安倍晋三氏の公式サイト [画像のクリックで拡大表示] |
山形県公式サイト [画像のクリックで拡大表示] |
JETRO(日本貿易振興機構)公式サイト [画像のクリックで拡大表示] |
2006年9月26日,内閣総理大臣に就任した安倍晋三氏の公式サイトは,オープンソースのコンテンツ管理システム(CMS)を採用していることをご存知だろうか。「Plone」と呼ばれるCMSである。同サイトは2006年の3月にリニューアルを実施した際,同じくオープンソースのCMSであるXOOPSからPloneに移行している。
Ploneはオープンソースのアプリケーション・サーバーZope上で稼働するCMSである。特徴はインストールが容易なこと,アクセス権管理機能がきめ細かなこと,ワークフロー・エンジンを備えること,視力の弱いユーザー向けのアクセシビリティにも対応していること,そしてカスタマイズやアドオン・ソフトウエア作成の効率が高いことなどだ。
ここ数年,Ploneの採用サイトが増加している。欧米における事例はPloneコミュニティのポータルサイトであるplone.orgの事例リストをご覧いただきたい。日本においても安倍氏の公式サイトのほか,山形県庁 ,JETRO(日本貿易振興機構),大型放放射光施設Spring-8の公式サイトがPloneを用いて構築されている(3ページ目にSpring-8公式サイトの事例を掲載)。
(注)ちなみに安倍晋三氏のサイトはオープンソースのサーバー管理ツールBlueQuartzも利用しており,そのユーザー・コミュニティであるCobaltユーザ会がオープンソース支援団体OSCJ.netに参加した際「BlueQuartzが日本を中心に開発されていることやオープンソース開発を支援するOSCJ.netが日本から立ち上がったことを大変喜ばしく思っている」とのコメントを寄せている(Cobaltユーザ会の発表文)
Ploneの特徴
Ploneの特徴は,前述のようにまずインストールが簡単であること。ダウンロードしてから,インストールしてサイトを立ち上げるまでに数分ですむ。その模様をムービーとして記録したので,ご覧いただきたい。
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Ploneには最初からポータルサイトとしての機能とCMSとしての機能が組み込まれており,インストールしてすぐに利用できる。PloneがべースにしているZopeにはオブジェクト・データベースが組み込まれているので,別途データベースをインストールする必要はない。
コンテンツ管理はWebブラウザだけで行うことができる。HTMLを理解している必要はない。Ploneにコンテンツを追加し,管理する方法は以下のムービーを見ていただければ分かる。
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ファイルを管理するようなフォルダによる分類など,直感的なユーザー・インタフェースを備えている。コンテンツはタイプによって分類される。画像ファイルはアルバム形式で管理できる。
日本語での検索には若干のカスタマイズが必要だが,コンテンツの全文検索機能が備わっている。
プラットフォームとしてはLinux,Windows,Mac OS X,FreeBSD,Solarisなど多くのOS上で稼働する。
次にユーザー管理機能が充実している。デフォルトの認証の仕組みは独自の実装であるが,それにLDAPやActive Directoryなどの外のユーザーデータベースを組みあわせることができる。ユーザーはロールとグループという二つのカテゴリに分けることができ,コンテンツ単位でのアクセス権限を設定できる。ユーザーの権限によって,あるコンテンツを編集できたり,閲覧しかできなかったり,閲覧さえできなかったりというような制御が可能だ。検索についても権限によって検索を許可したり禁止したりという制御ができる。
アクセシビリティに重きを置いていることも大きな特徴である。PloneのユーザーインタフェースはW3Cの視覚障害アクセシビリテイ基準であるWAI-AAに合致しており,ボタン1個で文字の大きさを変更して表示することなどが可能だ。このことは,多くの政府機関の公式サイトに採用されている理由でもある。
Ploneの画面はほとんどのWebブラウザで正常に表示される。サーチ・エンジンに正しく捕捉されるようになっており,RSS配信機能も備えている。
CMSは複数人で作業を行うために,ワークフローの機能が必要がある。Ploneはワークフロー・エンジンも組み込まれている。ユーザーのアクセス権管理機能と組み合わせられ,草案から審査,そして公開,さらには非公開にするまで,コンテンツのライフサイクルを制御できる。
Plone最大の強みのひとつが,ブログやビデオ共有,プロジェクト管理など多くのオープンソース・アドオン・ソフトウエアの生態系である。