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■ 捨てられたヌガボー


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 新しいかあさんがリンゴバナさ言った。
 「朝んなったら、この箱を山さ埋めでくる。
 おめぇ、黙ってろ」
 箱のながさ、ヌガボーが入ってだった。
 リンゴバナは、なんぼうなんでもあんまりだど思った。
 箱さ穴っこ開げで、そごがら花の種っこ、いっぺえ入れでやった。
 それがらヌガボーさ、ささやいだ。
 「穴っこがら、種っこ、落っこどすてっとがん」
 朝もまぁだ暗いうぢ、新しいかあさんは箱を背負って出がげでった。
 どんどんど山の奥さ入ってって箱を埋めできた。
 「ヌガボーは、松前さ行ったでば」
 近所の人がどうには、そう喋っておいだんだ。
 その松前がら、おとうが帰ってきた。
 「おみやげ持ってきたぁが。
 ヌガボーも出はってこぉ」
 おとうが呼ばってもヌガボーは出でこねえ。
 「ヌガボー、どうすた?」
 そう聞いだら、新しいかあさんは答えた。
 「どごさが行ぐって出はってったままだぁが」
 リンゴバナは、ほんとのごどを喋った。
 おとうはヌガボーを探しに山んながさ入ってった。
 道みち、点てんと、見だごどもねえ、きれえな花っこ、咲いでだった。
 リンゴバナが箱さ入れでやった種っこが、芽ぇ出すて、おがってだぁのす。
 その花っこが、こんもりど、おっかだまって咲いでるどごがあったった。
 おとうが掘ってみだっけ、箱が出できたった。
 ながさヌガボーがいだった。
 ヌガボーは、すやすやど眠ってるようにも見えだった。
 「おれが悪がった。
 新しいかあさんをもらったばっかりに。
 ヌガボー、ほに可哀そうだったぁが」
 死んでだど思ってだヌガボーが、目ぇ開いだ。
 おとうは大よろこびで、ヌガボー連れで家さ帰った。
 「おれが悪がった。
 リンゴバナべぇりめんこがって。
 ヌガボーにはひでぇごどすた。
 許してけで!」
 新しいかあさんは両手を合わせで、拝むようにして謝った。
 「なあに。
 リンゴバナのおかげだぁでば、生ぎでんのは。
 かあさんも、なんも恨まねえでば」
 ヌガボーは花っこのように笑った。
 それがら新しいかあさんは、いいおかあになった。
 親子四ったり、仲良ぐ暮らすたんだどさ。


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by miyako_monogatari | 2009-01-31 12:41
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