この5月に終了したドイツの周波数オークションでは、アナログテレビ放送停波後の跡地となる800MHz帯の落札額が高騰した。同時に競売にかけられた他帯域の6倍以上もの高値が付いた。800MHz帯はそれほどまでに魅力的な帯域なのか。他国に先駆けて実施したドイツの周波数再割り当て/再編事情について解説する。
ドイツの規制機関である連邦ネット庁(BNetzA)は2010年5月21日、同国での周波数オークションが20日に終了したと発表した。このオークションは、LTE(Long Term Evolution)導入を目前に控えた時期に開催されたこと、欧州では初となるアナログテレビ放送跡地を対象としていたこと、複数の離れた周波数帯を同時に競売にかけたこと、ルーラル地域へのカバレッジ義務が付随していること─などの点で世界中から注目を集めていた。
ドイツ政府は2009年2月、「ブロードバンド全国整備戦略」を閣議決定していた。この中で、「2010年末までにブロードバンド未接続地域をなくし、伝送速度1Mビット/秒以上のブロードバンド回線を全世帯に整備する」「50Mビット/秒以上の超高速ブロードバンド網の整備を進め、2014年までに全世帯の75%を接続する」との方針を出していた。これに沿った形で3月には、アナログ跡地の800MHz帯(790M~862MHz)を無線ブロードバンドに開放する旨の周波数割り当て計画が閣議決定された。
今回のオークションでは、800MHz帯で入札額が高騰した(図1)。一方、それ以外の1.8GHz帯、2.0GHz帯、2.6GHz帯での入札は、盛り上がらなかった。
800MHz帯のオークションは、2×5MHz幅を一つのスロットとして、対象帯域を6スロットに分割。各スロットごとに競売が実施された。
入札したのはテレフォニカO2、ドイツテレコム(T-モバイル)、ボーダフォンD2、E-プルスの4社。落札に成功したのはE-プルスを除く3社。2スロットずつを落札する形で落ち着いた。800MHz帯以外の帯域では4社とも相応の帯域幅を獲得した。
落札額は合計で43億8464万6000ユーロ(1ユーロ=110円換算で約4800億円)。このうち800MHz帯を落札した3社はそれぞれ約1300億円を800MHz帯に支払い、その合計は4000億円程度になる。同じ2×5MHz幅で落札額を比較すると、800MHz帯は2GHz帯の約6倍、1.8GHz帯や2.6GHz帯の約30倍となった。