しばらくすればIEEE802.11nが標準化され,無線LANは100Mbps超の時代に入る。一方,有線LAN関係ではPLC(電力線通信)製品が登場した。つまり,有線LANが引けない/引きにくい場所でのLAN接続の手段が多様化,高速化しているわけだ。
自分自身の使い方を見ると,インターネット接続に利用する回線は自室に引き込み,自室では有線LANがメイン,他の部屋では無線LANという使い方が多かった。ところが,この2~3年,この使い方の構図が崩れてきた。無理をしてでも有線LANにする誘惑に負けたのだ。
きっかけはテレパソの購入
その始まりは4年前,テレパソを買ったときだった。それは,録画したテレビ番組を家庭内に配信する機能を備えていた。テレパソは自室に設置していたが,寝室で録画した番組を見たいと思い,ノートパソコンを使い無線LANで見ていた。
ところが,2階から1階にアクセスするせいか,映像のビットレートが8Mbps(高画質モード)ではIEEE802.11gを使っても時折ぎこちない動きになる。なんか悔しい。それで,1階の自室から2階に有線LANを引き,ストリーム映像を見るときは有線LANを利用するようにした。
しかし,その後,有線LANを引くのはそれだけでは済まなくなる。テレパソで撮りためた番組をリビングでも見たくなり,薄型テレビを購入したのを機に,テレパソをリビングに設置したのがきっかけだ。
元々のもくろみでは,リビングも自室も1階同士。無線LANでも,自室からリビングのテレパソにアクセスしてストリーム映像が見るのに問題はないと考えていた。事実,ストリーム映像を見るだけなら問題はなかった。
しかし,すぐに無線LANに不満を感じ始める。そう感じさせたのは動画再生が可能な携帯型のメディアプレーヤーだった。テレパソで録画した番組を,メディアプレーヤーに入れて持ち歩くために,無線LAN経由でリビングのテレパソから自室のパソコンに取り込み,それをメディアプレーヤーに転送するのである。だが,さすがにGB単位のファイルの転送には時間がかかる。1番組を入れるのに数十分かかるのではたまらない。
さらに拍車を掛けたのが,1年あまり前にビデオサーバーを購入し,自室に設置したときだ。指定した時間帯の番組をどんどん録画し,古い番組から消していく仕様のものなのだが,録画したものを残しておくには,番組をパソコンにダウンロードしておく必要がある。このため,大容量のデータを無線LANでやりとりする頻度が高まってしまったのだ。
有線LANを屋外配線,速さはダントツ
そうはいっても,リビングと自室を有線LANで結ぶのは難しい。その間には玄関と廊下がある。わずか1.8mくらいだが,我が家で最も人目のつくところであり,さすがに有線LANは通せない。
考えあぐねた揚げ句,ケーブルを窓から外に出して屋外配線することにした。20mの屋外用のLANケーブルと,サッシの隙間から通せるケーブルを用意し,ベランダの下を通したり,エアコンの配管の裏にはわしたりとできるだけ見えない工夫をしつつ,作業した。作業時間は3時間程度だったように思う。
自室は元々,ギガビットのハブを利用していたので,リビングにもギガビット対応のハブを設置,一気に高速化を図った。体感上も圧倒的に速く,個人的には大満足であった。
参考までに,接続方法別に自室とリビングとの間の通信速度を測ったのでお知らせしよう。無線LAN(IEEE802.11a)利用時は17.8Mbpsだったのが,1000BASE-Tでは135.0Mbpsにアップした。インターネットアクセス時のレスポンスも良くなったように感じている。
最近はHD-PLC対応の機器が登場したので,そちらも試してみたが,有線LANには遠く及ばない結果となった。やはり,家庭内のネットワークは有線LANが一番というのが率直な感想である。
もちろん,他の接続方法を否定しているわけではない。ノートパソコンからインターネットにアクセスするためには,無線LANを使っている。使い方の問題で,大量のデータをやりとりする場合は有線LANが一番だということだ。当面ほかの通信手段は考えていないが,IEEE802.11n無線LANがどの程度のパフォーマンスがでるかは気になるところである。
表1●自室とリビングでのデータ転送速度(参考) 自室とリビングで,接続方法別に転送速度を測定した。自宅は木造2階建て,自室とリビングはともに1階で廊下を挟んで約6.5m離れた地点間の速度を測定した。なお,通信速度はパソコン間でデータをアップロードした場合とダウンロードした場合の平均速度と,ファイルタイプ別の速度の平均 | ||||||||||||||||||||||||
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