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■ トクサ畑で

■ トクサ畑で_a0115014_6371322.jpg

 昔むかし、よく釣れると評判の、ツノ屋があった。
 ツノ屋は、スルメ(イカ)を釣るときに使うツノをつくって売る。
 ツノは餌の代わり、ハリの代わりだ。
 ツノをつけた糸を海におろす。
 すると、餌だと思ってスルメが抱きつく。
 そこをすかさず釣りあげるわけだ。
 ツノは鹿や牛などの角を磨いてつくる。
 磨くのにトクサを使った。
 ツノ屋の裏には、広いトクサ畑があった。
 ある晩のことだ。
 下働きの男が夜ふけに目をさました。
 ――ミシッ、ミシッ
 足音がする。
 縁がわを見たら、見たこともない大男が背中をまるめて歩いている。
 「泥棒ッ!」
 寝ていたツノ屋の人たちは飛びおきた。
 大男はトクサ畑へ逃げこんだ。
 騒ぎに気づいたとなり近所の人たちも集まってきた。
 みんなでトクサ畑をとりかこむ。
 そうして、石ころや棒木を手当たりしだいに畑へ投げつけた。
 泥棒は広い畑のなかを逃げまわる。
 そうこうしているうち、あたりが白みはじめた。
 みんな、目をこらして畑を見た。
 泥棒のすがたが見当たらない。
 畑に入って探した。
 トクサをかきわけてみたが影も形もない。
 「おがすうな?
 畑から逃げだぁはずはねえ」
 首をかしげながら、そう話しあっていたときだ。
 下働きの男の足もとで蚊の鳴くような声がする。
 「痛でぇ~!
 痛でぇ~~!
 踏んづげんなぁ~!
 踏んづげんなぁ~!」
 足もとを見ると、親指ほどの小さな男が草履(ぞうり)に踏まれている。
 ひょいとつまみあげた。
 どうも、泥棒に入った大男のようだ。
 「ありゃ?
 なんだべ??
 こんなに、ちっちゃぐなって!」
 みんなびっくりした。
 泥棒は小さくなった体をますます縮めて震えていた。
 トクサ畑のなかを一晩じゅう逃げまわって、さすがの大男も磨りへってしまったのだった。
 とっぴんぱらりん、ぷう~


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by miyako_monogatari | 2009-02-05 08:43
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