「なぜOracleやSAP R/3など、従来型のパッケージ・ソフトを使い続ける必要があるのか?」。CRM(顧客関係管理)アプリケーションなどのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を提供する米Salesforce.comのマーク・ベニオフ会長兼CEOは、「グーグルが提供しているワープロや表計算ソフトのように、企業向けのソフトウエアはパッケージからインターネット上のサービスである“SaaS”に変わる」と主張する。
Salesforce.comの日本法人は7月7日、都内でパートナーやユーザー向けのセミナーを開催。その基調講演でベニオフ会長は、未来のソフトウエアが満たすべき10個の条件を示し、同社が提供するサービスの優位性を強調した。
ソフトウエアがインターネット上のサービスに変わるために必要な条件として、ベニオフ会長が特に強調するのが、アプリケーションを複数の企業で共用可能にする「マルチテナント方式」の仕組みだ。プログラム・コードは一つだが、ユーザーごとにアプリケーションで管理する項目やレイアウトなどを、自由に変えられるようにする。「従来のパッケージでは、一度、アプリケーションをカスタマイズしてしまうと、バージョンアップできない問題に直面する。一方、マルチテナントであれば、すぐに最新の機能をユーザーは取り入れられる」(ベニオフ会長)。
マルチテナント方式を実装するため、Salesforce.comではユーザーや企業ごとのカスタマイズ要件をデータベースで一元管理し、その情報に基づいて逐次、アプリケーションのユーザー・インタフェースを生成したり、データの編集・加工処理を実行している。ユーザー数は無数にいても、プログラム・コードは1つだ。そのため、そのコードをアップデートするだけで、即座にすべてのユーザーに対して新しい機能を提供したり、バグを修正したりできる。
未来のソフトウエアの姿として、ベニオフ会長が強調するもう一つの条件は、「アプリケーションの連携(マッシュアップ)」だ。「ユーザーは自らアプリケーションを作る必要はない。インターネット上で探し、それらを組み合わせればよい。(Salesforce.comのアプリケーション連携機能である)Appexchengeを使えば、ユーザーは280種類ものアプリケーション・サービスをすぐに連携できる」(ベニオフ会長)。
このほかにも、リアルタイムの情報共有、稼働率99.9の信頼性、マルチデバイス対応、企業規模や地域を問わずに使えることなどが、「未来のソフトウエアに求められる条件となる」と、ベニオフ会長は強調した。