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『Standing Angel ~中洲に散った最愛の記憶~』
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第八話「光の海へ」最終話「Standing Angel」
-----written by にゃっく-----
タチロウ、なんでね、あんた・・・。
タチロウと言えばイカない、イカないと言えばタチロウのあんたが・・・
なんでこげん早くイッてしまうと・・?
ミェーテルが泣いている。
その姿は私にはミェーテない。
私は目を瞑っているのだ。
瞼にミェーテルの姿が浮かぶ。
これまでミェーテルの涙は何度も見てきた。
それはいつでも悦びの絶頂の時だった。
苦しんでいるようにも見えるミェーテルの泣き顔。
笑っているようにも見えるミェーテルの泣き顔。
くったりとした肢体とは真逆に固く締まったそこに
私はやや乱暴に挿入する。
狭い肉vs堅い肉の戦いだ。
狭い肉はよりいっそう狭さを増し、
硬い肉はますます硬くなる。
繰り返す
繰り返す
不思議だ。
私は彼女を抱きしめ、
彼女は彼女の宇宙の中に私を抱きしめる。
きえひひひひ
うるせーよ
今私は大切な走馬灯を見ているところなのだ。
そう、私の命は今まさに消え入りそうな灯火なのである。
「タチロウはそげん簡単にはイカん男とよ!イカだけに!」
この言葉は走馬灯の中の声なのか、
それとも耳元の、ミェーテないミェーテルの声なのか。
「タチロウは、イカんっちゃけんね!!」
ふわほっ
あいっ
血の気さえも失っていた私の亀と
まさに今活動を止めようとしていたおいなりさんに
走馬灯ではない温かさが襲いかかってきた。
あい、あい、ああああいいいい、いい、、、、
感覚のなくなりかけていた身体の、一箇所だけが熱くなっていく。
「ほっほこーははっへーよ、うへおおふあほほーほへー!」
聞いたことあるような、不思議な言葉が聞こえてくる。
「ほっほこーははっへーよ、うへおおふあほほーほへー!」
なんだこれは・・。
ほっほこーははっへーよ・・・・
痛い!
ミェーテル!
歯が!
ミェーテル!歯!
なんでだ?今までこんなことなかったのに。
う、歌っているのか?
ほっほこーははっへーよ・・・・
おっとこーはたってーよ、ゆけよおんなのもーとへーーー・・・?
あ痛ぁ!
ぅぅん!
あ何故!
わ・る・く・ナイ!
痛ツッ!
ダメだ!
んにゃダメじゃなぁ、んい!
ダメだ!
このまま逝ってる場合ではない!
ぬぅおおおおおおはははははぁん!!
♪男は立てよ、いけよ女のもとへ~とサザンの歌を口ずさみながら、亀は息を吹き返し再び立ち上がった!
生い茂る黒い藻をかき分け、再び荒波の玄界灘に潜り込んだ。
「ミェーテルぅぅ!」
「タチロウ!タチロウが立った!タチロウが立った!やっぱタチロウはタチロウったい!」
立ったと言われた私はもう倒れていた。そう、前のめりに。
海はヨー!海わあヨー!
でっかい海わあヨ~~~!
俺を育てた、ミェーテルの玄界灘だ・・・。
私はやはりタチロウだった。
逝くのはまだまだ先でいいらしい。。。
-----ここから合作!いや、合体!
written by コバ・ジュン-----
何か聞こえる。なんだろう。ざわめき…、歓声?そして高らかな金属音。
あ、これはゴングだ。そう、鐘の音。かなりの勢いでそれは連打されている。段々と思い出して来た。あの日俺は大きな玉ねぎの下、6m四方の松ヤニの香りがする白いマットの上に立っていたのだ。
「タチロウ…、この試合が終わったら…」
「そう、俺達はひとつになろう。そして誰も知らない遠く異国へ旅立とう。」
ミェーテルと約束した控え室。この事は二人以外誰も知らない。身分が違うのだ。「お嬢様」と呼ばれるミェーテルと、ドヤ街に拾われそこで育てられた俺など釣り合う訳がない。しかし二人は惹かれ合った。それはまるで磁石のS極とM極…間違えた、N極の如く。
そしてもうひとつ思い出した。先程の話は、試合前の控え室での出来事であったのだ。ミェーテルは泣きながら、私の熱く固くそそり立った真っ赤なコーナーポストを「はぐはぐぅ」とくわえていた。
想像して欲しい。頬が片方ぷくっと膨らむ姿。口腔内を侵略するのは実に気持ちの良いものだ。
補足。
いや違う。ここからが本題だ。
控え室?リング?マット?コーナーポスト?俺、つまりタチロウは一体何者なのだ?
