氏は、周波数帯を含むグローバルスタンダードについて持論を述べた。同社は国内だけでなく海外の携帯電話機向けにミドルウエアやアプリケーションを提供している。郡山氏は、「車は通行車線が異なる、電気製品は電圧が異なる、テレビは放送用の周波数が違う、しかし日本のメーカーは国際競争力がある。一方で医療器具やバイオ分野の計測・分析機器はグローバルスタンダードを採用しているにも関わらず、国際競争力がない分野もある」と述べ、「グローバルスタンダードでないとメーカーの競争力が弱まるとは言えない」と結論づけた。
携帯電話機の分野でも「ガラパゴスじゃダメなのか」と発言した。郡山氏によれば、韓国はグローバルスタンダードであるGSMを採用しておらず、さらに国内の携帯電話機にはWIPIという独自のアプリケーション用プラットフォームの採用を義務づけられている。こうしたガラパゴス状態にも関わらず、「韓国は携帯電話機において世界の30%のシェアを持っている」(郡山氏)という。
さらにあえてガラパゴスにすべきという意見も述べた。具体的には「国内はあえてグローバルスタンダードを採用せず、海外市場で大量に製品を出荷している海外メーカーと、出荷台数の少ない国内メーカーの価格競争力の差を緩和し、世界進出できる競争力を磨ける環境を作るべき」(郡山氏)という考え方である。
それと並行して、「日本がまだ最先端を保っているモバイル・サービスを海外に展開すべきだ」と郡山氏は言う。「日本で創出されたモバイル・サービスの中から、対象地域のニーズに合うサービスを見つけ、サービス・プロバイダーと要素技術を持ったメーカーが共同で海外進出すべき」とも述べた。例えばFeliCaは日本独自の技術であるが、モバイル・バンキングの普及が進むアフリカにおいて、FeliCa搭載端末間で情報のやり取りができることが競争優位になってきているとし、「ガラパゴスはインキュベーターであり、海外は気にせず、日本で便利なサービスをどんどん実現する方がいい」(郡山氏)とした。