マイクロソフトは2010年6月17日、Office 2010の発売に合わせて、新しい日本語フォント環境の詳細を発表するとともに、フォント仕様の変更に伴う新旧Office間での字体をめぐるトラブルを回避するため、互換フォントの無償公開を開始した。
Office 2010には従来バージョンと同様、11書体の日本語フォントが添付されている。そのうち、利用頻度の高い「HG丸ゴシックM-PRO」「HG明朝E」「HGゴシックE」「HG創英角ポップ体」「HG創英角ゴシックUB」の5書体については最新のJIS規格である「JIS X 0213:2004」に対応。従来までのJIS漢字に加えて拡張漢字がすべて収録されたほか、収録漢字の字体も印刷標準字体へと変更された。
MS明朝やMSゴシックについては2007年1月に登場したWindows Vistaで既に印刷標準字体への対応が採られていたものの、同時に発売されたOffice 2007では付属フォントの足並みがそろっていなかった。そのため、文書中の書体を変えたときに、漢字の字体が変わってしまったり、指定した書体に変わらなかったり、といった不都合が生じていた(図1)。今回の仕様変更でこの5書体については不具合を回避でき(図2)、1つの文書内での書体による字体のバラツキもかなり抑えられる。
互換フォントを無償提供
一方、Office 2010で付属フォントの漢字の字体が変わったことによって、新たなトラブルの恐れもある。Office 2010で作成した文書をOffice 2007などの旧バージョンで開くと、一部漢字の字体が変わってしまうのだ(図3)。その対策として、Office 2003/2007向けには「Microsoft Office JIS2004 互換フォント」を、Office 2010向けには「Microsoft Office JIS90 互換フォント」を無償で公開した。
それぞれの互換フォントをインストールすることによって、これら5書体の漢字の字体をJIS2004(印刷標準字体)あるいはJIS90に設定できるので、パソコンの字体をどちらかに統一できるというものだ。
Windows VistaやWindows 7が登場した際にもWindowsのバージョンによるMS 明朝やMS ゴシックの字体の違いを統一するため、Windows XP向けの「JIS2004互換フォント」と、Windows Vista/7向けの「JIS90互換フォント」が無償公開されており、今回の措置はそれにならったものと言える。
例えば、Windows XP上でOffice 2003/2007を使っているユーザはWindows XP用の「JIS2004互換フォント」と「Microsoft Office JIS2004 互換フォント」の両方をインストールすることによって、文書中で使う漢字の字体を最新の国語施策に沿った印刷標準字体に統一することが可能となる。
パソコンを業務システムで使っている場合など、安易に変更できないケースもあるだろう。とはいえ、2009年7月にマイクロソフトが「JIS90互換フォントの提供はWindows 7が最後」と発表していることを考えると、今後数年のうちに、印刷標準字体に統一することを検討した方がよさそうだ。