「おい、ついにやってきたな。見ろよ、以前はお前の事を追い回していた警察が、今じゃお前の為に国歌を吹奏してくれてるんだぜ。感慨深いよなあ…」
あしたのジョー丸パクリのセリフを編集ちょ…、いや、トレーナーのおっつぁんがつぶやいた。俺にとってはそんなことどうでもいい。数分後、リングの上で対峙する「世界最強絶対王者」である『シテ・コンドーム』をぶっつぶすのみ考えていればいいのだ。
オレはボクサー。書け、名前を。
「星野、タチロウ」
天井桟敷主宰である寺山修司の詩が俺の頭を駆け巡る。そう、俺はボクサー、そしてようやく世界王者挑戦の日を迎えたのだった。
編集長だと思っていた男は俺のトレーナー。
福岡中州の立ちんぼうと思っていたミェーテル…。彼女の本名は「開田蘭子(ひらかれたらんこ)」。惜しい!…いや、ではなく、明治から続く旧財閥系の血筋である。
黄金のバンタム級において連戦連勝で勝ち上がった俺に対して、初めて立ちはだかった壁、絶対王者の『シテ・コンドーム』。
かつてないキツいトレーニングをこなし、俺は九段下の坂道を登ったのだった。
そこから記憶がない。蘭子との秘めた乱交くらいしか思い出せない。
そうか、俺は負けたのか。試合に。
…ツー…ツー…ツー
「先生!脈拍が回復しました!血圧も…正常値に近付いてます!」
「奇跡だ、奇跡が起こった。ええと、蘭子さんでしたか。もっと、もっとエロい言葉を彼にかけてあげてください!」
また何か大きな声が聞こえる。先程までの超気持ちよかった感覚から一転、痛みを伴う感覚、そしてまぶたにはまぶしさが立ちこめ始める。
「タチロウ!立つったい!立ち上がるったい!あんたの立つ場所はリングの上だけではないとよ!ここも立たなきゃいけんとよ!」
じゅぽじゅぽと規則正しいリズムを刻み、蘭子の唇が妙技をふるう。んはっ…!そう、それそれそれだ蘭子。あふ、あひぃ…、カ、そこのカリをもっと…。
「先生!」
「信じられない…。蘭子さん、見てください彼のを。間違えた彼を。顔に血色が戻ってきました。もっと、もっと続けて!」
んはあ…
先生、もう充分です。俺はしっかりと現世に帰ってきています。こんなにもキモチイイ事を続けられて、イキはしても逝ってしまう輩がどこにいますか!?
そして俺はまばゆい光の中へ帰って来るのを感じた。
-----エピローグ-----
タッタッタッタ…
桜は散ったが、陽光鮮やかな公園を、俺はトレーニングウェアに身をつつみ走り続けている。
はっはっはっは…
もうすぐゴール。ノルマは終る。そこには純白のタオルを手に持った蘭子が待っていてくれる。
「タチロウ!」
「はぁ…はぁ…、やあ蘭子、お待たせ」
「今日はこぎゃんキツいことするとは思わんかったばい。なんか飲むと?」
「はぁ…はぁ…。いやいい。でももし飲むとしたら」
「なん?」
「蘭子の
【フレンチドレッシング】が飲みたいかな」
「あんたアホやろか」
蘭子の平手を軽くスウェーし、俺達は芝生の上に寝転んだ。
「タチロウ、次の試合はどうせんとね?」
「次…、次か。しばらく考えたくないな」
生死の境をさまよう大激闘を繰り広げたのだ。戦闘のモチベーションが下がっても仕方ない。とりあえず今は。
「今は蘭子、お前と一緒にいられればそれでいい。そんな気持ちだよ」
そんな恥ずかしいセリフがすらすらと出て来た。これというのも、蘭子とずっといられる様になったからだ。というより無理矢理した。させてもらった。
「タチロウ…」
待て待て。まだお天道様は中空にある。パンツを下ろすな。犬が見ているだろう。
「ひほひいい?」
蘭子が聞いた。決まっているだろう。
降り注ぐ太陽の下、俺は蘭子の口腔に熱い液体をどばぁと放出した。気付くと蘭子のSPが周囲を取り囲んでくれている。よし、公然わいせつ罪は逃れられそうだ。
「まだ立つやろ?もう一度するばい」
「待て待て。とりあえず今はいいよ。あとでお前の部屋に行くから、その時頼む。」
蘭子は俺の言葉に微笑むと、水色のブラが透けた白いTシャツと、長く白い足を出したホットパンツを翻しこう言った。
「そうたい。タチロウ、いつもいつでもいつまでも立ち上がるったい。あたしのStanding Angel」
ふふっと微笑を返した俺は、とりあえずその場から立ち上がった。リング上で、病院のベッドの上で、そして今ここからも立ち上がる自分の境遇をひとつひとつ思い返した俺の目の前を、「立ちんぼうの天使」は白い肌を存分に輝かせながら緑の中へ溶け込まれようとしていた。
ありがとう蘭子。さあ一緒に帰ろう、あのワンルームへ。狭いけれども、光り輝くチャンピオンベルトがあるあのワンルームへ。
(了)
完結しました。最後は官能小説を表すがごとく、にゃっくとコバ・ジュンの「合体」技でお届けしました。お楽しみいただけましたでしょうか?
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テーマ : 自作連載小説 - ジャンル : 小説・文学