若手部員 貴子さん |
LANケーブルって,普段使っているストレートケーブル以外に,クロスケーブルっていうのもあるみたいよ。どんなときに使うのかしら。 | ||
若手部員 宇田くん |
外見は同じに見えるよ。そもそも,どこが違うんだろうか。いろいろなシチュエーションで,つなぎ替えて試してみようか。 |
今回から数回にわたり,話題をLAN関連の設定に軸足を移して検証していく。ただ,ネットワーク技術者にとって非常識ともいえる“オキテ破り”の設定やシステム構成にしたとき,実際にはどんな不具合が起こるのかという実験は踏襲する。こうした検証過程を通して,ネットワークの基本を再確認しながら,ありがちなトラブル対策の事例として役立てていただければ幸いである。
登場人物は,お馴染みの貴子さんと宇田くんの2人。ネットワーク構築を手がける会社の技術部に勤め,入社3年半になる。
今回のテーマは,LANケーブル。普段何気なく使っているLANケーブルだが,実際にはストレートケーブルとクロスケーブルの2種類がある。この違いについてを確認していこう。
パソコン同士を直接つないでみる
宇田:貴子さん,使っていないハブがあったら貸してほしいんだけど。貴子:もう少ししたら,1台戻ってくるはずだけど,何に使うの?
宇田:実験用のパソコン2台をつなぎたいんだ。
貴子:それなら,パソコン同士を直接つないでしまえばいいんじゃない。
宇田:それが直結すると,うまく通信できないんだ。
貴子:パソコンやLANカードには問題ないのよね。
宇田:そっちは大丈夫だよ。昨日,ハブ経由で試したときは,つながったんだから。でも直接つなぐと,Windowsの画面に「ネットワークケーブルが接続されていません」って出てしまうんだ(図1)。
貴子:もしかして,ストレートケーブルを使っていない?
宇田:え! 何それ?
貴子:パソコン同士を直接接続するときは,クロスケーブルを使わないとダメなはずよ。
宇田:クロスケーブルって,ハブ同士をつなぐときに使うケーブルじゃなかったかな。パソコン同士をつなぐときにも使えるのかな。
貴子:ハブ同士の接続は,普通のストレートケーブルでいいはずよ。クロスケーブルは,パソコン同士の接続専用!
宇田:そうかなあ。
貴子:うそだと思うんだったら,試してみなさいよ。
宇田:あっ,本当だ。つながった。OSの方も認識したよ(図1下参照)。
貴子:ほらね。
クロスケーブルはPC接続用?
通常,リピータ・ハブやLANスイッチとパソコンをつなぐには,ストレート結線のLANケーブル(ストレートケーブル)を使用する。しかし,パソコン同士を直接つなぐ場合は,クロス結線のLANケーブル(クロスケーブル)を使う必要がある。ストレートケーブルとクロスケーブルの違いは,ケーブル内部の結線にある。LANケーブルの内部は,8本の信号線に分かれていて,両端のコネクタ・ピンとつながる位置が決まっている。ストレートケーブルなら,1番ピンは他方の1番ピン,2番ピンは2番ピンとつながるように結線されている。一方,クロスケーブルは,1番ピンが3番ピン,2番ピンが6番ピンにつながる。
図2を見ればわかるように,パソコン同士をストレートケーブルで接続すると,送信端子同士が結線されることになり,うまく通信できない。こうした不具合を解消するのが,クロスケーブルなのである。
ポートとケーブルを替えてみる
宇田:でもクロスケーブルって,LANスイッチ同士やリピータ・ハブ同士の接続にも利用できたはずだよ。貴子:そっちは,よく知らないわ。でも,普通のストレートケーブルでも接続できたような気がするわ。
宇田:ハブ同士をつなぐときは,ケーブルの種類を気にしなくていいのかな。
貴子:あっ。そういえば,ハブやLANスイッチには,「Uplinkアップリンク」とか,「カスケード」と書かれた特別なポートがあったわ(写真1)。あれって,今回の話と関係ないのかしら。
宇田:スイッチで切り替えるものや,ポートが二つ用意されているタイプの機器があるよね。
貴子:貸し出していたハブが戻ってきていたわ。このハブは,Uplinkポートが16番ポートになっているわ。
宇田:16番ポートって二つあるよ。
貴子:一方はパソコンを接続するとき,もう一方はハブにつなぐときに使えばいいのよ。
宇田:同時には使えないんだよね。ところで,どうやって実験する?
貴子:ちょうどパソコンが2台そろっているし,ケーブルもあるから,これらを使いましょう。普通のパソコン接続用ポートとUplinkポートにパソコンを接続してみて,そのときにクロスケーブルを使ったり,ストレートケーブルを使ったりして,それぞれの組み合わせで通信できるかを試してみましょう。
宇田:よし,やってみよう。