Ruby利用者/開発者の支援を目的とする日本Rubyの会の高橋征義会長は,2006年10月28日に開催されたイベント「オープンソースカンファレンス2006 Tokyo/Fall」で,「日本Rubyの会を考える会」と題して会の現状を報告した。その中で,ごく一部の活動メンバーに負荷が集中している問題が浮き彫りになった。
これまでの日本Rubyの会の活動は,「ドキュメント整備」「イベントへの参加」「日本Rubyカンファレンスの開催」の主に三つ。このうちドキュメント整備では,「Rubyist Magazine(るびま)」というWeb雑誌を2004年から発行している。現在までに16号を発行した。内容が充実しているため,読者には好評を博している。問題は作る側だ。原稿執筆者はまだ何とかなっているが,編集者が問題になっている。るびまの編集者はすべてボランティア。高橋氏は「特定の人に仕事が重なりやすく,その人が忙しいと遅れてしまう。ときには力尽きてしまうこともある」と語る。また「倦怠期というわけでもないが,惰性で出しているようなところがある」と作る側のモチベーションが下がってきている問題を指摘する。実際に編集者不足は深刻な問題になっており,次号の発行を危ぶむ声すらある。なお,ドキュメント整備のもう一つの柱であるリファレンス・マニュアルは,青木峰郎氏が中心に現在,見直しを進めている。これは「明るい兆し」(高橋氏)。
るびまに限らず,「動く人が固定化」しているのが会の悩みだ。日本Rubyの会に入会するにはメーリングリスト(ML)に登録するだけでいいので,会員数自体は多い。しかし「MLに登録したが,なにかやることところまで行き着いていない人が圧倒的多数」(高橋氏)だという。必然的に,特定の人の負担が大きくなる。高橋氏は「意識の面でも,会員としての意識がない人がまだまだ多い」と語り,「気持ちを行動につなげるような仕組みを会の中で持てれば」と今後の課題を挙げた。
日本Rubyの会の組織形態をどうするかという話題も出た。現在は任意団体だが,法人格を持つべきかどうかという議論だ。2006年6月に開催した日本Rubyカンファレンス 2006(通称 RubyKaigi 2006)では,法人格がないと協賛費用を振り込めないスポンサーがいたという。このため,ある企業にいったん振り込んでもらってそれを日本Rubyの会に戻すという苦肉の策を取った。ただ,日本で法人格となるとNPOか企業ということになり,ハードルが高い。結局この場では,組織形態については,はっきりとした結論は出なかった。
なお,日本Rubyカンファレンス 2006で準備が遅れた反省から,2007年6月9日と10日に開催するRubyKaigi 2007の準備は,すでに始めているという。場所は,400人以上入れる会場をすでに押さえた。発表内容は,日本Rubyカンファレンス 2006では運営委員会が決めたが,RubyKaigi 2007は一般応募がメインになるという。基調講演は,Ruby開発者であるまつもとゆきひろ氏と「達人プログラマ」として名高いDave Thomas氏。RubyKaigi 2007のWebサイトは12月にオープンする予定だという。