仮面の告白 (1950/06) 三島 由紀夫 商品詳細を見る |
誰が何と言おうと、俺にとって三島由紀夫の最高傑作はこの『仮面の告白』なのである。私小説と言おうか自伝的小説と言おうか、おそらく自身のことを身を削るようにして書いたようであるが、そうと思えば、あくまでこれは小説なのだ、と思われる場面も多々あったりして、正に虚実ないまぜ。虚を実に見せ、実を虚に見せる、まさにこれこそ三島だ。
始めは、ただのホモ・セクシュアルなお話かと思いきや、後半“園子”により女性を(肉体的欲望を持たないで)愛していくことを覚えていく過程は面白いと思う。結局、主人公の、あまりにも自儘な思考によって“園子”とは結ばれないわけだが、この“自儘な思考”ってヤツは全編を通して出てくるのだ。当たり前である。これは、それを読ませる小説だ。そして、この“自儘な思考”ってのは、若さの思考であり、なんか俺にもそんなことが、なんて思い当たるのである。
ちょっと、ネクラで頭でっかちだったヤツは思い当たるはずである。少なくとも、俺はそうだ。だから、俺にとってこの小説が面白いんだと思う。逆に言っちゃうと、思い当たらない人は、多分読んでもツマンナイだろう。三島由紀夫って作家自体が、もともと読者を選ぶ作家であるから、それはいた仕方ない。そう思うね。違う?
自分の本質を的確に判断し、それ故にそこから逃げていくという、人間の弱さに共感できる人にはオススメする次第。それに共感しちゃう人にとっての『仮面の告白』である。共感できない強い人にとっては『負け犬の遠吠え』としか感じないんじゃなかろうか。
ともあれ、俺には面白いですスミマセン、とか謝っちゃいそうなほど面白い作品である。ということは、俺は負け犬か。かも知れぬ。フン。