銀行がIT投資を復活させたことで、ITサービス業界のSE不足が表面化してきた。あるソリューションプロバイダの金融担当事業部長は、「昨秋から銀行の引き合いが強くなり、SE需給にひっ迫感が強まってきた」と証言する。
さらに、大手都市銀行は2006年度に軒並み前年度比3~7割のIT投資増を計画している。地方銀行も収益力強化のため追従している。地方銀行は勘定系システムの更新期のピークが2007年度以降に控え、現在は主にUNIXやWindowsなどで構築する情報系システムへの引き合いが強い。ただし勘定系との連携のため、SEへのニーズは、オープン系の技術者、COBOL技術者を問わず増えているという。
このSE不足、特にCOBOL技術者のひっ迫が影を落としているのが、1月に誕生した三菱東京UFJ銀行の勘定系システムの統合プロジェクトだ。同行は、2007年末に予定していたシステムの完全統合を2008年末に延期する方向。この完全統合では、日本IBMのメインフレームを採用した旧東京三菱のシステムに、UFJのシステムを片寄せすることで実現する。
統合延期の方針を固めた背景には、想定以上に開発工数がかかる上に、COBOL技術者の不足が開発スケジュールに影響したものとみられる。計画の延期は、2月にも金融庁に提出する、経営健全化計画に盛り込むもよう。
このためソリューションプロバイダの中には、銀行の勘定系システム開発でCOBOL技術者への依存度を減らすことを提案する動きもある。「骨格となるシステムはCOBOLで開発するが、金融サービスを実現する各アプリケーションの開発にはJavaなどを取り入れることで、協力会社などへの発注を分散できる」(あるソリューションプロバイダ)からだ。